・ 日テレ傘下入り前・宮崎駿最後の?ジブリ作品。
ポスターのみで事前宣伝を一切行わなかった宮崎駿13作目は公開後ファン賛否が渦巻いていたが、ここに来て沈静化しつつあるようだ。
筆者は「風の谷のナウシカ」(84)以来2度目の劇場公開での鑑賞というほど宮崎アニメには疎い人間だが「千と千尋・・・」など公開後話題作は観ていたので恐らく遺作になるだろう本作は劇場鑑賞した。
ひと言で言えば総集編である。作画は本人ではないが随所に過去の作品を思わせるシーンが現れ宮崎ワールドに魅了される。
時代は1944年、10歳の少年牧真人。入院中の母を亡くし父の経営する軍需工場へ疎開した2年間のファンタジー。
宮崎の生い立ちとオーバーラップするが実年齢(3歳)とは合致しないため自伝的要素を織り込んだもの。
多感な少年時代、大好きな母を亡くしその妹を母親と呼ぶには複雑な戸惑いが全編に流れる。
未読だが本ネタはジョン・コナリーのファンタジー小説<失われたものたちの本>で本題の吉野源三郎の小説は宮崎の愛読書だという。この2冊が重なって骨格ができあがったようだ。
物語は説教臭くなく楽しめるが深層心理はよく分からない。恐らく何度も観ることで見えてくるのだろう。
大叔父の不安定な13個の積み木を託された真人が自分の扉を開けて新しい世界へ旅立つことで感性や生き甲斐を見つけることができることを暗示しているようだ。
日テレ傘下に入り宮崎ワールドは本作が最後になりそう。製作が遅れ完成した本作は巧く編集したとはいえないが盟友の故・高畑勲には伝わったに違いない。
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