・ C・イーストウッドの分岐点となったスラング連発コメディタッチの戦争映画。
朝鮮・ヴェトナムで先攻を重ね名誉勲章を受けた軍曹が、古巣の海兵隊で落ちこぼれ小隊を鍛えグレナダ侵攻する戦争ドラマ。C・イーストウッド製作・主演で初老の鬼軍曹ぶりが見どころ。
この手の映画は軍の協力なしでは不可能なため当初は陸軍に協力要請したが、内容が相応しくないという理由で拒否され海軍に変更された。その海軍も完成後プロパガンダ映画ではないことから軍の推薦は得られず、同年製作の「トップガン」とは対照的な扱いとなった。
C・イーストウッド演じるトム・ハイウェイ一等軍曹はタフで頑固な愛国者だが、PTSD症状の酒浸りで別れた妻とヨリを戻すことにも不器用な軍隊馬鹿。朝鮮・ヴェトナムの歴戦の強者だが、除隊せず再び海兵隊に戻ってくる。
戦地経験のないエリート上官ややる気のない落ちこぼれ集団を相手に戦場体験者ならではの実践的訓練で鍛えて行く。前半は「愛と青春の旅立ち」(82)に似た鬼軍曹物語プラス元妻アギー(マーシャ・メイソン)との物語がミックスされたストーリー。自称ロックの帝王スティッチ(マリオ・ヴァン・ピーグルズ)など、およそやる気のない隊員相手の訓練ぶりはまるでコメディ。
上司パワーズ少佐(エヴァレット・マッギル)との確執は戦地体験のない官僚批判が痛烈。題名は気の良い直属上司でもあるリング中尉(ボイド・ケインズ)から出身大学を聞かれ<朝鮮戦争の激戦地>と答えたことからつけられている。
後半は三度目の戦場グレナダ侵攻へ。パワーズ少佐の指示を無視見事目的を果たす流れは類型的だが、クレジットカードで支援要求したというウソのような逸話が目を惹いた。
盟友レニー・ニーハウスの音楽が懐かしく「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」(06)、「グラントリノ」(08)、「アメリカン・スナイパー」(14)へと変遷して行く戦争ドラマの彼の姿勢が窺える作品でもあった。