晴れ、ときどき映画三昧

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「夢売るふたり」(12・日) 80点

2013-06-13 05:12:28 | 日本映画 2010~15(平成23~27)

 ・結婚とは?ある夫婦と様々な女たちの人間ドラマ。

 

 「ゆれる」(06)「ディア・ドクター」(09)で人間の奥に潜んでいた心の内をリアルに描いて魅せた西川美和の長編3作目。

 東京で小料理店を開いて5年目、幸せな夫婦が火事で全てを失ってしまう。常連客との過ちから大金を手にした夫を目にした妻が思いついたのは、結婚詐欺。多彩なキャスティングで西川ワールドを展開する137分は、生々しい人間描写が益々緻密になってきた。

 夫・貫也(阿部サダヲ)は、先天的に優しさと弱さを併せ持った料理人。妻・里子は夫に寄り添いながらも、芯がしっかりしたメゲナイ女。この2人が<白木造りのカウンターのある洒落た料理屋を持つ>夢を果たそうと婦唱夫随?で始めた詐欺行為は、ジワジワと亀裂を深めて行く。キッカケは常連客の鈴木砂羽。愛人の遺言で手切れ金を渡されプライドを傷つけられ、思わず貫也と一夜を共にする。手切れ金が店の再興に役立てば自分が立ち直れると考えたのだ。

 脇を固めた女性たちが多彩な顔ぶれだ。騙される最初の相手は<結婚できないと思われるのが許せない>という出版社のOL(田中麗奈)。さらに暴力男(伊勢谷友介)に追われる風俗嬢(安藤玉恵)、75キロ超ウェイトリフター(江夏由夏)など、何れも結婚に何らかの障害を抱えながら健気に生きる女性たち。

 西川監督はひとりひとりに、<女なるが故に他人に知られたくないような日常>をトキには情け容赦なくリアルに、トキには抒情的に描いて魅せてくれる。その仕打ちは男の筆者には見たくないような場面も随所に登場する。

 ヒロイン里子の変貌ぶりは冒頭の良妻ぶりからは想像できないほど。女にはこんな面が誰にでもあるのだと男たちに示唆しているようだ。貫也を始め登場する男たちは分かり易いキャラクターなのも意図的であろう。貫也はシングルマザー滝子(木村多江)との疑似家族が如何に楽しいものかを知ってしまった。それが、里子に与えた衝撃は計り知れない。

 この夫婦と女性たちの物語は、様々な人間模様が描かれちょっぴり散漫な印象は拭いきれないが、キャスティングの妙とそれを承知で彼女達を丁寧に描いたことで開花したといえる。
 


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