めぐり逢い(1957)
1957年/アメリカ
ラブ・ストーリーのお手本映画
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 80点
レオ・マッケリー監督が’39にシャルル・ボワイエ主演で撮った第一作を、’57にケリー・グラント、デポラ・カー主演でリメイクしたラブ・ストーリーのお手本映画。
名うてのプレイボーイ、ニッキー(C・グラント)が婚約者のいるアメリカへ船旅する途中テリー(D・カー)の毅然とした美しさに魅了される。テリーも夫がいるにも拘らず、ニッキーの世間の噂とは違う祖母想いの優しさと、一途さに惹かれて行く。
NYでの2人は互いの生活を見直し、半年後の7月1日5時、エンパイア・ステイトビル屋上での再会を誓い合う。
前半はラブ・コメディ風で、後半はドラマチックなラブ・ストーリーとして仕上がっていてナカナカ飽きさせない。
冒頭各国のメディアが報じるニッキーの婚約騒動も、お国柄の違いが出て面白い。またデッキでのラブ・シーンも、顔が写らないお洒落な映像に感心させられる。
如何にもハリウッドならではの得意なジャンルで、その後’94ウォーレン・ビューティ、アネット・ベニングでリメイクされたり、トム・ハンクス、メグ・ライアンでテーマ設定を模倣されたりしている。
この作品が秀逸なのは、交通手段が飛行機ではなく豪華客船の旅が憧れで、伝達手段も電報や備え付けの電話だった時代背景に見合ったラブストーリーであったこととは無関係ではない。残念ながら「再会することが愛の証し」というプロットは今では通用しない。金が全ての生活を投げ打って、なお「相手を思いやる心」に拍手を送れることも難しい。登場人物に悪役がいないのも現実離れしているが、そんなことは超越して夢心地で見て欲しい。
デンジャラス・マインド 卒業の日まで
1995年/アメリカ
M・ファイファーが熱血教師に挑戦
shinakamさん
男性
総合 75点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 70点
ビジュアル 70点
音楽 80点
ルアン・ジョンソンの体験をもとに自伝小説をジョン・N・スミス監督で映画化。
海兵隊を除隊して念願の高校教師となったルアン(ミシェル・ファイファー)が受け持ったのはアカデミークラスという特殊クラス。
ケンカ・妊娠・銃による死と諸々の困難を乗越える熱血教師に扮したM・ファイファアーの奮闘振りが見もの。
でき過ぎの感ありという気もするが、一見ミスキャストを思われる役柄を頑張っている。
瀬戸内少年野球団
1984年/日本
戦後の希望は少年野球だった
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 90点
演出 85点
ビジュアル 85点
音楽 85点
今年惜しくも亡くなった大作詞家・阿久悠の自伝的小説を篠田正浩が監督。淡路島で終戦を迎えた少年を主人公に、野球をすることで希望を見出す物語。
敗戦直後、淡路島にも進駐軍がやってくる。駐在所の巡査(大滝秀治)の孫・竜太(山内圭哉)やバラケツ・三郎(大森嘉之)達は、転校生で提督(伊丹十三)の娘うめ(佐倉しおり)を守るため交代で見張りを立てる。
駒子先生(夏目雅子)は網元の長男正夫(郷ひろみ)の戦死公報を知って、次男鉄夫(渡辺謙)との再婚をためらっている。
それぞれが背負う戦争の負荷が島の人々を襲うが、その象徴が未亡人トメ(岩下志麻)。理髪店をバーに変え大繁盛するが、時代の変化とともに寂しく島を去って行く。
片足を失った正夫の生存を知りながらも、一度過ちを犯した駒子が再会を諦めるシーンは、夏目雅子ならではの清純さが際立っている。毅然として生徒達に「野球をやりましょう」というシーンとともに印象深い。
旅芸人(沢竜二)やバラケツの兄(島田紳助)バーの女(ちあきなおみ)などが登場し、終戦直後の島がイキイキと描かれていて飽きさせない。
そしてグレンミラー楽団のスウィング・ミュージックのテーマ音楽や、「リンゴの歌」など流行歌を歌う子供達に、この時代を彷彿させてくれる。
この年のキネマ旬報のベストテン・3位作品らしい出来栄えだが、ちなみに1位は伊丹十三監督の「お葬式」なのも皮肉である。
ミス・ポター
2006年/アメリカ=イギリス
100年前の美しい風景を再現
shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
80点
キャスト
80点
演出
80点
ビジュアル
85点
音楽
75点
レニー・ゼルウィガーが製作総指揮・主演で、ピーター・ラビットの作者ビアトリクス・ポターの実話をもとに半生を描いた映画。「ベイブ」のクリス・ヌーナンが監督している。
上流階級の女性が仕事を持つことなど許されない時代に、ビアトリクス(レニー・ゼルウィガー)は32歳でアーティストとして独立。両親の結婚の勧めを断り、編集者のノーマン・ウォーン(ユアン・マクレガー)と婚約するが、幸せの絶頂のとき彼はあっけなく病死してしまう。
ここまではラブ・ストーリーだが、その後子供の頃過ごした湖水地方で作家活動をする後半は、淡々とした展開で物足りない。
むしろこの映画の見所は、現代女性とって理想的なその生き方を共感できることなのだろう。膨大な動物達の故郷を守るためその土地を購入し、後にナショナル・トラストに寄付したことに感服させられる。
100年前のイングランド湖水風景の描写をはじめブルーベル鉄道など、当時の情景が見事に映像化されているし、衣装・美術も本物へのこだわりを感じる。
ブラック・スネーク・モーン
2006年/アメリカ
事前PRとは違うヒューマン・ストーリー
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 80点
音楽 85点
「ハッスル&フロウ」のクレイグ・ブリュワー監督が、ブルースを主題にした心温まる物語を映画化。
ブルース・ミュージシャンがセックス依存症の女(クリスチーナ・リッチ)を更正するために鎖でつなぐ話で、ひとつ間違えるとまるっきり違う映画に成りかねない。主演がサミエル・L・ジャクソンと知って観たが期待どおりのヒューマン・ストーリーに仕上がっていた。
伝説のブルースマン、サン・ハウスが「ブルースは男女のもつれ」と冒頭にいっていたが、平穏な生活に愛想をつかされた男と訳ありの女が、如何に心の平穏を取り戻すかが描かれている。
なかでも主役2人のキャスティングが魅力的。
S・L・ジャクソンの歌とギターは本物だし、C・リッチの体当たりの熱演は目を見張らせる。
ただ、前半の盛り上がりに比較して、後半の展開がこじんまりと纏め上げた感があるのが、少し残念な気がした。
ミルコのひかり
2005年/イタリア
少年達の演技に、静かな感動を覚える
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 90点
演出 85点
ビジュアル 85点
音楽 80点
クリスティアーノ・ボルトーネ監督が、実在のサウンド・プロデューサー、ミルコ・メンカッチの少年時代をもとに映画化。
イタリア・トスカーナで10歳のとき銃の暴発で殆ど眼が見えなくなったミルコ(ルカ・カプリオッティ)はジェノヴァの全寮制盲学校に入れられる。将来のため自立できるための教育優先のなか、ミルコはジュリオ神父(パオロ・サッサネッッリ)に、人間には5つの感覚があることを教わる。仲良しのフェリーチェ(シモーネ・グッリー)や管理人の娘フランチェスカとともに音の創作劇を演じるのがハイライト。
温かい両親や盲目の青年エットレ、規則をタテに子供の才能を認めない校長など類型的な登場人物に多少不満が残るが、少年達の演技には静かな感動を覚える。色を音に例えるシーンは子供達のアドリブとのこと。フェリーチェを始め生徒達の約半数は眼が見えないのを知って、改めて子供達の伸びやかな感性に驚かされる。終盤の場面は女性観客のすすり泣きがあちこちに聴こえた。
ミリキタニの猫
2006年/アメリカ
日系人の気骨を描いたドキュメンタリーの傑作
shinakamさん
男性
総合 90点
ストーリー 90点
キャスト 90点
演出 95点
ビジュアル 90点
音楽 90点
リンダ・ハッテンドーフが初めて手掛けた長編ドキュメンタリー。
東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門の最優秀作品賞を始め各国で多くの賞を受賞している。
NYソーホーで路上生活をしながら画を描き続けている老人はミリキタニ(三力谷)という日系人。リンダは「路上アーティストの四季」というテーマでカメラを廻し始めたが、9.11事件をキッカケに、黙々と画を描き続ける彼への思いを新たにする。自宅に引き取ることで、思いもしなかった彼の80年余の人生を知ることになる。
’20カリフォルニア州で生まれ、広島に戻り少年時代を過ごした以外18歳から今日までアメリカで過ごした波乱の人生。その軌跡をたどるうちに、第二次大戦における日米の歴史と平和への願いが浮かび上がる。
猫の画を描くのもツールレーク収容所で慕ってくれた少年が猫好きだった想いを忘れられないから。映画は膨大なフィルムの中から76分に纏められ、変に感情的にならず希望を失わない反骨の人生を追いかけている。編集したケイコ・デグチの手腕によるところが大きい。
監督は声だけでなく、同居以降は画面にも登場し、まるで実の孫娘のような存在として観客に訴えてくる。この映像を支えたもう一人の撮影マサ・ヨシカワとジョエル・グッドマンの音楽も見事な調和を見せている。
この映画の素晴らしいところは天衣無縫なジミー・ミリキタニの人柄を、過剰な演出をすることなく丹念に撮り続けることで、<人の絆の大切さ>を実感することだろう。彼の望郷の念は富士や広島の風景、日本の演歌で切々と伝わってくる。それにしても「北国の春」や「奥飛騨慕情」はどうやって覚えたのだろう。
バーバー吉野
2003年/日本
里山風景での「スタンド・バイ・ミー」
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 75点
キャスト 75点
演出 80点
ビジュアル 80点
音楽 80点
「かもめ食堂」「めがね」の荻上直子監督・脚本による長編デビュー作品。
100年以上続く伝統である少年の髪型・通称「吉野刈り」。町に一軒しかないバーバー吉野のおばちゃん(もたいまさこ)が頑なに守る伝統を、東京から来た坂上君の髪型がキッカケで、息子慶太(米田良)達が疑問を持ち始める。
大人達が理想とする里山でのライフ・スタイルが、徐々に壊れようとする地方都市に暮らす少年達の大人への第一歩が微笑ましく、「スタンド・マイ・ミー」を想わせる。
秘密基地でエロ本を見る彼らは、大人の世界を垣間見るが実感がなく、同級生(岡本奈月)が皆な好きだったりする。
男なら誰でも経験する、少年の背伸び振りが微笑ましい。少し物足りなかったのは、父親(浅野和之)や先生(三浦誠己)など大人の描き方で、実感が乏しくメルヘンの域を超えられなかったことか。
シノーラ
1972年/アメリカ
予想どおり展開の西部劇アクション
shinakamさん
男性
総合
70点
ストーリー
70点
キャスト
80点
演出
70点
ビジュアル
75点
音楽
70点
「荒野の七人」「OK牧場の決闘」のジョン・スタージェス監督、クリント・イーストウッド主演の初コンビによる娯楽西部劇。
メキシコ国境沿いの住民達と地主ハーラン(ロバート・デュバル)の土地争いに流れ者ジョー・キッド(C・イーストウッド)が巻き込まれ、メキシコ系住民を助ける話。
それなりに楽しめるが、予想どおりの展開で、ハラハラ・ドキドキの場面が少なく、2人のコンビ作品としては凡作と言わざるを得ない。
例によってヒーローが不死身の戦いをするが、今回は列車シーンが唯一のハイライト。名脇役R・デュバルもこれと言った見せ場もなく、残念。
トブルク戦線
1966年/アメリカ
戦争アクションとしては楽しめる
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 75点
ビジュアル 85点
音楽 70点
アーサー・ヒラー監督で第二次世界大戦における北アフリカでの戦争アクション。
スエズ運河に侵攻しようとする独軍の拠点であるトブルグの燃料貯蔵庫を巡る諜報合戦が見もの。なかでもパレスチナ系ユダヤ人の存在が敵味方の判別がつかず、最後まで興味を引きつける。
連合軍砂漠部隊のクレイグ少佐(ロック・ハドソン)が主役だが、特殊部隊のバーグマン大尉(ジョージ・ペパード)の見せ場も多く役得の感がある。
特に燃料貯蔵庫の爆破シーンは、かなりの迫力があってこの手の映画としては楽しめる。