晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「暴力脱獄」(67・米) 70点

2014-04-28 18:06:10 | 外国映画 1960~79

 ・ 唯一の実存主義?アメリカン・ニューシネマで、P・ニューマンの代表作。

                    

 ポール・ニューマンといえば、「傷だらけの栄光」(56)、「ハスラー」(62)、「明日に向かって撃て!」(69)、「スティング」(74)、「評決}(83)など長年に亘る活躍で、名作に枚挙にいとまがないが、これも60年代・代表作のひとつ。

 題名から<刑務所内での受刑者たちや看守との痛快アクションもの>と思いがちだが、ちょっぴり想定外。原題は「Cool Hand Luke」(図々しいルーク)。原作はフロリダ刑務所体験をもとにしたドン・ピアースで脚本も手がけている。監督はスチュアート・ローゼンバーグ。

 酔ってパーキング・メーターを壊したことで収監されたルーク(P・ニューマン)。栄光の軍隊で勲章を授与されながら降格され除隊し、自分の居所がないようなそのクールな人物像は、刑務所長や看守たちにとって扱いにくく囚人たちの注目のマトとなる。

 容易に動じない姿勢や反骨精神が、ボス的存在のドラグライン(ジョージ・ケネディ)からも一目置かれる存在となって行く。

 唯一、心が許せる母(ジョー・ヴァン・フリート)の死で、脱走を防ぐため懲罰房へ入れられる。素直に従うルークだが、その後権威や体制に挑むように脱走を繰り返す・・・。


 紛れもない脱獄ものだが、類似作品とは大きく違うのはその理由。「ショーシャンクの空に」(95)は無実の罪で刑務所入りした主人公には、脱獄する目的がハッキリしている。ルークは反体制のための行動で、脱獄後に何をしたいかハッキリしない。刑務所内はポーカーをしたり、茹で卵の早食い競争をしたり、舗装道路の肉体労働以外それなりに自由な雰囲気だ。おとなしくしていれば2年後に出所できるのに脱獄で罪を重くしてしまう。

 P・ニューマンの孤独ななかに、周囲を惹きつける不思議な笑顔がぴったりな主人公ルーク。世の中を拗ね<神の存在を否定した人間中心で物事を図る思想>実存主義の持ち主なのだ。彼と正反対で取り巻きに囲まれながら権力には逆らえないドラグラインを演じたG・ケネディ。2人ともオスカーにノミネートされたがG・ケネディが助演男優賞を獲得している。

 随所に出てくるキリスト教を暗喩するようなシーンが見られ、ただの脱獄アクションではないことを意識した作りは、当時流行した「アメリカン・ニューシネマ」のひとつだからか?今観ると作為的で不自然な気もする。

 シンプルだが主人公の心情を表すようなラロ・シフリンの音楽が、権力に真っ向から挑み、<囚人たちの神となった主人公>のラストシーンを盛り上げている。

「長い灰色の線」(54・米) 60点

2014-04-22 17:55:09 | 外国映画 1946~59

 ・アイリッシュ気質を描いたジョン・フォード。

                    

ジョン・フォードといえば50年余りの監督生活で<西部劇の巨匠>として名高いが、百数十本の作品の中には現代劇も多い。なかでもオスカー受賞作の「我が谷は緑なりき」(41)、「静かなる男」(52)などアイリッシュ気質を愛情たっぷりに描いた傑作がある。

 本作は、1903年アイルランド移民のマーティ・マーが、ウェストポイントにある陸軍士官学校の教官として半生を送った自伝をもとにしたヒューマン・ストーリー。給仕から体育教官となる50年間の歩みは、両親がアイルランド人であるジョンフォード自身の軌跡とリンクしている。

 自分の仕事を一所懸命やり抜く人間に愛情を降り注ぐ演出手法は、TV時代に対抗してシネマスコープに挑んだJ・フォードならではの<詩情豊かな映像の詩人>といわれるシーンが満載。併せて主人公が失敗ばかりの若かりし頃の前半は、愛妻メアリーとのナレ染めなどもうひとつのJ・フォード・ワールドだ。

 かつて終戦後の日本では「二十四の瞳」を観て教師を目指した女性が多かったと聞くが、本作で士官学校に憧れた若者も多かったことだろう。この時代、アメリカの正義を一身に背負っていた士官学校は米国人の心を捉えたに違いない。最近では、TV・映画での自衛隊全面協力のドラマが目立つが、プロパガンダの匂いが色濃く、つい斜に構えてしまうのは何故だろう。

 マーティを演じたタイロン・パワーは40年代の2枚目スター。50年代に入って新機軸を拓くキッカケとなり、「情婦」(57)と並ぶ彼の代表作となった。今観るとオールドスタイルだが、ヒトを包み込む温かい人柄が滲み出るような演技はマーティそのもの。4年後44歳で亡くなったが、その後の彼を見て観たかった。

 妻メアリーを演じたモーリン・オハラは、J・フォードお気に入り女優だけあって温かみがあり一途で健気な女性を好演。タイロン・パワーとの息もぴったりだ。

 ウォード・ボンド(ハーマン中尉)、ドナルド・クリプス(マーティの父)、ハリー・ケリーJr(アイゼンハワー)などフォード一家が脇を固め、手堅い演技を魅せているのも見逃せない。

 伝統・制服・友情・プライドを背景にした人情味溢れる展開は、ブラスバンドが鳴り響く音とともにラストシーンまで続いて行く。筆者にはピンとこなかったが、当時のアメリカ人には涙して観たヒトもいたことだろう。
 

 
  

「アデル、ブルーは熱い色」(13・仏) 60点

2014-04-18 18:16:26 |  (欧州・アジア他) 2010~15

 ・ 179分、この長さを感じなかったのは?

                    

 スピルバーグに<偉大な愛の映画>と言わせた本作は、カンヌで最高賞・パルムドール受賞作品で史上初の監督・主演女優2人の3人受賞作品として話題を呼んだ。

 ハイスクールに通うアデル(アデル・エグザルコプロス)は上級生のトムとのデートで待ち合わせ場所に向かう途中、交差点ですれ違った青い髪の女性・エマ(レア・セドゥ)に一目惚れ、彼女との愛を夢にまで観てしまう。再会を求め場違いなバーで出会った彼女は画家志望の美学生で、教師を目指すアデルとは違う自立した女性でもあった。

 原作はジュリー・マロという作家のコミックで、2人の出逢いから<官能的で、詩的><至高の愛の物語>とキャッチフレーズにあるように2人の愛のプロセスがじっくり描かれているが、ストーリーに目新しさはない。

 アブデラティス・ケシシュ監督は過激な性描写でポルノグラフィックとの陰口にもメゲズ、多感な思春期の女性が一途な愛を貫こうとする心情をさらけ出し、まるで観客と共有するかのような強かさで描き切っている。

 如何に映像で愛の変遷を伝えるかが勝負だが、アップの多用で表情の微妙な変化を捉えて離さない手法は監督独自のもの。性描写と食事のシーンがしつこいぐらい多いのも必然性あってのもので、2人の性格や互いの家庭環境の違いをさり気なく描写して、今のフランスにおける根強い階級社会・同性愛への偏見をしっかり取り入れている。

 感情の赴くまま本能的に言動しながら、社会の常識を拭いされない普通の家庭で育ったアデルと、知的で愛と人生を芸術で追及することができる上流階級育ちのエマ。アデルの両親にとってエマは年上の仲の良い友達で、画家という不安定な仕事を心配する存在。父自慢の料理がトマトソース・パスタに普通の赤ワイン。エマの実母は再婚で義父が用意したのは、生ガキに選りすぐった白ワイン。話題は将来の夢でその違いは対照的。

 2人の恋の行方が全てといっていい179分。如何にも長いが、何故か退屈しなかった。R-18+という下世話な興味もちょっぴりあったがそれにはあまり驚きはなく、むしろ成熟したフランス文化を切り取って見せたケシュシュ監督のしつこいくらいの長廻しとドキュメントのような空気に翻弄されたせいかもしれない。

 アデルのその後を描いた続編もあるかもしれないので、公開時にはまた映画館に足を運ぶことになるだろう。

 ただ、もし自分がカンヌの審査員だったら、「ネブラスカ」に投票したに違いない。

「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」(13・米) 85点

2014-04-15 18:29:58 | (米国) 2010~15

 ・ エピソードの積み重ねで、じわじわと心に沁み入る父親の人生。

                     

 無冠に終わったが、アカデミー賞6部門にノミネートされ、カンヌ映画祭でパルムドール争いをしてブルース・ダーンが主演男優賞を獲得した作品といえば、いまひとつ食指が動かなかった人も興味を持ったことだろう。それほど地味なテーマでスター不在の映画でも、アレクサンダー・ペイン監督の手によれば輝きを増す人情ドラマになっている。

 モンタナ州ビリングスの高速道路を歩いている老人は、警官に何処へ行くのか聴かれ何と1500キロ先のネブラスカだと答える。家へ連れ戻された男はウディといい、100万ドルの賞金が当たったので取りに行くと言い張る。妻ジューンと長男ボブは老人ホームへ入れようとするが、次男のデイヴィッドは諦めさせるにはネブラスカへ本人を連れて行くしかないといい、クルマで連れて行くことに。

 「アバウト・シュミット」(02)で注目され、「サイドウェイ」(04)、「ファミリー・ツリー」(11)で<ヒューマンドラマの名手>としてその位置を確立したA・ペイン。市井の人々を描きながら共感を得る題材選びは小津を尊敬する監督ならでは。今回はボブ・ネルソンの脚本を演出するに当たって、故郷ネブラスカの風景をモノクロで描きスター起用も敢えてしないことで、この地味なストーリーをユーモラスにかつ、心に沁み入る静かな感動作に仕立て上げた。
 
 ウディは口数も少なく大酒飲みで頑固という何処にでも居そうな普遍的な父親で、毒舌家の妻にも2人の子供たちにも疎んじられている。オーディオ店を経営のデイヴィッドは、中年に差し掛かりながら美人でもない恋人にフラレ、気分転換もあって4日間の休みを取る気になったのだ。

 2人のロードムービーは行き違いの連続。酒を飲んで入れ歯を亡くし、額を怪我して入院、生まれ故郷のネブラスカへ立ち寄ると100万ドル賞金獲得が街中の噂になっていた。舞台の中心はウディの兄弟、旧友、初恋のひとがいる故郷で、ウディの人物像が浮かび上がって行くところ。

 若い頃自動車修理工場を経営していたこと、朝鮮戦争で傷ついたこと、おまけに結婚の経緯まで知るハメになったデイヴィッド。毒舌家でアバズレだった妻も地元のニュースキャスターの代役で頑張る長男ボブも駆けつけ、いざとなると一家が寄りそう姿が愛おしい。

 随所に笑いを込めながら、人間の浅はかな部分をペーソス溢れるタッチで描く115分。オスカーは獲れなくても、お金を払って映画館で観る価値は充分。主演男優賞にノミネートされたブルース・ダーンは77歳にして代表作に巡り合えたし、助演女優賞にノミネートされたジューン・スキッブは60歳でデビューして84歳の今も現役女優として健在だし、ウィル・フォーテは2枚目半的役柄でこれから役柄に恵まれそう。

 情感漂うラストシーンは男なら誰でも納得の行く行動で、父と息子はこうありたいと願わずにいられない。

 

 

「カレンダー・ガール」(03・英/米) 60点

2014-04-10 11:28:42 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ 小品ながら英国らしいユーモア溢れる爽やかさ。


                    

 実話をもとにユーモアたっぷりに描いた傑作といえば、「フルモンティ」(97)を思い出す人も多いだろう。本作はその女性版という宣伝文句で公開された記憶がある。

 ヨークシャーの田舎町ネイプリーで作られた中高年女性のヌード・カレンダーという想定外のことが話題となって30万部も売れた顛末記が描かれている。主演は後に「クイーン」(07)で賞を総なめにしたヘレン・ミレンだけに、今想うと役柄とはいえそのギャップに興味をそそられる。


 ことの起こりは、婦人会のメンバー集会でマンネリのテーマに飽き飽きしていた、クリス(H・ミレン)とアニー(ジュリー・ウォルターズ)の親友コンビ。アニーの愛する夫・ジョンが白血病で倒れ、その病院に椅子を寄付することで企画されたもの。

 周囲の好奇心や家族や婦人会幹部の反対を押し切ったクリスたちの行動力に、関西のおばちゃん同様のバイタリティを感じる。地方ならではの古いシキタリに潜在していた不満欲求がここに集結。

 ヨークシャーの美しい田園風景とともに、中高年女性の解放感が心地良い。残念だったのはハリウッドに招待されることになった後半。必要不可欠なシーンだが、はしゃぎ過ぎるオバサンたちを見せられ急にハートフルな気持ちが萎えてしまった気がする。


 それでも英国らしいユーモアとチョッピリ刺激の効いた作りは、爽やかなエンディングで心が洗われ女性版「フル・モンティ」に納得。ただカレンダーは欲しいとは思わなかったが・・・。

 そういえば邦画では「ぷりてぃ・ウーマン」(02)というハートフル・コメディの佳作がある。女性のパワーはグローバルだと改めて認識させられた。

「トスカーナの休日」(03・米/伊) 60点

2014-04-07 12:00:51 | (米国) 2000~09 

 ・ 疲れた独り暮らしの都会女性への応援歌。


               

 フランシス・メイズのベストセラー小説<イタリア、トスカーナの休日>をオードリー・ウェルズの脚本・監督、ダイアン・レイン主演で映画化。都会で暮らす疲れている女性への癒し映画として最適。


 サンフランシスコの作家で批評家でもあるフランシスは夫の浮気で離婚、慰謝料も払うハメになり大切な家も取られてしまう。親友のパティから、妊娠したため行けなくなった10日間のトスカーナ旅行をプレゼントされる。

 イタリア中部トスカーナ地方のコルトーナを中心に、地域独自の風景・フード・暮らしなどを充分堪能しながら、疲れた心身をリフレッシュ。観光ガイドとヒロインになったような同じ心境の女性への応援歌が繰り広げられる。

 ここで注目されるのはサンフランシスコとトスカーナの暮らしの違い。ヒロインが住んでいた家は本来夫に取られる筈はないのに、ここは男女平等が1歩も2歩も先を行くあまり、所得が多い妻が扶養する離婚の場合は慰謝料を払うのは妻なのだ。親友のパティは同性愛パートナーがいるし、ゲイだけの外国旅行ツアーがあるなど従来の観念は通じない。

 トスカーナは大家族で3世代同居が当たり前。それでも異国(ここではポーランド人)の労働者が出稼ぎに来ているのが今風で、娘がポーランドの職人と恋をしてひと騒動が起きる。一家の大黒柱はマンマで、エクアドルにネットの恋人ができたが失恋して落ち込むなど21世紀の風は吹いている。

 フランシスは、衝動的に<ブラマソーレ(太陽にこがれる者)>という築300年の売り家を財産をはたいて買ってしまう。いかにも唐突だが、独身専用のシスコのアパートに帰りたくなかったのだろう。ドラマの構成上細かいことは言うまい。

 ここで親切な不動産業者・マルティニ、謎の美女・キャサリン、ローマで出会う美男子・マルチェロと出逢い、触発されて行く。

 O・ウェルズはフェリーニの「甘い生活」「カビリアの夜」を連想させるイタリア映画へのオマージュを捧げ、フィレンツェ、ローマ、ポジターノの風景もしっかり取り入れるなど気遣いも忘れない。ただイタリア男はキザな台詞で女を口説くという定番メニューが少し鼻につく。GAPのキャラクター、ラウル・ボヴァがマルチェロという名で登場し、想定通りの役柄なのはパロディか?会話はないが、花を捧げる老人役でマリオ・モニチェリが小粋な男で登場して汚名返上しているが・・・。

 D・レインが前年「運命の女」に引き続いて年齢相応のヒロインを演じ、大人の女優として再認識された作品だが、その後の活躍があまり見られないのは寂しい。
 

「墓石と決闘」(67・米) 65点

2014-04-06 14:00:47 | 外国映画 1960~79

 ・ 男の友情と復讐劇を描いた<OKコラルのその後>。


                     

 1881のアリゾナ トゥーム・ストーンでのワイアット・アープ兄弟とクラントン一味の対決は、西部劇史上人気ある題材のひとつ。10年前「OK牧場の決斗」(57)で情感たっぷりにワイアット・アープとドク・ホリデイの物語を始め<決闘三部作>をヒットさせたジョン・スタージェス監督。自ら史実をもとに<決闘とその後>の二人の友情とクラントン一味との復讐劇を描いた言わば続編だが、まるっきり雰囲気は違う。


 アープはヘンリー・フォンダなど人気スターが演じていて日本なら清水の次郎長だろうか?本作でアープを演じたのがジェームズ・ガーナーでアープに匹敵する人気キャラクター、ドク・ホリデイをジェイソン・ロバーツが扮している。このキャスティングを観てもかなり渋いのが分かる。おまけにドラマにはアープの恋人・ローラもドクの愛人・ケイトも出てこない、女優不在の埃っぽい西部劇だ。


 特徴のひとつに仇役アイク・クラントンに扮したのがロバート・ライアンであることも見逃せない。いままでの観るからに荒くれ男ではない風貌に貫録すら漂っている。これは史実に少しでも近づけたいという現れのひとつ。

 決闘後、裁判でお互いを殺人罪で起訴したり、保安官選挙で投票を競ったり、銃で全てを解決する時代から決別しようと試行錯誤の時間を感じる。いわば最後の西部劇を切り取ったとも言える。

 史実は時代とともに何度も塗り替えられて行くが、結局は銅鉱山で賑わった街の繁栄に群がった人々の権力争いだったことだけは確か。「カウボーイ」という牛を売り買いすることで成り立った街を繁栄させた従来の集団は荒くれ男たちが多く、郡保安官が仕切ることでバランスが保てていた。これがクラントン一味で郊外に住んでいる。そこに東部からひと儲けしようと移ってきた新しい住民たち。街の治安のために有力者たちが街の保安官を雇って行く。ワープ兄弟はそういう立場。急成長した街とその郊外の勢力争いである。

 エドワード・アンハルトのシナリオは丁寧に追って行くが、登場人物の多さを整理仕切れないまま。ルシアン・バラードの映像、ジェリー・ゴールド・スミスの音楽もそれぞれ流石の仕事振りだが、世界観が作品全体には活かされていないのは、スタージェスの責任か?

 スタージェスが描いたのは、アープとドクの利害を超えた男の友情とアープの法を超えた復讐劇の喪失感の漂う世界だった。
 

「グッドナイト・ムーン」(98・米) 70点

2014-04-03 16:50:18 | (米国) 1980~99 


 ・ 二大女優の競演はS・サランドンの勝ち?



                    

 ジュリア・ロバーツとスーザン・サランドンが、中年弁護士の新しい恋人と元妻に扮して火花を散らす、ハートフルなファミリードラマ。ジシ・リバンシーの原案を、「ハリー・ポッター」シリーズのクリス・コロンバスが監督している。

 NYのファッション・カメラマン、イザベルはエドハリス扮する弁護士・ルークにプロポーズされる。幸せ一杯のイザベルだが、ルークにはS・サランドン扮する元妻ジャッキーとの間に12歳の娘・アンナと可愛い弟・ベンがいて、ジャッキーに懐いている。2人の子供とも仲良くやっていける自信があったイザベルだが、いざとなると何から何まで勝手が違い上手く行かない。

 NYの美しい四季の彩りを背景に、2人のオスカー女優が敵対しながら、果して和解し合うことができるのか?子供達はイザベルに懐くことができるのか?

 監督の技量もあって2人の子供がとても自然で素晴らしく、ファミリー・ドラマのお手本のようなストーリー展開は予定調和でハッピーエンドを迎え、安心して観られる反面物足りなさも・・・。好感度の高いE・ハリスに存在感が薄かったのもその原因か?


 最大の見所は2人の競演で、レストランでの対決は前半のハイライト。J・ロバーツはバリバリのキャリアウーマンから突然の母親役を試行錯誤しながら頑張り抜く女性に強さをイメージどおり演じ、S・サランドンは母親としての絆を必死に手繰り寄せようとする芯の強さが全身に伝わってくる。

 原題は「STEPMON」なので継母(義母)となるJ・ロバーツの物語だが、年の功でS・サランドンの判定勝ちか?

 日本なら悲劇にしかならないこのドラマ設定を、ハートフルなハッピーエンドに仕立て上げたのは90年代のアメリカならではだろう。




 

「しあわせの隠れ場所」(09・米) 75点

2014-04-01 12:08:58 | (米国) 2000~09 

 ・ 演技派サンドラ・ブロックを定着させた、実話をもとにしたスポーツ・ドラマ。


               

 実話をもとにしたスポーツ・ドラマには「ヒーローの人生を描いたもの」か、「ヒーローを支えた陰の人物にスポットを当てたもの」に分かれる。本作は後者で、原作のマイケル・ルイスはブラッド・ピット主演映画「マネーボール」でもおなじみ。

 題名の「ブラインド・サイド 」とは、アメフトのレフト・タックルというポジションで、主人公はマイケル・オアー。米国で最も人気のあるスポーツだが、日本では野球並みとは行かないため、邦題は「しあわせの隠れ場所」となった。監督・脚本は「オールド・ルーキー」(02)のジョン・リー・ハンコック。

 メンフィスの貧困者たちが住む「ハート・ビレッジ」出身の少年マイケルが、夜間Tシャツ・短パンで歩いていたのを豪邸に住むティー・アンが気の毒に想い、家に泊めたのがキッカケで養子に迎える。嘘のような本当のハナシから、やがて隠れた才能を見出しNFLで活躍する選手に成長して行くまでの愛と感動のドラマ。

 アメリカ人が大好きなハートフルなストーリーは、家族の絆もシッカリ描いて、主演のサンドラ・ブロックにオスカー(主演女優賞)をもたらした。S・ブロックと言えば「スピード」(94)、「デンジャラス・ビューティー」(00)を始めコンスタントに活躍するトップ女優だったが、演技派としての評価はいまひとつの存在だった。

 本作で名実ともにハリウッド・スターに仲間入りしてギャラもうなぎ上り。同時に「ウルトラ I LOVU YOU!」でラジー賞も受賞し、双方の授賞式に出席したというのも彼女らしい。

 何れにしても、彼女の存在なくしてこの作品の成功はなかった。髪を金髪に染めエネルギッシュな驀進ぶりは、マイケルを本当に息子のように扱う愛情溢れる母親ぶりが観客の共感を呼ぶ。

 併せてオーディションで選ばれたマイケルを演じたクイントン・アーロンの、大きな身体に不釣り合いな純粋そうな風貌が母性本能を誘う。45キロ減量して俊敏な体つきにしたというから驚きだ。

 夫役のティム・マッグロウはカントリー歌手としても有名な俳優で優しい夫にぴったり。長女のリリー・コリンズ、長男の子役ジェイ・ヘッドともこんな家族だったらいいなと思わせる理想の家庭。実在モノの宿命か?

 出番は少ないが、家庭教師ミス・シー役のキャシー・ベイツが相変わらずイイ味を出している。

 アメフト・ファンにとっては、オアーのポジション「レフト・タックル」にスポットを当てたドラマとして想い出に残る作品となろう。