晴れ、ときどき映画三昧

「遠い空の向こうに」(99・米)75点



 ・ 実在人物の自伝的小説を映画化した感動の青春ドラマ。


 NASAの元エンジニアだったホーマー・H・ヒッカム・ジュニアの原作「Rokecket Boys」をジョー・ジョンストン監督・ジェイク・ギレンホール主演で映画化。原題「October Sky」は原作のアナグラムとなっている。

 舞台は1950年代ウェストヴァージニアの炭鉱の町に住む高校生ホーマー(J・ギレンホール)がソ連の人工衛星スプートニクに衝撃を受け、仲間4人で「ロケット・ボーイズ」を結成。ロケット開発に夢中になり何度の失敗や困難を乗り越えながら夢を諦めず挑戦するという感動のストーリー。

 炭鉱の町をテーマにした作品は良作が多く、古くはジョン・フォード監督「わが谷は緑なりき」(41)を筆頭に同時代では「ブラス!」(96)・「リトル・ダンサー」(00)など英国映画の名作が多い。日本でも「フラガール」(06)が有名だが、何れも花形産業だった炭鉱が時代に置き去りにされながら懸命に生きる世代と、そこから何とか抜けだそうとする若者たちの世代ギャップを捉えている。
 本作は何しろ英語の教科書にも載っているというほどの有名なハナシなので、友情・家族愛・善き理解者が周囲にいて敵役が殆ど登場しない。
 大きな壁となったのは、封鎖社会環境や頑固で保守的な父と愛情ある母の期待を背負った少年の心の葛藤。炭鉱の町で生きていくには父親のように炭鉱夫になるか、兄のようにスポーツで奨学金をもらって大学進学するしかすべがない。
 そんななか、ロケット遊びと誤解される彼らの善き理解者は教師ライリー(ローラ・ダーン)だった。<夢見るだけでは道は拓けない>、<内なる自分の声を聴け>に励まされ、頑固な父ジョン(クリス・クーパー)を説得、「国際学生科学技術フェア」への道を切り拓いて行く。

 山火事・父の怪我・難病の教師などいくつかの逸話を挟みながら感動のラストシーンへ。 初主演のギレンホールの初々しさと昔気質の父親C・クーパーの父と息子の絆は固いヒモに結ばれていた。きれいごと過ぎるキライはあるものの素直に受け入れて鑑賞できたのは事実をもとにしたドラマだったからだろうか?
 

 
 
 

コメント一覧

風早真希
この映画は、自分の人生を左右するような夢と出会い、その夢をひたむきな努力で現実のものとした少年の実話を、清冽で清々しく描いた感動の名作だと思います。

この映画「遠い空の向こうに」は、ロケット作りに夢を賭けた少年4人の情熱と友情を、元NASAの科学エンジニア、ホーマー・H・ヒッカム・ジュニアの自伝的小説をもとに映画化した感動的な作品ですね。

誰でも一度は経験する、運命的な瞬間というものがあるものです。
自分の人生を左右するような夢に出会う瞬間というものが------。

そんな夢をひたむきな努力で、現実のものとした少年の実話であるこの映画は、ノスタルジックな感動が清冽で清々しく、心の奥底に迫ってきます。

1957年10月4日、ソ連が史上初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功します。
そして、このニュースは、アメリカの小さな炭鉱町でも大事件として報じられました。

そしてこの町に、上空を流れ星のごとく駆け抜けるスプートニクの姿を見た瞬間、自分の人生を決定づける天の声を聞いた少年がいたのです。

この少年は、周囲の人々のかけがえのない協力を得て、自らの、そして、アメリカの未来を切り開いて行くのです。

友人と一緒にロケット作りに熱中する少年ホーマー(ジェイク・ギレンホール)。
もちろん、最初のうちは失敗の連続。
庭の柵を爆破したり、炭坑を直撃したり怒られる事もしばしば。

オールディーズの名曲に乗せて、スラップスティックに綴られる失敗の風景が微笑ましく描かれ、遂には、打ち上げたロケットの一つが、山火事の原因になったと責められたりもするのです。

彼ら、"ロケット・ボーイズ"の前に立ちはだかる数々の困難。
"夢"をつかむためには、"現実"というハードルを越えなければならないのです。

しかし、ホーマーにとって最大のハードルは、生粋の炭坑夫であり、息子の突拍子もない"夢"を理解出来ない父親ジョン(クリス・クーパー)との対立でした。

炭坑夫として生きる事を運命づけられた町で、"硬直した旧世代と柔軟な新世代"という世代間の対立が、明らかになってくるのです。

時代はまさに、エネルギー産業の変革期。
地下を掘り進む"炭鉱"と、空へ飛び立つ"ロケット"。
衰退する産業と振興する産業の葛藤が、シンボリックに描き出されて圧巻です。

成功の陰に理解者ありとは良く言われる言葉ですが、それが地元の高校の女教師ミス・ライリー(ローラ・ダーン)の存在です。

少年たちのクリエイティブな発想や意気込みを尊重し、その才能を伸ばすために、援助を惜しまない彼女の姿勢に、"教育の何たるか"を見る思いで、目頭に熱いものがこみ上げて来るのを感じました。

その後、苦難の末、全米科学フェアで、最優秀賞を受賞するという栄光をつかんだホーマー。
そして、この映画で最も感動的な場面が訪れるのです。

凱旋後の打ち上げを見に来て欲しいと父親に頼むホーマー。
この時、ホーマーは、正反対の生き方を選び、相反し続けて来た父親に向かって言います。

「自分の粘り、真っ直ぐな生き方は親父から学んだものだ。どんな科学者でもない、自分にとっての英雄は親父なんだ。」と------。

これには、久し振りに心の底からの感動で、胸が打ち震えました。
誇り高き職人気質の父親にとって、立派に成長した息子がどんなに誇らしかった事でしょう------。

そして、この映画のラストシーン。
空へ向かって、どこまでもどこまでも飛んで行くロケットを眺める町の人々。

「ミス・ライリー号」と名付けられたこのロケットを、病床のミス・ライリーもしっかりと目に焼き付けているのです。

そっと息子の肩に手を回す父親。
親子の心が真に通い合った瞬間であり、逆境を乗り越えようとする"若い勇気"が結実した瞬間なのだと思います。

この名作を観終えた今、極上の感動にひたっている自分がいます。
どこか懐かしいこの映画に、こんなに感動出来るとは、我ながら、ある意味、恵まれた少年時代を送って来たのではないかと思うのです。

つまり、私も、両親、恩師、友人など、たくさんの愛に支えられて生きて来たのであろうと、つくづく思うのです。

だからこそ、こうして感動出来るのです。
忘れかけていた"大事な何か"を思い出させてくれた作品。
今はただ、感謝の気持ちでいっぱいです。
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