晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「大空港」(70・米 )75点

2018-06-30 16:21:41 | 外国映画 1960~79

・ J・シートンの人物描写が光るパニック・群像劇。




アーサー・へリーのエアポートシリーズ4作の一作目を「三十四丁目の奇蹟」(47)、「喝采」(54)のジョージ・シートン監督・脚本で映画化。彼の遺作となった、グランド・ホテル形式の人間ドラマ。

十数年ぶり大豪雪となったリンカーン国際空港の滑走路に立ち往生した大型ジェットの機体移動と、ローマ行きボーイング707を無事発走できるよう奔走する空港関係者と乗客たちが繰り広げる人間模様を描いている。

シートン監督は脚本家としての才能に長けていて、<パニック映画の元祖>といわれる本作でも登場人物のキャラが立つストーリーで魅力を際立たせている。「慕情」などオスカー9回受賞のアルフレッド・ニューマンによる音楽、映像のアーネスト・ラズロなどスタッフも実力を遺憾なく発揮。

主演は空港GMのメルを演じたバート・ランカスター。「OK牧場の決斗」(57)のワイアット・アープで正義の男の印象が強く、ここでも危機を脱出するために奮闘するが、決して英雄扱いではない。家庭を顧みない仕事人間で、家庭崩壊寸前。

メルをサポートするのは旅客係のヴァーノン(ジーン・セバーグ)で、二人は恋仲だが実らぬ恋を察知して別れようとしている。

もう一組不倫カップルが登場する。ボーイング707機長のヴァーノン(ディーン・マーティン)とスチュワーデスのグエン(ジャックリーン・ビセット)で、如何にもよくあるパターン。

パニックの要因となった爆弾男・ゲレーロ(ヴァン・へフリン)とその妻(モーリン・スティプルトン)が登場する中盤あたりから緊迫感が沸いてくる。

緩和剤としてコメディ・リリーフとなったのが常習密航者の老婦人(ヘレン・ヘイズ)。見事オスカー獲得も納得だ。

他にも天才・保安係のジョージ・ケネディ、ベテラン税関職員(ロイド・ノーラン)など現場のリーダーが空港を支えているさまが描かれている。

大音響やCGによる大迫力映像でなくても、充分楽しめる人間描写に長けたパニック映画だが、不幸な結末を迎えた女性を無視した男のための映画だった?



「カルテット!人生のオペラハウス」(12・英 )65点

2018-06-29 12:16:16 |  (欧州・アジア他) 2010~15

・ 老いの現実をユーモアと品格で描いたD・ホフマン初監督作品。




「戦場のピアニスト」(02)など名作を手掛けているロナウド・ハーウッドの戯曲「想い出のカルテット~もう一度唄わせて~」を名優ダスティン・ホフマンが初監督。

音楽家たちが引退後身を寄せるビーチャム・ハウスに、かつてのプリマドンナ、ジーン・ホートンが現れる。資金調達のためヴェルディ生誕記念コンサートを企画していた施設は、リゴレット「美しき愛らしい娘よ」のカルテットをメインにしようするが・・・。

ヴェルディがミラノに「音楽家のための憩いの場」を作ったのをヒントに、場所を英国に移したフィクションだが、如何にも実存するような環境の雰囲気。

初監督のD・ホフマンは5歳からピアノを習っていて、ジャズピアニストになるのが夢だったという。本物の音楽家がエキストラで登場して演奏したり歌ったりしているあたりに彼の拘りを感じる。

ジーンに扮していたのは、マギー・スミス。5回の結婚歴がある激情家でハウスの入居した理由が元夫のレジーに謝るためだがプライドが高く面と向かって謝ることができない。

元夫のレジー(トム・コートネイ)はシニカルな口調もあるが理知的で近隣の学生にオペラの起源を講義する温厚な性格。

二人の仲人役だったウィルフ(ビリー・コノリー)は、自称プレイボーイで若いホームドクターを口説いたりする。

いまだにチャーミングなシシー(ポーリーン・コリンズ)は物忘れがひどく認知症が進んでいる。

こんな4人が再びカルテットを組んでステージに立てるだろうか?

全編におなじみの椿姫「乾杯の歌」、トスカ「歌に生き、愛に生き」、ミカド「学校帰りの三人娘」などが流れ、ラストへの期待が高まる構成は想定内で安心して見ていられる。

その分工夫が必要で監督の腕の見せ所でもあった。エンディングは<老年は弱虫では生きられない>という応援歌で、老いの現実と向き合いながら人間愛に満ちたものだった。

「アメリカ アメリカ」(63・米 )80点

2018-06-28 12:41:03 | 外国映画 1960~79

・ 一族の話をもとに米国へ移民した青年を描いた、エリア・カザン幻の名作。


「紳士協定」(49)、「欲望という名の電車」(51)、「波止場」(54)、「エデンの東」(55)など名作を送り続けてきたエリア・カザン。

トルコ育ちのギリシャ人である彼が、幼い頃聞いた一族の話をもとにした小説を製作・監督・脚本化した移民青年の青春ドラマ。

19世紀末トルコ政府によるギリシャ人・アルメニア人弾圧の最中。ギリシャ人・スタブロス(スタテス・ヒアレリス)はアルメニア人であるバルタン(フランク・ウォルフ)から聞いた自由の国・アメリカへの憧れを抱く。

このままでは立ち行かなくなると思った父・イザーク(ハリー・デイヴィス)から一家を救うためアメリカ行きを託し、ひとまずコンスタンチノーブルで敷物商を営む伯父・オデッセを頼る手紙を出して旅立たせる・・・。

道中出会ったトルコ人に騙され無一文になったり、伯父から無理やり金持ちの娘と結婚を勧められたりしながら港の運搬夫として働きアメリカ行きを目指すスタブロス。

その間純朴な青年が世間を知って少しづつ大人になっていくさまは、彼の一途な思いが周りの人々を動かして行く。金持ちの娘トムナ(リンダ・マーシュ)を裏切って渡航費を工面して貰うのは、かなり好意的な脚色がなされたことだろう。

モノクロ映像と「日曜はダメよ」で知られるマノス・ハジタキスの哀愁あるメロディが、この風景に沁みこんで行くようだ。

船中で素足でアメリカを目指すといっていたホハネスと遭遇。靴をあげたスタブロスの善行とホハネスの犠牲により、何とかアメリカ渡航の手助けとなる。

自由の女神がアメリカの象徴で、主人公を始めとする異国の移民たちが憧れたアメリカ。

カザンもその血を引く一人だが、「赤狩りの告発により、司法取り引きに応じた」暗い過去がある。この国で生きる大変さを知る羽目になった。

トランプ政権における移民問題が国を揺るがす自由の国はこれからどうなるのだろうか?



「勝手にふるえてろ」(17・日)70点

2018-06-27 12:58:22 | 2016~(平成28~)

・ 等身大の独身女性を演じた松岡茉優が好演のラブ・コメ。




芥川賞作家綿引りさが2010年発表した小説を現代女性の心理描写を映像化するのを得意とする大九明子が脚本化・監督したラブ・コメディ。

映画初主演の松岡茉優が24歳のOL女性・ヨシカに扮し、お姫様願望のある等身大の独身女性の本音をリアルに演じながらも同性から共感を得られる恋愛喜劇になっている。

誰でも中学時代異性に興味を持つが、大抵はそのまま恋愛に育っていくことはない。ヨシカは上京してOLになっても10年も忘れられず脳内片想いを続けている。

会社での同期会に渋々出席して、纏わりついてくる男に理想と現実のギャップを目のあたりにする。

中学時代の片想い同級生を<イチ>(北村匠海)、面倒な会社の同期を<ニ>(渡辺大知)と名付け、心の内で行ったり来たりするヨシカ。

元お笑い芸人の監督は、タイミングよくクスクスとした笑いに変えながら、都会で暮らす若い独身女性の孤独感を伝えてくる。

突然ミュージカル風にヨシカが歌い出したり、金髪の店員、釣りをするおじさん、オカリナが好きなアパートの隣人、駅員、コンビニの店員などとの交流がトリックとして映像化されるところは新鮮な手法だ。

同時上映された「彼女がその名を知らない鳥たち」のヒロインを比較すると、蒼井優に対し松岡茉優の人物になりきった演技が光る。
阿部サダヲにあたるのが<ニ>に扮した渡辺大知。日本の平均的男子で欠点がアカラサマだが実は魅力的な人物を好演している。

孤独な現代女子へのメッセージが、共感をもって受け入れられそうなエンディングだった。



「彼女がその名を知らない鳥たち」 75点

2018-06-25 12:05:04 | 2016~(平成28~)

・ イヤミスの女王小説を映像化した白石和彌監督による男女の愛憎劇。



湊かなえと並ぶイヤミスの女王・沼田かほかる原作の同名小説を「凶悪」「日本で一番悪いやつら」の白石和彌監督で映画化。主演した蒼井優が日本アカデミー賞主演女優賞を受賞した。

15歳年上の男・陣治と同棲している十和子。不潔で下劣な陣治を毛嫌いしながら彼の稼ぎで自堕落な生活をしていた。
ある日デパート店の時計売り場の主任に、かつての恋人黒崎との想いがオーバーラップしてくる・・・。

清純派のイメージが抜けきらない蒼井優が自分勝手で自堕落な女性役に挑んだ。関西弁でデパートへクレームの電話をするさまは本当にこんな女がいるなと想わせる。
家事一切をせず家は散らかり放題、金銭的な繋がりだけで男と同居し、8年前に別れた恋人を未だに引き摺っている。

十和子を巡る男たちが3人登場する。

阿部サダヲ扮する陣治は、建築現場の作業員で十和子に<不潔・下品・下劣・貧相・卑劣>と罵られながら十和子のためなら何でもするという。食事のシーンで品格が窺えるように生理的に女性が受け付けないタイプ。

十和子が忘れられない黒崎を演じているのが竹ノ内豊。くどき上手で派手好きなイケメンの自営経営者だが利害だけで動くクズ男。

デパートの主任水島に扮したのは松坂桃李。朝ドラの清々しい2枚目から悪役まで幅広い役に挑み活躍中だが、今回は妻子持ちの好色な不倫男の役。

3人とも女性から見て結婚相手に相応しくないダメ男たちだが、現実には理想的な王子様は存在しないという恋愛指南的な作品ともいえる。

見かけで騙されてはいけないという警告でもあり、DV男やストーカーの区分けはなかなか難しい。

ねじれた男女の愛憎劇はミステリー要素を孕みながら、終盤<究極の愛>で幕を閉じる。

蒼井優の体当たり的演技が賞に結びついたが、筆者には蒼井優は蒼井優にしか見えなかった。

むしろ汚れ役の阿部が役得で本編をさらってしまった。二人のイケメンは女性ファンが減るの覚悟で演じたことに拍手を送りたい。

「ローズの秘密の頁(ページ)」 70点

2018-06-23 17:47:57 | 2016~(平成28~)

・ 時代に翻弄されたアイルランド女性の大河ロマン。




セバスチャン・バリーの原作を大胆に脚色してメガホンを撮ったアイルランドの巨匠ジム・シェリダン。

「マイ・レフトフット」(89)、「父の祈りを」(93)が代表作だが、筆者にはアイルランドから渡米した自伝的ファンタジー映画「インアメリカ 三つの小さな願いごと」(02)が印象深い。

時代に翻弄された一人の女性の半生を描いたラブ・ロマンは、美しいが過酷な環境のアイルランドの風景がミハイル・クリチマンのカメラと月光の旋律が映えるブライアン・バーンの音楽が花を添える。

80年代半ば、アイルランド西部の精神病院の取り壊しが決まり、転院する患者の中で頑なに拒否するローズ。彼女は40年前赤ん坊殺しの罪を背負いながら精神科医グリーン(エリック・バナ)に自分の人生を語り始める・・・。

年老いたローズを演じたのは大女優ヴァネッサ・レッドグレーブ。80歳を超えて毅然とした佇まいは、ローズが本当に自分の子供を殺したとは思えそうもなく興味が沸いてくる。

若い頃のローズには、ルーニー・マーラ。その一途な瞳には薄幸の女性にはピッタリで、「ドラゴンタトゥーの女」(11)、「キャロル」(15)など今目が離せない女優。

まるっきり似ていない二人だが殆ど気にならなかった。

この時代の背景を理解していると、ローズの置かれた環境が如何に理不尽なものかがよく分かる。

ローズは戦火が激しくなって、英領アイルランドから叔母を頼ってアイルランド共和国へ移ってきた。英国と違って中立を宣言していたアイルランド。思想・宗教も違っている。

都会からやってきた若くて美しい女性の存在は、それだけで注目の的。なかでもゴーント神父(テオ・ジェームズ)と酒屋の息子で英国軍人となったマイケル(ジャック・レイナー)は環境が好対照でローズを巡って争う破目になる。

余りにもでき過ぎの感は否めないが、ローズを巡る40年の愛の物語は聖書に書かれた日記により終結を迎える。たった一つの愛を貫いた女性の壮大なラブストーリーだ。

「ロング、ロングバケーション」(17・伊)75点

2018-06-17 12:34:00 | 2016~(平成28~)

・ ユーモアたっぷりな老夫婦の終活を描いたロード・ムービー。




50年連れ添った老夫婦が、愛用のキャンピング・カーでボストンの自宅からヘミングウェイが暮らしたキーウェストを目指して旅に出る。
人生の終わりを見据え過ぎ去った時を懐かしみながら夫婦の愛を確かめ合う、ユーモラスなロード・ムービー。

マイケル・ザドュリアン原作<旅の終わりに>をイタリアの巨匠パオラ・ヴィルズイ が監督。夫婦役をヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドという名優が共演している。

H・ミレンは知的な役柄が多いが本作では末期ガンながら強い生命力と夫への愛を全面に出した快活な女性エラに扮し、ほゞ完璧な演技は流石のオスカー女優。

D・サザーランドはヘミングウェイ研究の元・文学教授ジョンで、アルツハイマーが進行中。

こんな二人が娘や息子に行き先を黙って愛用のレジャー・シーガーに乗って旅に出る。それは終活への旅でもあった。

現実には認知症の夫が運転するキャンピングカーで長い旅を全うすることはできそうもないが、そこは映画ならではのこと。

本作ではガソリンスタンドで給油中、エラを置き去りにしたり、蛇行運転して警官に止められたりする。これもエピソードとして笑って済ませたい。

<ユーモアを忘れずに、夫婦の愛を描きたかった>というP・ヴィルズィは旅のエピソードのなかで如何に夫婦愛の絆が深いかを随所に織り込んでくる。

教え子の女性に遭遇したジョンは名前をしっかり覚えているのに、自分の娘や息子の名前を思いだせなかったり、妻のエラを隣人のリリアンを混同したりする。そのリリアンとは2年間浮気をしていたのが判明する。知らなかったほうが良かった昔の秘密がエラを怒らせ老人ホームに置き去りにする。

エラの初恋相手ダンはヒッピーの黒人男性だった。ジョンは未だに嫉妬してしていて老人ホームで再会すると銃を向けたりの騒ぎを起こす。

目的地キーウェストはすっかり観光地化して昔の面影はなかったが、人生を謳歌している人々に触れるだけで老夫婦の終活は目的を果たしたのだろう。

死を待つのみの老人ホームを拒否し、娘や息子に迷惑を掛けたくないというエラの想いは清々しいエンディングを迎える。

ジョンは果たして満足した人生を全うしたのだろうか?自分がジョンだったらと我が身に置き変えてみるとと少し気分が重くなってしまった。











「ウィル・ペニー」(67・米 )75点

2018-06-12 12:53:11 | 外国映画 1960~79

・ 時代考証に忠実な初老の牛追いを好演したC・ヘストン。




サム・ペキンパーのTVシリーズの一編からトム・グライスが監督・脚本化した初老の牛追い(カウボーイ)ウィル・ペニーの物語。

この時代の西部劇はイタリア製(マカロニ・ウェスタン)に人気を奪われ低迷中だったが、本作のような拾い物もあった。

序盤から時代考証に忠実な本物感に拘った映像はカウボーイの過酷な仕事ぶりが丁寧に描かれ、まもなく50を迎えるウィル・ペニーが置かれたポジショニングが伝わってくる。

ウィルに扮したチャールトン・ヘストンは、「十戒」(56)、「ベンハー」(59)のような大作で強く逞しい役柄が多かったが、本作では新たな役柄に挑戦、情感あふれる初老の男に扮し彼のお気に入りの作品となった。

テキサスからカンザスシティまでの牛追いに携わったウィル・ペニーは、牛追いマスターからの誘いを断り若いカウボーイ二人とともにテキサスへ向かう。

途中鹿の狩猟でクイント一家と揉め殺傷事件を起こしたため、医師のいる場所を尋ねようと交易所へ立ち寄る。そこで出会ったのはオレゴンにいる夫の元へ旅するキャサリーンと息子ホーレスのアレン親子だった。

クイント一家に襲われ負傷したウィルとアレン親子が再会したのは山岳地帯の監視小屋。

ここからの流れは何処かで観たような展開だが本作が<第二のシェーン>といわれたことに納得。

ウィルは男らしくて逞しいが、環境が違う夫のある女性と暮らすことが無理なのを知っていた。朴訥な不器用な生きざまがとても切ない。

キャサリーンは息子に朗読したり、歌を歌ったりする母性的で、ウィルに「あんたは男を男らしくさせる」といわせるような毅然とした美しさをもつ女性。49歳で亡くなってしまったジョーン・ハケットが好演している。

クイントに扮したドナルド・プレザンスが狂信的な敵役で印象に残り、その息子がブルース・ダーン、若いカウボーイ・ブルーのリー・メジャース、フラットアイアン牧場主にベン・ジョンソンという名優たちが脇を固めている。

本作の2年後「ワイルド・パンチ」で新機軸を歩みだす米国製西部劇。S・ペキンパーの盟友ルシアン・パラードの撮影が光る作品でもあった。






「はじまりの ボーイミーツガール」(16・仏)70点

2018-06-10 11:52:25 | 2016~(平成28~)

・ 優等生少女に恋する落ちこぼれ少年の青春ラブストーリー。




パスカル・ルテールのベストセラー「点字で書かれた心」を、監督3作目のミシェル・ブジュナーで映画化された、青春ラブストーリー。

チェリストを夢見る優等生少女マリー(アリックス・ヴァイヨ)へ密かに恋心を抱く落ちこぼれの少年ヴィクトール(ジャン=スタン・デュ・パック)。

ある日マリーが急接近、ホホにキスされ電流が走ったと舞い上がってしまう。それにはある秘密があった。

12歳の少年少女の恋といえば「小さな恋のメロディ」(71・英)を連想するが、主演のマーク・レスターに負けないデュパックの巻き毛でつぶらな瞳がとても可愛い。

「女は信用できない」などと大人びた言葉とはウラハラにドキドキだったり、親友アイカムに「どん底のお前に最後のチャンスだ」と励まされ勇気百倍。

マリーの急接近の理由が自分が利用されていることに気づき落胆し父親から「ウソのない愛は愛じゃない」とアドヴァイスを受けたり、さすがはアムールの国フランスならではの展開。

マリーは遺伝的難病で視力が落ち失明するかもしれないが、音楽学校の受験を諦めていなかった。その情熱の心を動かされ代返・代筆を買ってでるヴィクトールが生き生きとしていた。

二人の家庭環境の違いや、友達との関係などを織り込みながら最後は強引ながらマリーのチェロが劇場いっぱいに響く。

マリーに扮したヴァイヨはヴァイオリニストだけに楽器を演奏する表情はリアル感が溢れ吹き替えなしでチェロを演奏。

小説は4年後の続編があるそうだが、同一キャストで映画化されたら観てみたい。

「gifted / ギフテッド」(17・米) 75点

2018-06-07 17:29:39 | 2016~(平成28~)

・ 家族や子供の教育の在り方をハートフルに描いたドラマ。




題名のGiftedとは、アインシュタインのように先天的に高度な知的能力を持った人のこと。天才的な数学の才能がありながら普通の子供として育てたい幼い姪と暮らす独身男の物語。

フロリダのタンパ近郊でボート修理で生計を立てているフランク(クリス・エヴァンス)は7歳の姪メアリー(マッケナ・グレイス)と二人暮らし。

学校で天才的な数学の才能があることが判明。校長は天才児教育プログラムのある学校へ転向を進めるが、フランクは断ってしまう。それは亡くなった姉との約束でもあった。

ところが断絶状態のフランクの母イヴリン(リンゼイ・ダンカン)が突然現れ、孫の英才教育のため引き取りにくる。

脚本のトム・フリンは、コメディ脚本で売れたが半ば引退状態の人。実の姉と飼っている猫をヒントに書いたとのこと。大作「アメージング・スパイダーマン」シリーズから解放されたマーク・ウェヴが監督。

天才少女メアリーを演じたのはオーディションで選ばれたM・グレイス。06年生まれなので実年齢は3~4歳上だが、健気でちょっぴりオシャマな7歳児を演じ、役柄同様天才児ぶりを発揮。彼女の好演なしではドラマは成立しなかったことだろう。

ただお涙頂戴の感動ドラマのみの要素ではなく、家族の在り方や子供の教育を保護者はどうあるべきかを提示していて、ちょっぴり考えさせられる。

メアリーのような天才少女は特例だが、スポーツ・芸術・芸能など子供の長所をどう育てるべきか環境で左右されることは多い。

親権を巡り裁判を起こすドラマは収まるところへ収まったが、現実はなかなか難しいのでは?

祖母の<普通の子として育てることは人類の発展に大きなマイナス>という主張は極論だが、エリート大学で哲学を学び大学教授への道を断った独身男が育てるほうが良いのか?は絶妙なドラマ構成となっている。