晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『男の出発』 80点

2011-04-30 11:15:13 | 外国映画 1960~79

男の出発

1972年/アメリカ

ハリウッド・ルネッサンスの流れを組む西部劇

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

これが代表作ロバート・ミッチャム主演「さらば愛しき女よ」の監督であるディック・リチャーズのデビュー作。ハリウッド・ルネッサンスと呼ばれた時代に作られたせいか、その流れを組んでいて大多数がアンチ・ヒーローである。南北戦争直後テキサスの16歳の少年が、カウボーイを夢見てコロラドまでコック見習いとして牛追いの旅を続けるうち社会の矛盾を体験する西部劇。リチャード監督は写真家らしくセピア色の土ぼこりがリアルで荒野の夕景は美しい。衣装も本当のカウボーイはこんな服装だっただろうと思わせるほどの汚れぶりで細部まで気配りがされている。
主演は「おもいでの夏」のゲイリー・グライムス。多感な少年らしい幼さの残る不安げな表情が、厳しい環境に耐えられるだろうかと思わせる。ボス(ビリー・グリーン・ブッシュ)はリトル・メアリーと命名、多少無理な仕事もさせる。これは教育というより命と引き換えになりかねない甘えは許されない厳しい仕事であることの証明でもあろう。当然失敗も多く、落馬したり、使いの途中賊に襲われ拳銃を奪われたり、見張り中牛泥棒に襲われ牛を盗まれたりミスばかりで役に立たない。周りの大人たちは優しく冷やかしながらも温かく見守りそのたびに成長するさまが親のような気持ちで観てしまう。牛泥棒との銃撃戦で仲間が死んだり悪徳牧場主に理不尽な賠償金を要求されたりしながらボスは牛を守ることに終始して、決して画に描いたような正義漢溢れる強いリーダーではなく地道な仕事人だった。理想の土地を求めて放浪している教団のリーダー同様、指導者は争いを避けることが大人であるというように。
少年が想像 したカッコイイ職業とはかけ離れた男たちの集団だというギャップに戸惑いながら終盤の事件が起こり、なんとも割り切れないエンディングへ。少年と行動を共にした個性的な4人の仲間たち。ナイフ投げ名人のルーク(ルーク・アスキュー)、人を殺すとうれしそうなブリック(ボー・ホプキンス)、後ろに立たれると怒るコードウェル(ジェフリー・ルイス)、目立たず冴えないミズーラ(ウェイン・サザーリン)がとても魅力的に映ってみえた。
ベトナム戦争後に作られたこの作品が、南北戦争直後の虚無感に重なったと思ったのは穿ち過ぎだろうか?


『夕陽のギャングたち』 80点

2011-04-27 12:10:33 | 外国映画 1960~79

夕陽のギャングたち

1971年/イタリア

レオーネらしさが満載

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆85点

<マカロニ・ウェスタン>でお馴染みのセルジオ・レオーネ監督。<ワンス・アポン・ア・タイム>三部作の第二作で邦題は興行上の理由による命名で、内容に相応しいとは言えない。20世紀初頭メキシコ革命のとき、メキシコ人山賊とアイルランド革命家との出会いと友情の物語だ。冒頭「革命とは、晩さん会ではない・・・。暴力行為なのだ。」という毛沢東語録があり、ロッド・スタイガー演じるミランダが裸足で用を足すという驚愕のシークエンス。156分もの長編だが本筋とはあまり関係ないと思われるシーンをロング・アップのショットをこれでもかというほど重ね、観客を巻き込んで行く。
ジェームズ・コバーン扮するマロリーの登場も異色。バイクにロング・コートにブーツ姿でいかにもスタイリッシュ。家族ぐるみの山賊であるミランダとアイルランドで親友に裏切られ、愛する人を失ったマロリー。対称的な2人がお互い騙し合いをするうち、真の友情を深めて行く過程がときにはコミカルにときには抒情たっぷりに描かれる。中だるみはあるものの、ダイナマイトで炸裂する轟音とともにエンタテインメント溢れる滅びの虚しさが心に沁み入ってくる男のドラマだ。


『大いなる男たち』 75点

2011-04-26 10:59:22 | 外国映画 1960~79

大いなる男たち

1969年/アメリカ

大画面で観たかった

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆80点

この年「勇気ある追跡」でオスカーを獲ったジョン・ウェインの俳優生活40周年という記念作品。名監督ジョン・フォードの後継者と言われたアンドリュー・V・マクラレン監督作品で、南北戦争直後の男同士の友情ドラマ。
元北軍大佐のヘンリー・トーマス(J・ウェイン)と南軍大佐ラングロン大佐(ロック・ハドソン)が奇妙な友情で過去の経緯を抜きにして絆を深めて行く。
相変わらず正義のウェスタン男のJ・ウェイン。2枚目ロックハドソンも対等に張り合うが、ここはJ・ウェインの貫録勝ち。殴り合いが友情の証しとは、いかにも男のドラマらしい。ヘンリーの養子ブルー・ボーイとラングロンの娘シャーロットとのラブロマンスなどが絡むが、いかにも付け足しという感じ。ここは2人の大佐に従ってきた部下達や家族の信頼をそれぞれどう果たそうとしたか?に焦点を絞ったほうがハナシが散漫にならずにすんだかも。3000頭もの野生馬が疾走するシーンは何と言っても圧巻で大画面で観たかった。


『Q&A』 75点

2011-04-24 16:35:33 | (米国) 1980~99 

Q&A

1990年/アメリカ

切れ味に欠けた社会派S・ルメット

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

「十二人の怒れる男」「セルピコ」など警察や司法機関の腐敗を鋭くえぐった社会派監督シドニー・ルメット。満を持して得意のジャンルに挑んだ意欲作。
主人公に扮したのが新人地方検事補アルのティモシー・ハットン。優秀な警官だった父を尊敬し、社会の不正に挑む純粋な青年。担当したのがベテラン刑事マイク(ニック・ノルディ)が麻薬売人を射殺した事件。正当防衛に見える単純な事件のはずが、証言の食い違いから思わぬ事件へ進んで行くことに。
主要な登場人物はソレゾレの環境から人種差別や社会の理不尽さを感じながら過ごしている。S・ルメットは単純な勧善懲悪ものにしたくなかったのだろう。それぞれのバックボーンを丁寧に描くため台詞で表現させたので焦点がボケてしまった。悪徳刑事や麻薬ディーラーに扮したアーマンド・アサンテに人物描写が強調され過ぎ、肝心の主人公・アルが気弱な青年に見えてしまった。おまけに麻薬ディーラーの愛人がアルの元恋人という設定が出来過ぎ。N・ノルディの悪徳刑事振りが際立っていたがその独善的な行為は共感を得ることはできず、エンターテインメントとしても中途半端になってしまった。


『トッツィー』 80点

2011-04-19 16:19:42 | (米国) 1980~99 




トッツィー


1982年/アメリカ






女装してもドタバタにならないハートフルなコメディ





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
90点





シドニー・ポラックの製作・監督作品中では異色のコメディ。おまけに売れない俳優役のダスティ・ホフマンが女装するという。思わずトニー・カーティスとジャック・レモンを連想してしまったが、出だしは実にシリアス。演技力は確かだが自信家でトラブル・メーカーの中年俳優マイケル(D・ホフマン)。ルームメイトの脚本家ジェフ(ビル・マーレイ)と舞台公演を目指しアルバイト中。昼メロのオーディションを女装して受けたのがキッカケで女優・ドロシーとして売り出し、偽りの女優人生を歩む。男のマイケルは共演者のジュリー(ジェシカ・ラング)に一目惚れ。女のドロシーはジュリーにとって憧れの先輩。おまけにジュリーの父に求婚までされる始末。女装したことで男と女の気持ちを理解して行くことに。S・ポラックは大都会NYを舞台に芸能界の格差社会の実態をさりげなく見せながら、めげずにイキイキと暮らす人々をコミカルに描いている。デイヴ・グルーシンの音楽が軽快に流れ、お洒落な都会の雰囲気を醸し出しているのがドタバタにならない要因でもある。
D・ホフマンの女装はどうみても本物とは思えないが、そこは達者な演技力で高いハードルを楽々と超えてしまう。相手役には女優ドロシーを慕うジュリー役のJ・ラングと演劇学校の生徒でマイケルを慕うサンディ役のテリー・ガーが競い合うが、オスカー(最優秀助演女優賞)を獲得したJ・ラングは役得か?むしろビル・マーレイを始め、求婚したジュリーの父チャールズ・ダーニング、自称元スターのジョージ・ゲインズ、プロデューサーのダブニー・コールマンなどの男優たちが男の滑稽さがウカガエル名優ぶりを魅せてくれている。ちなみに俳優でもあるS・ポラックもマイケルのエージェント役として一翼を担っている。
D・ホフマンは、この作品で女装する主演俳優として後のロビン・ウィリアムス(ミセス・ダウト)とともに映画ファンの記憶にいつまでも残ることだろう。






『アメイジング・グレイス』 85点

2011-04-17 11:17:14 | (欧州・アジア他) 2000~09

アメイジング・グレイス

2006年/イギリス

国益を超えた奴隷解放の感動秘話

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

英国で公開された5年後にようやく日本で公開された。冒頭文科省と東京都の推薦クレジットが出て説教臭い作品では?と思わせたが、いい意味で予想が外れた。題名の「アメイジング・グレイス(素晴らしき恩寵)」の作曲は作者不詳だが、作詞は2万人の奴隷を運んだ元豪商で牧師のジョン・ニュートンがしている。18世紀末英国が国益のため行われていた三角貿易。西インド諸島を中継地としてアフリカ現地人と砂糖・綿花・タバコを売買していた。歌詞は<奴隷貿易に関わったことへの深い懺悔と赦しを与えた神への感謝>が込められている。作品はこの歌の誕生にまつわる外伝的なハナシで、ジョン・ニュートンを師と仰ぐ若き政治家ウィルバー(ヨアン・グリフィス)の20年にわたる奴隷解放の感動秘話である。
監督は「エニグマ」のマイケル・アプテッドで政治と宗教とのバランスに最も苦慮したという。主人公ウィルバーと18歳年下の妻バーバラとの関係、24歳で首相となった同い年の政治家ウィリアム・ピットとの友情と決別、奴隷解放運動活動家や使用人との交流などを通してウィルバーの感情の起伏をドラマチックに描いている。
当時イングランド議会は国益を最優先する自由貿易主義のホイッグ党と保守党の前身であるトーリー党との2大政党のとき。興味関心がない議題は、議論そっちのけで遊興にふける議員たちの様子が象徴的に描かれていてとても興味深い。
主演はヨアン・グリフィズで妻のバーバラ役のロモーラ・ガライとのコンビがぴったりでなかなか良かった。
脇を固めるチャールズ・フォックス卿のマイケル・ガンボン、ジョン・ニュートンのアルバート・フィニーが出番は少ないものの印象的な存在として物語の重みを増している。もう少し「アメイジング・グレイス」がドラマチックなところで使われるかと思ったが、さりげなくワン・シーンのみでこの歌を期待したヒトにとっては物足りなかったかもしれない。それでも「英国王のスピーチ」同様、有名な歴史上の人物・出来事の裏面史的なドラマは奥行きがあってとても面白い。


『タップス』 75点

2011-04-13 17:19:05 | (米国) 1980~99 

タップス

1981年/アメリカ

S・ペン、T・クルーズの本格デビュー作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

140年続いた陸軍幼年学校が廃校になるのを阻止しようと校内に立てこもった生徒達の葛藤の物語。校長でもあるハーラン・ベイシュ将軍(ジョージ・C・スコット)に心酔している。拳銃暴発事故で民間の少年をころしてしまい警察へ連行されてしまう。生徒たちは学校存続のために武器を略奪して経営者と話し合いを条件装蜂起を決意する。主演は生徒のリーダー(ブライアン)であるティモシー・ハットン。TVドラマ「グルメ探偵ネロ・ウルフ」の助手でおなじみだが若くしてオスカー<(普通の人々)での助演男優賞>を手にしている。優等生で150人を統率することを誇りに思う故に自分の言動が如何に重大かを知るには犠牲者が出てから。軍人でもある父親や州軍人のカービー大佐(ロニー・コックス)の説得も耳に入らない。脇で支えるリベラルな親友にショーン・ペン、ハイテンションな武闘派にトム・クルーズ。当時20歳と18歳の初々しさで貴重な本格デビュー作としても一見の価値がある。軍人にとって大切なのは<名誉>だという将軍の教えを、良く理解できなかった生徒たちの暴挙か?それとも時代遅れの生きた化石と言われた将軍の罪なのか?観客の解釈は分かれるところだ。


『いまを生きる』 80点

2011-04-12 12:07:09 | (米国) 1980~99 





いまを生きる


1989年/アメリカ







R・ウィリアムスの抑えた演技に好感





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
80点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
85点




音楽

★★★★☆
80点





トム・シュルマンがアカデミー脚本賞を受賞している。後半から盛り上がり感動のラストシーンへとつながってゆくストーリーが評価されたのだろう。
59年ニューイングランド地方の全寮制高校で生活する若者がひとりの教師に触発され恋や進路に悩みながら自分を見出そうとする青春ドラマ。伝統格式を頑なに守る学校や父兄と大学に入るまでは従順に従って我慢しようとする学生はそれなりにバランスが取れていた。そこへ新任の英語教師キーティングが赴任し型破りな授業を始める。OBでもあるキーティングは詩を読むのに技巧はいらない、自分で感じることが何より大切だと説いてゆく。初めは戸惑う学生たちも次第に受け止めるようになり詩の本当の意味や生きることの素晴らしさを体感して行く。アメリカ東部の季節の移り変わりが美しく、ジョン・シールの映像が学生の心情の変化とともに心に沁み入ってくる。
英語教師キーティングに扮したロビン・ウィリアムスの抑えた演技が光っていた。コメディで才能を発揮してきた彼がオーバーな仕草や表情を抑え、静の演技で役柄を拡げこの作品で主演男優賞にノミネートされ9年後4回目のノミネート「グッドウィル・ハンティング・旅立ち」の大学教授役で見事受賞している。思えばこの間が彼の俳優としての絶頂期だった。
まだ初々しかったイーサン・ホークやロバート・ショーン・レナードたちが演技を超えた若い感性そのものが画面に溢れ出ている。若いトキにしかできない体験をしているのを観ると自分の人生との差を羨ましく感じてしまう。万葉集が如何に素晴らしいかを熱心に教えてくれた教師がいたり安保闘争をどう思うか?話した教師がいたりしたのを思い出した。教育とは<自分で考えて実行することの大切さを教えて行くことだ>と改めて思う。






マスターズそして松井1号

2011-04-11 10:17:38 | 2010.07から東北大震災直後までの日誌
昨日の統一地方選は、民主政権批判の選挙結果となった。もともと地方の地盤が弱い民主党が与党として地盤固めをできる絶好のチャンスだったのに、菅政権の震災対策の不手際がそのまま不信感につながった。その象徴は都知事選で石原の4選を楽々とさせてしまっている。都民ではないが私でも候補者を見渡してイチバン頼りになりそうなのは石原だ。
昨日は仕事で縁が深かった「世界ウルルン滞在記・復活SP」を観た。朝ドラ「げげげ...」で一躍メジャーになった向井理がカンボジアの家族との4年振り再会が良かった。ホームステイ先の心の交流が特徴のこの番組は私にとって50代にもっとも愛着のあった番組だけに懐かしかった。ホームステイするタレントの素が見えるので新人以外はなかなか出たがらなかったが、ここから飛躍していったタレントが今活躍しているのは我が子を観るようで嬉しい。
マスターズは南アのシュワーツェルが上がり4ホール連続バーディで初優勝。A・スコット、J・デイのオーストラリア勢は1打及ばず、T・ウッズも3打及ばず4位T。日本の19歳2人は石川が通算3アンダーの20位T、松山が2アンダーの27位Tと大健闘。来年の出場権を賭けた16位には及ばなかったがこの4日間で成長していることを実感したことだろう。石川は今年も日本のゴルフ界の中心となるだろう。松山は大学を卒業するまでプロ入りしないそうだが、野球の田中・斉藤と似た2人の今後の活躍は楽しみだ。
アスレチックスの松井が8試合目で今季1号ホームラン。やっぱり4番指名打者が相応しいのだが、まだ一抹の不安も残る。2号が直ぐ出るようなら、いよいよゴジラが火を噴きそうだ。

『ドライビング・MISS・デイジー』 85点

2011-04-05 18:13:54 | (米国) 1980~99 

ドライビング・MISS・デイジー

1989年/アメリカ

エピソードの積み重ねで心の交流が伝わってくる

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

アルフレッド・ウーリーの戯曲を自身が脚色。ユダヤ系元教師とアフリカ系運転手の交流25年間を、エピソードの積み重ねで描いてゆく。’48ジョージア州アトランタ、緑に囲まれた閑静な住まいにメイドと暮らすデイジー(ジェシカ・タンディ)。ある日自分で車を運転して外出の際ギアを間違え、アワや大事故に。息子ブーリー(ダン・エンクロイド)は心配して運転手を雇う。名はホーク(モーガン・フリーマン)といい、大らかで誠実そうな初老の男だ。
デイジーは自身の老いを認めたくないことと運転手を雇うような身分ではないという気持ちから、何かと刺々しい態度を取ってしまう。ホークは飄々と受け止めてその都度見事な対応をする。雇われていながら卑屈にならず仕事をすることで対等だとそれとなく示唆するところは実に爽やかである。
いくつかのエピソードのなかでKKKによるシナゴーグ爆破や、キング牧師の説教<善意の人々による無自覚の差別>が折り込まれている。ユダヤ系・アフリカ系人種問題を声高でなくさらりと訴えて深く心に沁み入ってくる。デイジーとブーリーの親子がクリスマスや感謝祭で交わすヤリトリは米社会が抱える家族問題の象徴でもある。
いつしか、最高の友人として2人の人生を暖かく包んでゆく。オスカー作品でもありジェシカ・タンディが80歳の最高年齢での主演女優賞受賞など華やかな話題に包まれたとても味わい深い小品である。ハンズ・ジマーのメイン・テーマがいつまでも耳に残って<ホークがラストシーンにいう台詞>に思わずそのとおりだと頷いてしまった。