晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『エレジー』 80点

2009-01-31 17:57:08 | (米国) 2000~09 

エレジー

2008年/アメリカ

通俗的になりがちなテーマを、上質ドラマにしたコイシュ監督

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

フィリップ・ロスの短編「ダイニング・アニマル」をニコラス・メイヤーが脚本化、イサベル・コイシュが監督して良質な大人の愛の物語に仕上げた。
60歳を過ぎた老大学教授デヴィット(ベン・キングスレー)は奔放な恋愛歴を重ね、肉欲だけを求める快楽主義者。密かに忍び寄る老いをヒタ隠しにしている。30歳離れた教え子コンスエラ(ペネロペ・クルス)の美しさに惹かれ自宅でのパーティで<着衣のマハ>に眼が似ていると言って気を惹く。そして親友の詩人ジョージ(デニス・ホッパー)の忠告にもかかわらず、ドンドンのめり込んで行く。
スペインの女流監督イサベル・コイシュは、原作より<大胆に、繊細に>2人の心の奥に潜む心情を丁寧に描いている。ともすれば通俗的なテーマを格調高い恋愛ドラマに仕上がっているのは、ヨーロッパ育ちである主演の2人をはじめ、吟味したキャスティングによるものだろう。5年がかりで口説いたと言うP・クルスは、実年齢よりかなり若い役柄を感じさせない美しさと品の良さが溢れていて、一途に人を愛するヒロインを切なく演じている。
B・キングスレーも、米国人俳優を強要されたのをコイシュが名指ししただけあって、自信家で奔放な恋愛遍歴を重ねた快楽主義者が本当に人を愛することで、<老いへの恐れと身勝手さに気付く>難しい役をこなし期待に応えた。2人のベッド・シーンが少しもイヤらしくないのもこの監督の手腕によるものか?
デヴィドを巡って欠かせないのは、親友ジョージや息子のケニー(ピーター・サースガード)とSEXフレンドのキャロライン(パトリシア・クラークソン)。妻の元へ帰ったジョージは最後まで自分を全うした。結婚に失敗しながら息子は気になる存在だし、15年以上ベッドを共にしたキャロラインは嫉妬や独占欲があることを気付かせられる相手である。
ピアノの旋律に乗った雨の大都会や海辺がドラマを盛り上げる。洗練されたファッションを身に纏った2人の結末の解釈は観客に委ねられるが、落ち着くところへ落ち着いて、でき過ぎの感は否めない。


『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』 85点

2009-01-29 17:21:51 | (米国) 2000~09 

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

2008年/アメリカ=イギリス

理想の家族とは?半世紀前に現代夫婦への警鐘

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

「アメリカンビューティ」で90年代の米国社会の歪みをシニカルなユーモアで描いてオスカー監督となったサム・メンデスが、’50年代の若い夫婦が抱えた心の悩みを鋭く抉ったシリアス・ドラマ。リチャード・イエーツの短編を忠実に映画化して、家族の抱える虚しさと絶望感を見事に再現して見せた。
大ヒット作「タイタニック」のコンビ、レオナルド・デカプリオとケイス・ウィンスレット11年振りの共演が話題となる。カップルが題名につられ大人のラブ・ロマンスを想像して観ると、そのテーマの重さに後悔させられるだろう。
瀟洒なコネチカット郊外に住み、NYの大企業で働く夫・フランク(L・デカプリオ)と2人の子供と暮らす妻エイプリル(K・ウィンスレット)のウィラー夫妻は、理想の家族を手に入れたように見えた。夫は退屈な仕事を義務的にこなす伝書鳩のような日々で、少年のようなキラキラした夢は徐々に失ってしまっている。妻は女優を目指していたが地元の素人劇団でのヒロイン止まり。誰でも憧れる閑静な住宅街に住む人々は、それを手に入れると何処か空虚な生活に妥協している。
「リトルチルドレン」で似た役柄を演じたK・ウィンスレット。夢と現実のギャップに悩むカメレオンのようにコロコロ変るリアルな演技が凄い。理想郷をパリに求めたのは幻想であるにも拘らず、夫を説得して猛然と突き進むのは心の奥に潜む葛藤があるからで、それは子供で癒されるものではない。皮肉にも妊娠で挫折するが、妻にとって子供がカスガイにならないのは、このとき既に現代の夫婦像を暗示している。
オスカー女優キャシー・ベイツや隣人キャスリン・ハーンが「うわべの幸福感に浸る女性」として描かれ対照的な存在。それに対して、男は何かを犠牲にして見せ掛けの満足感に流されてしまう。刹那的な浮気で空虚さを味わうのがせいぜいで、隣人のシェップ(デヴィット・ハーバー)は片想いのエイプリルに思いを馳せる。妻子のために出世することで満足を得ようとするフランクが哀れに思え同情を禁じえない。そのフランクもアシスタントのモーリーン(ゾエ・カザン)と不倫しているが...。
夫妻の朝食がフランクの理想だったことは間違いない。ここに2人の食い違いがハッキリ見えていた。ヒロインの焦燥感を言い当てたのが皮肉にも精神を病んでいる元数学者であるのも象徴的。演じたマイケル・シャノンの達者な演技も見逃せない。
そして’50年代アメリカの風景を再現したスタッフの努力に拍手を送りたい。


『チェチェンへ アレクサンドラの旅』 85点

2009-01-25 08:38:05 | (欧州・アジア他) 2000~09

チェチェンへ アレクサンドラの旅

2007年/ロシア=フランス

戦闘場面のない戦争映画で何が見えたか?

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

「太陽」で日本でもお馴染みとなったアレクサンドル・ソクーロフ監督の最新作。紛争が絶えないチェチェン共和国。首都・グロズヌイのロシア軍駐屯地とその近辺で撮影したドキュメント・タッチの人間ドラマ。報道統制の厳しい現地で撮影したので臨場感たっぷりの情景だが、本編では地名は一切知らされていない。(原題:アレクサンドラ)。
ソクーロフ監督は「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」で知り合った夫人の世界的ソプラノ歌手、ガリーナ・ビシネフスカヤを起用。彼女は画面の殆どに登場して抜群の存在感を示している。
孫のデニス(ヴァシリー・シェフツォフ)に会うために駐屯地を訪ねたアレクサンドラ(G・ビジネフスカヤ)が何を見て何を想ったかを、まるでリポーターのように歩き廻って、テントに囲まれた兵舎内や埃まみれの装甲車を描写する。旧式銃の手入れや休息する少年のような兵隊や上官との会話で彼らの日常が伝えられ、長い内紛のせいか厭戦気分が蔓延しているのが分かる。そして孫との再会で彼女の境遇と人となりが見えてくる。
足下がおぼつかない彼女の最大の出会いは駐屯地の近くにあるマーケット。そこにはカフカス(コーカサス)地方の文化の香りが残っていてマリカ(ライザ・ギチャエワ)という女性と知り合う。爆撃で傾いた自宅で休ませてもらってお茶を飲み語り合い、人種・宗教・環境を乗越えた交流が静かに流れる。
僅かな滞在で駐屯地の日常とその近辺に暮らすチェチェンの人々を捉えながら、ソクーロフは何を伝えたかったのだろう?
戦場の裏側を訴え、破壊することしか知らない<戦争の虚しさ>や<祖国とは何かを考えさせる>ことは勿論だ。
それとともに「死を身近に感じる日常で生きる人間の複雑な心情」を見逃さない客観的な眼があるのをヒシヒシと感じてしまう。逞しく凛としたアレクサンドラが、孫・デニスに「私は寂しいのよ。誰かと一緒にくらしたいの。」という台詞や、もう会えないと思っているデニスが帽子を渡すシーンが印象的。それは<老い>と<軍人である>互いが持つ死の恐怖を抱えた肉親同士の交流である。忘れられないのはアレキサンドラとの別れに取ったマリカの行動。生きるとはこういうことなのだ。


『そして、私たちは愛に帰る』 85点

2009-01-22 13:08:13 | (欧州・アジア他) 2000~09

そして、私たちは愛に帰る

2007年/ドイツ=トルコ

一見退屈な?プロローグが深い意味をもつ 

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

「愛より強く」でベルリン映画祭・金熊賞を受賞したファティ・アキンが監督・脚本化して、カンヌ映画祭・最優秀脚本賞を受賞した作品。ドイツとトルコで暮らす3組の親子が交錯する人生模様を描いたヒューマン・ドラマ。
3組の親子とは、ブレーメンに住むトルコ移民の父・アリ(トゥンジュル・クルティズ)と大学教授の息子・ネジャット(パーキ・タヴラク)。ブレーメンで娼婦をしながら娘に学費を送る母・イエテル(ヌルセル・キョセ)とイスタンブールで反政府運動をする娘・アイテン(ヌルギュル・イェシルチャイ)。ドイツへ不法入国したアイテンと大学構内で出会った娘・ロッテ(パトリシア・ジオクロースク)とその厳格な母・スザンヌ(ハンナ・シグラ)。それぞれ生活環境が違う親子が、ある日突然身近な人を失い出会いとスレ違いのなか愛憎の行方を探って行く。
トルコの田舎町を一人でドライブする青年が給油で立ち寄ったスタンドで「犠牲祭おめでとう」と言葉を交わすプロローグ。一見退屈な?このシーンが終盤で深い意味をもつ。よく練り上げた脚本が、できすぎた感のある6人の出会いが不自然さを感じさせない。イエテルとロッテの唐突な死も、日本人の誰でも起こり得ないとは言えない。
EU加入の是否を巡って不安定な状況のトルコ。クルド人との摩擦、ストリート・チルドレンが横行するその実態をしっかり捉えながら、教育が如何に大切であることを訴えている。トルコ2世でドイツ人のアキン監督ならではの祖国愛が抑制の効いた切り口で語られていて、宗教・文化の融合を願う再生の物語に仕上がって、静かな余韻と感動を与えてくれる。
ドイツの名女優H・シグラの存在感が素晴らしい。往年の「マリア・ブラウンの結婚」「リリー・マルレーン」の面影はないが、<若い頃の自分を娘にオーバーラップさせながら見守る母の心情>を見事に表現して魅せた。ホテルでの号泣は圧巻。


『容疑者』 75点

2009-01-19 12:30:09 | (米国) 2000~09 

容疑者

2002年/アメリカ

デ・ニーロの独り舞台

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

実在の殺人事件をヒントにしたピューリッツア賞受賞作家のマイク・マッカラリーによる原案を、「ジャッカル」のマイケル・ケントン・ジョーンズ監督がロバート・デ・ニーロ主演で描いた父と子の人間ドラマ。
仕事一筋の敏腕刑事・ビンセント(R・デ・ニーロ)が担当した殺人事件の容疑者が、生まれ故郷で離婚した妻との間に生まれた息子のジョーイ(ジェームズ・フランコ)であると分かり苦悩する。如何にもサスペンスのような邦題だが、原題は「海辺の街」。ビンセントの忌まわしい思い出のある生まれ故郷ロング・ビーチで、寂れて締まった風景は彼の心情とオーバーラップしている。
キャスティングは悪くない。恋人役にオスカー女優フランシス・マクドーマンド、同僚にジョージ・ズンザ、麻薬売買のボスにウィリアム・フォーサイスと粒揃い。特に息子のJ・フランコは、家族愛に飢えた青年がドラッグに溺れてしまう人間の弱さを演じていて、一瞬嘗ての名優・ジェームス・ディーンを思わせるとは言いすぎか?
しかし脚本の失敗が致命的。恋人・別れた妻・息子の恋人(エリザ・ドゥシュク)何れも女達の描き方が中途半端。結局は、<父親か警官かを悩む>デニーロを引き立てるための設定でしかない。
デ・ニーロ ファンにとって、久々のはまり役で終盤の長台詞が堪らなく至福の喜びだっただけに勿体無い。


『最後の恋のはじめ方』 80点

2009-01-18 11:41:11 | (米国) 2000~09 

最後の恋のはじめ方

2005年/アメリカ

肩の凝らないラヴ・コメ、楽しめた。

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「メラニーが行く!」のアンディ・テナント監督がNYを舞台にウィル・スミスを起用した肩の凝らないラヴ・コメを製作。ウィル・スミスがミスキャストでは?と思っていたが、飄々とした風貌でデート・コンサルタントという役柄を楽しそうに演じていて予想より面白かった。改めて彼の芸域の広さを感じた。
NYが舞台だが、ロケ地がユニーク。エリス島移民博物館、ハドソン河、フルトン・フィッシュ・マーケット、マジソン・スクエア・ガーデンと個性的なのも新鮮だった。
共演者では人気コメディアンのケヴィン・ジェームスが秀逸。太身の身体を十二分に生かした芸風には不潔さがない。ダンスシーンには思わず笑ってしまう。何をやっても不器用な男が財団の若きセレブとの恋を成立させるなんて、実際は起こりえないが理屈抜きで楽しめた。
学生時代の失恋を忘れられないヒッチ(W・スミス)と、仕事以外興味がないキャリア・ウーマン・サラ(エヴァ・メンデス)の恋は本来メインになる筈だが、ちょっぴり霞んで見えた。


『チェ 28歳の革命』 80点

2009-01-15 15:07:17 | (欧州・アジア他) 2000~09

チェ 28歳の革命

2008年/スペイン=フランス=アメリカ

「旅と愛」がテーマで人間チェを描いた

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

キューバ革命でカストロと並ぶ革命家チェ・ゲバラの生と死の物語。4時間半の大作だが日本では2部作として上映。25kgも減量した主演のベニチオ・デルトロ渾身の演技で、カンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞している。
第1部はアルゼンチン出身の若き医師エルネスト・ゲバラが、メキシコでキューバ人カストロに出会ってから革命に成功するまでの物語。
監督は「トラフィック」のコンビ、スチーヴン・ソダーバーグ。プロデューサーでもあるデルトロは、エピソードやストーリーは全て事実に基づくものでピーター・バックマンに脚本を依頼。その分、断片的で激しい戦闘シーンがあるものの、全体の印象は淡々とした展開である。ソダーバーグは、有名な’64.12の北米帝国批判国連演説をモノクロで随所に挿入しながらのドキュメンタリー・タッチの映像と構成により、彼ならではの手腕が発揮されている。
持病の喘息を抱えながら「貧しい人々を救いたい」という想いで放浪の旅に出た無名の医師が、奇跡的なキューバ革命のNO.2になりカリスマ的英雄となった理由の一端は、「人間愛で周囲の人を惹きつけてゆく魅力である」こと。いくつかのエピソードでそれを増幅させて行く。例えば略奪や女性を乱暴する部下を銃殺する厳しさや、読み書きを知らないと人に騙されると部下を指導するなど。23歳で放浪を始めた旅人のテーマは「愛」だったが、英雄チェの全貌は見えてこない。第2部を観てこの映画の評価は変ってくるので<39歳 別れの手紙>を期待したい。


『オリバー・ツイスト』 80点

2009-01-13 14:55:29 | (欧州・アジア他) 2000~09

オリバー・ツイスト

2005年/イギリス

ポランスキーらしい、こだわりの作品

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

英文学の巨匠チャールズ・ディケンズ原作をロマン・ポランスキーが製作費80億円を掛けて製作・監督した。これまで何度も映画化されているが「戦場のピアニスト」のスタッフにより、子供のとき夢中で読んだと言うポランスキーらしいこだわりの映画に仕上がっている。
何より主演のバーニー・クラークが純粋無垢で可愛らしい。決して演技が巧い訳ではないが、その分彼を取り巻く共演者が次から次へ絡んで行くことで、物語を盛り上げる構図となっている。
ピカイチは少年窃盗団の親方フェイギン役のベン・キングスレー。19世紀産業革命下のロンドンに住む小悪党ながら、どこか憎めない。ポランスキーは、この男を<人間らしく必死に生きる下層階級の人々の象徴>として愛着を持って描いていて、それがエンディングに表れていた。
次から次へと訪れる危機に対するハラドキドキ感がないのはあまりにも有名なストーリーなので止むを得ないが、もう少し波乱万丈振りを強調して欲しかった気もする。


『ブルー・イン・ザ・フェイス』 80点

2009-01-11 12:53:12 | (米国) 1980~99 

ブルー・イン・ザ・フェイス

1995年/アメリカ 日本

タバコとブルックリンへの想いがたっぷり

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆85点

ウェイ・ワンとポール・オースターが「スモーク」の番外編として短期間・低予算で製作・共同監督した。タイトルは「顔が真っ青になるまで喋りまくる」というだけあって出演者が即興を交え楽しそうに演技している。
NYの下町ブルックリンにあるオギー・レン(ハヴェイ・カイテル)の店「ブルクリン葉巻商会」には、いろんな人々が集まってくる。それぞれブルックリンの想いがあってこの街を離れない。
オーナーのヴィニー(ヴィクター・アーゴ)は19年続けたタバコ屋をやめて健康食品の店をやりたいといいオギーはみんなのたまり場がなくなると反対する。
低予算なのに豪華キャストだ。謎のアンケートをするマイケル・J・フォックスや歌う電報配達人のマドンナを始めタバコとブルックリンの愛着を語るルー・リード、禁煙する男ジム・ジャームッシュ、謎のバンド・リーダー ジョー・ルーリーなど多彩。すべて企画に賛同したゲストばかりが次から次へと登場。殺人・強盗が日常茶飯事で人種のルツボ・ブルックリンへの想いがたっぷり詰め込まれている。
ドキュメンタリー監督にハーヴェイ・ワンを起用しているところがアクセントになっている。デイヴィット・バーンの音楽で、歌と踊り・LAに移ってしまったドジャース・ベルギー風ワッフルを愛するブルックリン気質を堪能した。


『英国王 給仕人に乾杯!』 85点

2009-01-10 15:34:12 | (欧州・アジア他) 2000~09

英国王 給仕人に乾杯!

2007年/チェコ=スロバキア

寓話的な展開を見ながらチェコの近代史を知る

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

デビュー作「厳重に監視された列車」同様、ホフミル・フラバルの短編「私は英国王に給仕した」をもとに、チェコの巨匠、イジー・メンシェル監督が漸く映画化にこぎつけた。
チェコの田舎町の駅でソーセージ売りをしていた小柄な男・ヤン(イヴァン・バルネフ)が億万長者となりホテル王になることを夢見る男の半生記。
シニカルな笑いもあるが、全編ユーモア溢れる寓話的展開。ヤンの半生を追いながら、アレシュ・ブジェジナのオリジナルにドリーブ・ワグナーなどのクラシック、当時のジャズなど時代考証に合った音楽に乗って、チェコの近代史を見る思い。
初老の男ヤン(オルドジス・カイゼル=2人で一役)が刑務所から出所してズデーデン地方へ向うシーンを背景に、「私の人生は幸せのあとに不幸せがくる、どんでん返し」というナレーションが入ってその経緯が回想される。とき恰も第一次世界大戦後で田舎町のホテル「黄金のプラハ」から高級娼館チホタ荘、そしてプラハの最高級ホテル、「ホテル・パリ」の給仕人へ。ココまでは、まるで<わらしべ長者>のような順風満帆ぶり。
題名の英国王の給仕人とはヤンではなく「ホテル・パリ」の給仕長・スクシー・ヴァネク(マルチン・フバ)のこと。ヤンとは両極のプライド高いチェコ人で「何も見るな何も聞くな、しかし総てを見ろ総てを聞け」を実践している。
後半ドイツ占領から悲惨なチェコの境遇のなか、自分より背の低いドイツ人リーザ(ユリア・イエンチ)と結婚。反ナチのヴァネクとは違う元来の風見鶏的な生き方に拍車が掛かる。
人間の欲望は行き着くところ、<金と名誉>でそれをチェコの富豪もエチオピア皇帝も豪華料理で浪費しているさまが滑稽である。男にとって女体盛りは究極のグルメとか。エチオピアのラクダ料理といい、珍しい料理とノドが鳴りそうなビールで目を楽しませてくれる。
メンシェル監督は、悲惨な歴史を歩んできた東欧の小国チェコを庶民の眼線で笑いをオブラートに包んで、その理不尽さを訴えている。