晴れ、ときどき映画三昧

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『アラビアのロレンス』 90点

2012-03-06 18:50:39 | 外国映画 1960~79




アラビアのロレンス


1962年/イギリス






偉大なアウトサイダーの光と影を描いた叙事詩





プロフィール画像

shinakamさん


男性






総合★★★★☆
90



ストーリー

★★★★☆
85点




キャスト

★★★★☆
90点




演出

★★★★☆
90点




ビジュアル

★★★★★
95点




音楽

★★★★☆
90点





「戦場にかける橋」のデヴィット・リーンが第一次大戦中オスマントルコからのアラブ独立闘争(反乱)に活躍した伝説の英雄E・T・ロレンスを描いた大河ドラマで、オスカー主要7部門を獲得した名作のひとつ。
バイクで交通事故死したロレンス。記者が葬儀の参列者にコメントを求めると「素晴らしい業績をあげたが良く知らない」「英雄だが、自己顕示欲にまみれた男」などさまざま。D.リーンは「彼ほど偉大な人物はいない」と言った男に想いを込めてこの叙事詩はスタートする。
ロレンスについてはさまざまな書籍が出ているが、日本では坂本竜馬に似た存在だろうか?史実は<アラブ独立闘争を率いた英雄>もしくは<イギリスの国益に尽力した諜報員>など謎が多いが、今日の欧米とイラク・ヨルダンの関係に影響する歴史上の出来事に関わった人物であることは間違いない。
英国陸軍エジプト基地に勤務し、インテリ考古学者で勇猛果敢なロレンス少尉(ピーター・オトゥール)。反オスマン帝国のスンナ派ハーシム家のファイサル王子(アレック・ギネス)の動向を探って英国の協力を取り付ける任務につく。
灼熱の太陽のもと砂漠が織りなす絶景が70ミリの大画面いっぱいに映し出され、そこから点のような人物が現れる。「自然と人間」を追及し続けたD.リーンの象徴的なシーンだ。
前半は金髪・碧眼のロレンスが、ハリス族長のシャリーフ・アリ(オマー・シャリフ)との信頼を深め、僅か50人でトルコ軍基地のあるアカバを内陸から攻める奇襲攻撃に挑もうとする。紅海北部海岸の町アル・ワシュからメブド砂漠を渡るという常識を超えた前人未到の作戦は、まるで義経のひよどり越えのようだ。
この計画はオスマン帝国に協力していたハウェイタット族のアウダ・アブ・タイ(アンソニー・クイン)にアカバには大金塊があると勧誘し戦力強化を果たし見事攻撃は成功する。あわせてヒジャーズ鉄道爆破でトルコ軍を撹乱し、反トルコ軍としてのアラブ連合軍は一大勢力となり、ロレンスも奇跡を成し遂げた英雄としてスエズ運河へ帰還する。ロレンスは白い衣装のアラブ服に身を包んだ颯爽としたヒーローであり、2人の仲間を失ったことを悼む優しい軍人でもあった。
光り輝いていた前半に比し、後半は陰の部分が浮かび上がる。ダルアーを偵察中「透明人間だ」と過信してダル将軍(ホセ・フェラー)に捕らえられ拷問を受け自信をなくしたのがキッカケで辞表を出すが、受け入れられずダマスカス侵攻を命ぜられる。何よりの汚点は進軍途上オスマン帝国軍との戦いで大量虐殺をしたことだ。人命尊重を唱えながら復讐の連鎖にハマったこのメギドの戦いは軍隊としても逸脱行為と言わざるを得ない。アラブ国民会議の迷走とともにロレンスも存在意義が問われることに。「西欧文明と異文化との相克」はD.リーンのもうひとつのテーマだが、まさに象徴的。
「偉大な人物・ロレンス」の人間性は「敬愛しつつ恐れたが、彼自身も自分を恐れていた」というアリの言葉が<狂気の暴走>も内に秘めていた。実在のロレンスは165センチの小柄だったが長身のP.オトゥールが演じたことで<反乱>ではなく「アラブ<独立闘争>」のリーダーらしいイメージ・アップとなって、この役が彼の代名詞ともなった。
豪華競演者が揃っているが、黒装束でロレンスの側で支えるアリ役のオマー・シャリフが存在感を魅せている。
半世紀以上前の公開だが、いまの技術を駆使してもなしえない一大スペクタルは何度観ても静かな感動と映画の醍醐味を味わえる。







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