・ J・シートンの人物描写が光るパニック・群像劇。
アーサー・へリーのエアポートシリーズ4作の一作目を「三十四丁目の奇蹟」(47)、「喝采」(54)のジョージ・シートン監督・脚本で映画化。彼の遺作となった、グランド・ホテル形式の人間ドラマ。
十数年ぶり大豪雪となったリンカーン国際空港の滑走路に立ち往生した大型ジェットの機体移動と、ローマ行きボーイング707を無事発走できるよう奔走する空港関係者と乗客たちが繰り広げる人間模様を描いている。
シートン監督は脚本家としての才能に長けていて、<パニック映画の元祖>といわれる本作でも登場人物のキャラが立つストーリーで魅力を際立たせている。「慕情」などオスカー9回受賞のアルフレッド・ニューマンによる音楽、映像のアーネスト・ラズロなどスタッフも実力を遺憾なく発揮。
主演は空港GMのメルを演じたバート・ランカスター。「OK牧場の決斗」(57)のワイアット・アープで正義の男の印象が強く、ここでも危機を脱出するために奮闘するが、決して英雄扱いではない。家庭を顧みない仕事人間で、家庭崩壊寸前。
メルをサポートするのは旅客係のヴァーノン(ジーン・セバーグ)で、二人は恋仲だが実らぬ恋を察知して別れようとしている。
もう一組不倫カップルが登場する。ボーイング707機長のヴァーノン(ディーン・マーティン)とスチュワーデスのグエン(ジャックリーン・ビセット)で、如何にもよくあるパターン。
パニックの要因となった爆弾男・ゲレーロ(ヴァン・へフリン)とその妻(モーリン・スティプルトン)が登場する中盤あたりから緊迫感が沸いてくる。
緩和剤としてコメディ・リリーフとなったのが常習密航者の老婦人(ヘレン・ヘイズ)。見事オスカー獲得も納得だ。
他にも天才・保安係のジョージ・ケネディ、ベテラン税関職員(ロイド・ノーラン)など現場のリーダーが空港を支えているさまが描かれている。
大音響やCGによる大迫力映像でなくても、充分楽しめる人間描写に長けたパニック映画だが、不幸な結末を迎えた女性を無視した男のための映画だった?