晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『ブロンド少女は過激に美しく』 80点

2010-10-30 15:05:37 | (欧州・アジア他) 2000~09

ブロンド少女は過激に美しく

2009年/ポルトガル=フランス=スペイン

みずみずしいオリヴェイラ監督の味わい深い小品

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

ポルトガルの現役最古参監督マノエル・デ・オリヴェイラが、エキゾチックな扇を持った少女に恋した男の経緯を描いた味わい深い小品。19世紀の作家エサ・デ・ケイロスの小説を現代に置き換えて、想像力溢れる語り口はみずみずしく、とても撮影時100歳とは思えないほど若々しい。
「妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし」という設定は「夜顔」などでお馴染みの監督得意なパターン。今回は主役の会計士・マカリオ(リカルド・トレパ)が列車で偶然居合わせた見知らぬ女性(レオノール・シルヴェイラ)に身の上話を始める。
道路越しにベランダで見染めた謎の少女。パーティでキッカケを掴むが、厳格な叔父に反対される。長めのフィックス・カメラで繰り広げられるマカリオの古典的な恋物語は、意外な結末を迎える。夕方に鳴る鐘の音やリスボンの風景が挿入されるたびに振幅があり浮き沈みがある。
観客は、列車の婦人と同じ気分でマカリアの恋を列車の音と流れゆく風景とともにウィットに富んだ小噺を聴いた気分になる。
マカリオを演じたリカルド・トレパは監督の実の孫で初主演ながら歳の離れた少女に恋する純情な男を好演している。ペソアの詩を朗読するルイス=ミゲル・シントラや叔父のディオゴ・ドリアなどベテランが脇を固め揺るぎがない。ただ謎の少女・ルイザ役カタリナ・ヴァレンシュタインに魅力を感じなかった。個人差があるので何とも言えないが、いい年をした男が一目惚れするタイプとは思えない。
若々しい語り口で健在ぶりを見せ、100歳を超えても衰えを知らないオリヴェイラ。次回作も完成して来年公開されるという。楽しみだ。


『黄金(1948)』 85点

2010-10-24 14:37:05 | 外国映画 1946~59




黄金(1948)


1948年/アメリカ






ジョン・ヒューストンの本領発揮








総合★★★★☆
85



ストーリー

★★★★☆
85点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
85点




ビジュアル

★★★★☆
85点




音楽

★★★★☆
80点





B・トレイヴンの原作をジョン・ヒューストンが監督・脚本化し<人間の欲望の果てがもたらす人生の可笑しさ>を描いた3人の男の物語。
赤貧の暮らしから抜け出すために必死な男盛りのドブス(ハンフリー・ボガート)、しっかりものの若者カーテイン(ティム・ホルト)そして年老いた山師ハワード(ウォルター・ヒューストン)が出会ったのがメキシコのタムピコ港。ハワードの自信たっぷりな言葉に乗ってシエラ・マドレ山脈に金鉱掘りへ。
H・ボガートが代表作「カサブランカ」のイメージ脱却を試みた異色の汚れ役。貧しいがそれなりの良心を持っている男が金を手に入れると仲間を信じられず疑心暗鬼になっていくさまが哀れに描かれてゆく。人間の欲の深さは限りないというお手本のよう。ハリウッド映画としては異色の展開ぶりがかえって評判を呼んでヒットしたという。
J・ヒューストンと黒澤に例えると、ボガートは三船である。
志村喬にあたるのがW・ヒューストンで監督の実の父である。行く末を見越した豪快な笑いはアカデミー助演男優賞受賞に相応しい。もう一人の男T・ホルトは木村功か?決して不幸な終わり方はしない良識ある暮らしが待っているタイプ。
3人3様の鋭い人間観察はJ・ヒューストンと黒澤の共通項でもあり、これでアカデミー監督・脚色賞を受賞したのも頷ける。






『ルイーサ』 85点

2010-10-23 15:14:19 | (欧州・アジア他) 2000~09

ルイーサ

2008年/アルゼンチン=スペイン

ほど良いユーモアで生きる勇気を与えてくれる

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

アルゼンチンの地下鉄を舞台にした長編脚本コンクールで最優秀作品を受賞したロシオ・アスアガの脚本。これが長編デビュー作のゴンサロ・カルサーダが監督した。
ブエノスアイレスで愛猫・ティノと暮らす初老の女性ルイーサ(レオノール・マンソ)。決まった時間に決まった服装で毎日アパートを出てバスに乗り霊園の受付と女優のお手伝いの副業をこなし帰ってくる日々。ティノが死んだ日に本業と副業を同時に失い、手元には20ペソ(500円)しか残っておらずティノの火葬すらできない。若いころ、夫と娘を失った悪夢に苛まれる。
前半はシニカルでほど良いユーモアで包まれ、孤独なルイーサの日々の暮らしが伺える。
ここから彼女の開き直りが始まり、哀愁あるスーペル・チャランゴの音楽のトーンもポジティブに変わてくる。銀行口座の解約通知を手に乗ったバスが故障して、生まれて初めて地下鉄に乗り別世界があることを知る。
ひととの交流を避けてきた世間知らずのルイーサに、苦境を打開するための悪戦苦闘ぶりによって生きる勇気と力が自ずと生みだされる。そして心の内を聴いてもらえる相手がいることで心が和んでくることも経験する。
作品では詳しい説明は一切ないが、夫と娘を失ったのは、’76の軍事政権下の独裁政治による紛争の被害によるものだろう。老い・失業・貧困と孤独な身に忍び寄る3重苦をブエノスアイレスの街並みが癒してくれる。優しさが心に残る作品だ。
ルイーサを演じたのはアルゼンチンが生んだ国民的舞台女優レオノール・マンソ。日本の杉村春子を思わせる名女優の趣き。ルイーサを癒してくれたのは、片足を失くしながらも飄々と日々を過ごすオラシオ役のジャン・ピエール・レケラス。惜しくもこれが遺作となってしまった。もうひとりヒトの良い管理人ホセ役のマルセロ・セレが暗くなりがちなトーンを和ませてくれている。


『終着駅-トルストイ最後の旅-』 80点

2010-10-17 15:08:18 | (欧州・アジア他) 2000~09

終着駅-トルストイ最後の旅-

2009年/ドイツ=ロシア

三大悪妻と言われた文豪の妻を愛おしく気高く演じたH・ミレン

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」の文豪トルストイとその妻の最晩年を側近である若き秘書の目を通して描いた愛と葛藤の物語。ロケ地の映像や衣装も手抜きがなく、監督・脚本のマイケル・ホフマンの丁寧な作りは好感が持てる。
世界三大悪妻と呼ばれたトルストイの妻・ソフィアを演じたヘレン・ミレンの気高い演技は素晴らしい。50年近く連れ添った夫トルストイ(クリストファー・プラマー)を愛し続け、我がままで感情を抑えることのない素直さは傷つきやすく愛おしくもある。帝政ロシアの伯爵でもあり大地主でもあるトルストイは若い頃放蕩生活を送ったにもかかわらず、晩年は愛・道徳・非暴力を訴え貧困や抑圧からの解放を唱える理想主義者となっている。その思想を支えるのは私有財産の否定を唱えるトルストイ主義者を支える側近のチェルトコトフ(ポール・ジアマッティ)たち。若き秘書ワレンチン(ジェームズ・マカヴォイ)も純粋に仕えるが...。P・ジアマッティとJ・マカヴォイが類型的な演技になることなく、このドラマを多角的に捉える役割を果たしている。
16歳年下で今の暮らしを守ることを願う妻と理想主義を唱え神格化しつつある我が身をもてあまし気味の夫。多感な老夫婦には終着駅が近づいてくるのを感じながら、<82歳の家出という別れかた>になるのが哀しく切なく描かれる。童貞のワレンチンがコミューンで知り合ったマーシャ(ケリー・コンドン)との恋が同時進行して「愛のテーマ」が厚みを増してくる。
ドイツ・ロシアの合作映画だが、英語の台詞が気になるのは最初だけ。老いも若きも「人生」や「愛」もしくは「夫婦」を改めて考えさせられる映画だ。


『十三人の刺客』 80点

2010-10-13 14:17:07 | 日本映画 2010~15(平成23~27)

十三人の刺客

2010年/日本

本格的時代劇のリアルさとエンタテインメントの融合

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

東映時代劇が絶頂期を過ぎ、名画「七人の侍」をお手本に「集団抗争時代劇」なるものをジャンルとして確立したのが、’63の「十三人の刺客」。工藤栄一監督、片岡千恵蔵主演で里見浩太郎、嵐寛寿郎、丹波哲郎など錚々たるメンバーが揃い、終盤30分ものリアルな集団乱闘劇を展開して評判となった。
その池宮彰一郎の脚本を、三池崇史監督・天願大介脚色でリメイクしている。前作に劣らない豪華キャストで、カラー化してよりリアルに、スケールアップしてよりエンタテインメント性を増したつくりとなった。ヴェネチア映画祭では無冠となったが試写会では拍手が鳴り止まなかったとか。
江戸末期、明石藩江戸家老・間宮図書(内野聖陽)の割腹自害によって、明石藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)の暴君ぶりが筆頭家老・土井大炊頭利位(平幹二朗)の知るところとなる。
原作の良さは、史実にもとづくリアルなタッチ。11代将軍家斉の25男明石藩8代藩主松平斉宣が参勤交代中、尾張藩で行列を横切った3歳の幼児を切り捨てご免にしたことから、明石藩の領内通行を禁じている。組織対組織の確執とそれを束ねる組織の長の裁きが背景にしっかりとあっての争いである。
リメイク版としてはかなり良くできているものの、その背景の描き方は極めて浅い。土井大炊頭利位が御目付・島田新左衛門(役所広司)に命じるまでで役割は終わってしまう。
そのかわり、斉韶が如何に傍若無人であったかをかなりショッキングに描き、刺客の正当性を強調している。手足を切られ舌まで抜かれた女を出すなどは三池監督得意のサイコ調で、正視できないシーンも。
刺客のなかでは新左衛門人物を慕う目付組頭倉永(松方弘樹)浪人平山(伊原剛志)佐原(古田新太)甥の新六郎(山田孝之)らが主要人物だがそのほかは目立たない。道中山の民・小弥太(伊勢谷友介)が加わり七人の侍の菊千代的な役割をするが、ちょっと遊び過ぎ。もっぱら明石藩の忠君・鬼頭半兵衛(市村正親)と新左衛門の知恵比べと落合宿の決選へと向かう。
その乱闘劇は前作よりさらに20分長い50分。カラー化され壮絶さは増すが、明石藩が200人を超えるのはやり過ぎでは?
本格的時代劇のテイストでありながらエンタテインメント性の融合を図りながら終盤はバランスを失ってしまったのが惜しい。


『勝負をつけろ』 75点

2010-10-08 14:13:32 | 外国映画 1960~79

勝負をつけろ

1961年/フランス

ベルモンドの魅力をモノクロで見せたフィルム・ノワール

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆80点

原作ジョゼ・ジョヴァンニ、監督ジャン・ベッケルが共同で脚本化したジャン・ポール・ベルモンドのフィルム・ノワール。
戦後間もなくマルセイユに現れたラ・ロッカ(J・P・ベルモンド)。彼の目的は無実の罪で殺人罪で告訴されている友人のアデ(ピエール・ヴォネック)を救うためで、密かに好意を抱いていたアデの妹ジュヌビエーブ(クリスティーネ・カウフマン)を訪ねる。
前半は暗黒街の一匹狼・ベルモンドの魅力がモノクロ画面に溢れ、なかなかいい雰囲気。これから命懸けの闘いで親友アデを助ける流れを想像した。ところがアメリカ兵崩れのゴロツキと争い負傷してあっさり刑務所ゆき。故意の刑務所行きにしては、出来過ぎ。
後半のヤマ場は減刑を期待してのスリリングな地雷撤去作業のシーン。
シーン毎にとてもいいカットが観られるのに全体のトーンに一貫性がなく男同士の友情物語としては不満が残る。そして如何にもフランス映画らしいエンディングで消化不良の想い。原作のジョヴァンニも出来に満足しなかったらしく、筆者は未見だが、12年後にベルモンド主演で「ラ・スクムーン」というタイトルで自ら監督した作品が好評だったという。


『さらば友よ』 80点

2010-10-06 10:33:34 | 外国映画 1960~79

さらば友よ

1968年/フランス

スタイリッシュな男の友情を描いた犯罪劇

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

アラン・ドロンと共演したチャールス・ブロンソンをスターダムに押し上げたキッカケとなった作品として記憶に残っている。ジャン・エルマン監督と原作のセバスチャン・ジャブリゾの共同脚本による犯罪サスペンスだが、何から何までスタイリッシュ。
プロローグは、アルジェリア戦線から兵士達が寄港したマルセイユ。軍医のバラン(A・ドロン)とアメリカ兵プロップ(C・ブロンソン)が銃の受け渡しをする。バランが間違って軍医仲間であるモーツアルトを誤射した銃を始末するためであった。そのモーツアルトの替わりに金庫破りをするハメになったバランと金になりそうなことを嗅ぎつけたプロップが加わる。
頼まれて債権を戻すためのバランと大金を盗もうとするプロップ。金庫の暗証番号を探るという共同の目的で、密室での諍いは不思議な友情へと移ってゆく。閉じ込められた2人が、上半身裸の肉体美を競うサービス・カットも見どころのひとつ。
もうひとり2人を追う刑事(ベルナール・フレッソン)とプロップとの男同士の約束が花を添える。紙コップのコーヒーにコインを5枚入れてこぼれなかったら自白を強要しないというもの。このシーンでC・ブロンソンはスターの仲間入りしたといっても過言ではない。そして伝説的なラスト・シーンまで男と男の友情物語が続く。タバコを小道具にした名画は多いがこれほど見事なエンディングは滅多にお目に掛かれない。サスペンスとしては荒っぽいところが多く必ずしも良い出来とは言えないが、男のロマンに酔いしれるにはもってこい。
女優では「禁じられた遊び」のミッシェルで涙を誘ったブリジッド・フォッセーがすっかり大人になって16年振りに銀幕に帰ってきた。名子役必ずしも名女優にあらずだが、青春時代何度も観た名子役の復帰はそれだけで満足。


『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』 80点

2010-10-03 13:07:12 | (欧州・アジア他) 2000~09

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

2009年/スウェーデン=デンマーク=ドイツ

完結してスッキリ、そして物足りない気も

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

スウェーデン、スティーグ・ラーソンのベストセラー3部作の完結編。社会派雑誌「ミレニアム」発行人ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)が、天才ハッカー・リスベット(ノオミ・ラパス)の秘密を通して国家権力の秘密組織や女性を虐待する男たちへ立ち向かう。
第2部・3部を一気に観たかったが、かなりの体力と時間を要するので、2週間ぶりに完結編を観た。ようやくスッキリしたが、物足りない気も。
リスベットが脳に銃弾が残る瀕死の重傷から始まる第3部。主治医に命を救われ秘密組織SEKTIONの魔の手からも守られる。この2人の距離感が何ともいえず心地良い。ミカエルも特集号の発行に向けモバイル端末を病院へ贈り、リスベットに自叙伝を書かせたり、法廷での弁護を妹に託すなど、バックアップを怠らない。
最大のヤマ場は法廷でのシーン。パンク・ファッションに身を包んだリスベット。法廷劇としての盛り上がりはいまひとつという感じはするが、ほとんど話をしない彼女がぽつりと言う言葉はとても重く感じる。
壮大なストーリーなだけに、話を追うだけで精一杯なのが惜しい。第2部で死んだと思ったザラ、逃げた金髪のニーダーマンも完結の仕方が良くも悪くも想定外だった。
単なるサスペンスには終わらせない盛りだくさんの3部作はミカエルとリスベットというちょっと風変わりなキャラクターを残して終わった。この壮大なミステリーは4部5部と続くはずだったが50歳の若さで急死したS・ラーソンとともに陽の目を見そうもない。
3部作のなかでは1部のできが一番良かったと思うが、これは話の面白さとニールス・アルデン・オプレヴ監督の手腕によるものだろう。その1部をデヴィド・フィンチャー監督、ダニエル・グレイグ主演でリメイクされるのを楽しみにしたい。


『氷の微笑』 80点

2010-10-02 16:58:52 | (米国) 1980~99 

氷の微笑

1992年/アメリカ

サスペンスよりセクシャル・バイオレンス

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

公開時にシャロン・ストーンの大胆な演技と犯人は誰か?で話題を呼び、大ヒットしたサスペンス。監督はポール・ヴァーホーヴェン、撮影は2年後「スピード」で監督デビューしたヤン・デ・ボン。
サンフランシスコで引退したロック・スターがアイスピックで惨殺され、容疑者は数か月前同じ事件を小説にしていたキャサリン・トラメル(S・ストーン)。事件を追う刑事は<シューター(早撃ち)>ことニック・カラン(マイケル・ダグラス)。2人の駆け引きが最大の見せ場となる。
有名な尋問中の足の組み換えなど、よりセクシーで刺激的なシーンを意識的に多く見せることでミステリアスな部分を浮かび上がらせる監督の演出は、当時無名だったS・ストーンを起用することで大成功した。
M・ダグラスは、麻薬常用中に観光客を誤って射殺した過去があるダーティな刑事。女好きで過去を引きずっている男は得意のはまり役である。
最初の殺人事件から次から次へと周辺の人が殺されるが、いづれも2人に関連するひとばかり。全て同一犯人なのか?の興味が物語を最後まで引っ張ってゆく。
シスコの街並みを疾走するカーチェイスは「ブリット」以来お馴染みだが、ヤン・デ・ボンは遜色ない迫力あるシーンを撮って見せ場のひとつとなっている。
ミステリーとしてはそれほど出来は良いとは言えないが、シーンシーンで魅力ある映像があって最後まで楽しめた。