晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『ファミリー・ツリー』 80点

2012-05-26 16:32:32 | (米国) 2010~15

ファミリー・ツリー

2012年/アメリカ

シリアスなテーマを軽妙な語り口で描いたA・ペイン

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

「アバウト・シュミット」「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン監督がカウイ・ハート・ヘミングスの原作を映画化。シリアスなテーマを軽妙な語り口で描いて「サイドウェイ」に続いて2度目のアカデミー脚色賞を受賞している。
ハワイ・カウアイ島の広大な土地の管財人マット・キングは、あと7年で期限切れとなる先祖から受け継いだ土地を売却する相手を親族と進めようとしていた。突然妻がボート事故で意識不明となり、途方に暮れる。オアフ島に住みオフィスを構え仕事に明け暮れる弁護士のマットは17歳と10歳の娘達を妻にまかせっきり。親の代役を自称するほど娘達とどう接して良いか分からず、あたふたする。妻が回復したら家族でゆっくり過ごそうと反省するが、長女から「ママは浮気をしている。」と知らされる。おまけに妻は全治する見込みがないどころか生命維持装置を外すか決断を迫られる。義父からは普段もっと寛容さを持っていればこんなことにならなかったと責められるが今更浮気の事実も言い出せない。
<サーフィンは15年していない>とマットが冒頭嘆くように、人生の楽園に住む家族も他の土地で暮らす家族同様、理想の生活はありえないのだ。
A・サンダー監督は「アバウト・シュミット」でのジャック・ニコルソンのようにジョージ・クルーニーを何処にでもいそうな等身大の男として描いている。妻の浮気を知ったショックのあまり友人宅へ走る姿はリアルな中年男そのもの。無精ひげもサマになっていた。
長女アレックスを演じたシャイリーン・ウッドリーがなかなかの好演。母の浮気を知りながらケンカして母との絆に悩む全寮制のハイスクール在学生。ぼうっとしたボーイフレンドのシドとは上手くいっているようだ。多感な娘だがドンドン成長して行く様が随所に見られて父親には頼もしい存在になってゆく。
家族の崩壊、妻の死、先祖から受け継いだ土地の売却問題という三重苦を背負った男の物語は観ているだけで息苦しくなるもの。オアフ、カウアイの名所も垣間見られるが普通の暮らしをしている人にとってはいつも青空ではない。それでも曇天のハワイからキプ・カイ・ビーチの抜けるような青空と雄大な情景がヒトキワ輝いてみえた。スラック・キー・ギターだけで奏でるバック・ミュージックが全編流れ、マット・キング一家を支えてくれるようだ。


『愛染かつら('38)』 70点

2012-05-18 17:52:14 | 日本映画 1945(昭和20)以前 

愛染かつら('38)

1938年/日本

すれ違いメロドラマの元祖

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shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★★☆80点

川口松太郎の婦人雑誌連載小説を野村浩将監督、野田高悟脚色で映画化。戦前大ヒットしたすれ違いメロドラマ元祖で、戦後の「君の名は」と双璧。主題歌「旅の夜風」は霧島昇・ミスコロンビア(松原操)が歌った歌謡史に残る名曲。その6年後に生まれた筆者が「花も嵐も乗り越えて~」と歌えるほど。
若くして結婚し娘を儲けたが夫と死別した23歳の看護婦・高石かつ枝と病院の御曹司・津村浩三とのラブ・ストーリー。フィルム保管が充分でなく、本作は前・後篇、続編、完結編を1本化しているため、残念ながらハナシが繋がっていない部分もあり唐突な個所が多く、2人を巡るハラハラ・ドキドキ感がリアルには伝わってこない。
それでも実らぬ恋を成就させるため京都へ駆け落ちしようと新橋駅で待ち合わせをするが、かつ枝の娘が発熱し発車する列車をホームから必死に追うヒロインの姿には定番ながら臨場感があった。
勘違いとすれ違いをフンダンに盛り込んだメロドラマは古今東西数多く見られるが、時代が殺伐としてきたこの時期に公開された本作は大ヒットする条件がぴったりハマったことだろう。
ヒロイン高石かつ枝に扮した田中絹代はどちらかというと庶民的な風貌がこの役にマッチして一躍大女優へ上りつめてゆく。その記念碑的な作品でもある。
相手役の津村浩三を演じた2枚目俳優・上原謙は加山雄三の父でこの前年に加山が生まれている。演技よりも如何にも御曹司風の姿・形は女性ファンをとりこにして戦後も2枚目を貫き通した。
本作が大衆娯楽の頂点にあった頃の映画史に残る金字塔を打ち立てたことだけは間違いない。改めて作品の評価をするのは、あまり意味がないような気がする。


『大いなる決闘』 65点

2012-05-17 18:11:16 | 外国映画 1960~79

大いなる決闘

1976年/アメリカ

正統派西部劇の終焉

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shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 65

ストーリー ★★★☆☆60点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★☆☆65点

ビジュアル ★★★☆☆65点

音楽 ★★★★☆75点

米国建国200周年記念と銘打った本格派西部劇とあるが、「マカロニ ウェスタン」で市場を失ったハリウッドが観客を取り戻そうとしてスターを起用した西部劇のひとつ。
原作はブライアン・ガーフィールドで共同脚本も手掛けていて、監督はジョン・フォードについていたアンドリュー・V・マクラグレン。
鉄道建設工事に駆りだされた囚人たちが看守を殺し逃亡。7人のうちのリーダーがジェームス・コバーン扮するザック・プロボ。彼にはトゥーソンの元保安官チャールトン・ヘストン扮するサム・バーケードへの復讐が目的の総てだった。
20世紀のアリゾナは車や電話などの文明の機器も登場、時代は変わろうとしている。引退をして娘と暮らすサムは取り残された寂しさがあったが図らずもザックの逃亡によりかつてのエネルギーが呼び起こされることに。
前半は、冷蔵貨車に身を隠したり、馬を盗み雑貨店で服を調達するザックと逃走経路を探索し大金輸送を仕掛けおびき出そうとするサム2人の知恵比べが本格西部劇の雰囲気を感じ期待充分。
ザックについてきた6人も個性がみられサムも現役の保安官とのギャップもあってこれからの展開が楽しみだった。
ところが、ザックがサムの家に押入り娘を人質にして先住民の保留地に逃げ込む辺りから雲行きがおかしくなってきた。
マカロニもびっくりな展開にJ・コバーンはただの冷酷な復讐の鬼と化し、C・ヘストンは娘を救うため追跡する老いぼれに見えてきてしまった。
娘・スーザンに扮したのは西部劇に良く出ていて近作では「ブラック・スワン」でヒロインの母親役に扮していたバーバラ・ハーシー。落馬したり、殴られたり、レイプされたりの体当たりの演技も報われず、すっきりしない展開に首をかしげざるを得なかった。結局昔の正統派西部劇では観客が納得しないだろうという理由で新しい考えの若者の登場を強調したかったのだろう。その代表が農業技師でスーザンの恋人ハル。ロバート・ミッチャムの息子クリストファーが扮している。どうも行動には納得がゆかなかった。
題名のような決闘シーンを期待する正統派には期待を裏切る結末といわざるを得ないが、新しい時代の幕開けともいえる。のちの「荒野の7人」「大脱走」での個性溢れるJ・コバーンを観られたのだから。


『ル・アーヴルの靴みがき』 85点

2012-05-13 12:35:49 |  (欧州・アジア他) 2010~15

ル・アーヴルの靴みがき

2011年/フィンランド=フランス=ドイツ

ミスマッチ風テーマをメルヘンとして描いたカウリスマキ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキの「過去のない男」(02)、「街のあかり」(06)に続く敗者3部作。絶えず貧しい市井の人々を優しい眼差しで見つめる監督がときには残酷な結末を用意していたりするが、今回はフランスの移民問題という一見ミスマッチのテーマを現代のメルヘンとして描いている。
舞台は世界文化遺産に選ばれたノルマンディ地方の港町ル・アーヴル。主人公は靴磨きをしているマルセル・マルコス。元はパリのボヘミアンで溝に落ちてケガをしているところをアルレッティに救われここで暮らしている。カウリスマキファンなら主人公はパリのボヘミアンたちの群像劇映画「ラヴィ・ド・ボエーム」(92)のマルセルの20年後だと分かる。全編フランス語だが、いつものフィンランドのような色調でくりひろげられ、飄々としたユーモアが随所に醸し出される監督独自のスタイルは変わっていない。小津を尊敬する監督の世界は、無表情で寡黙な人々を正面から捉えた映像から、その哀しみ・喜び・怒りなどを斬りとって見せる。長年のコンビ、ティモ・サルミネンの哀愁漂う映像も健在だ。
夫婦は貧しいけれど愛犬ライカと暮らす日々は幸せだった。そんななか事件が起きる。ひとつはアルレッティの病。検査の結果は不治の病で余命宣告を受けるが夫には内緒にして欲しいと医師に頼む。もうひとつは港にコンテナが漂着し、なかにはガボンから密航してきた人々がいてイドリッサという少年がロンドンにいる母に会うため脱走する。この少年のため、警察の目から守り何とかお金を工面してロンドンへ密航させようと奮闘努力するマルセル。パブのママやパン屋・八百屋など近所人々の善意は、愛妻を失う孤独なマルセルに対する思いやりだと窺える。
20年前マルセルを演じたアンドレ・ウィルムスは靴磨きに誇りを持つ元ボヘミアンを好演。妻のアルレッティ役はカウリスマキ作品には欠かせないヒロイン、カティ・オウティネン。無表情ながら<哀しみに堪え幸せを求める女>を演じたら右にでる者はいない。ほかにもエリナ・サロ、イヴリヌ・ディディなどの常連がシッカリと脇を固め、監督の愛犬ライカもパルムドッグ審査員特別賞を受賞して貢献している。
もっとも役得だったのはモネ警視役のジャン=ピエール・ダッサン。世界遺産となった年のワインとカルヴァドスを愛する法の番人である。ほかにジャン=ピエール・レオが謎の密告者で出演しているが、もったいないほどのチョイ役。
不法滞在の少年を救う作品に「君を想って海をゆく」(P・リオレ監督、V・ランドン主演)があるが、感動的なタッチはここでは見られない。監督曰く「非現実的な映画」で思いもよらない結末が待っているのだが、ひっそりと咲く若木の桜が象徴するようなこころ温まるエンディングだ。日本の下町人情劇を想わせる設定ながら、お涙頂戴とは一味違う気候風土を感じた作品だった。


『利休』 80点

2012-05-10 16:35:44 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

利休

1989年/日本

華やかな桃山文化と草月流美の極致を映像化

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

野上彌生子原作「秀吉と利休」を勅使河原宏が「砂の女」以来17年振りに監督した。当初のキャスティングは利休のマーロン・ブランド、秀吉にビート・タケシを考えていたほど斬新なアイディアでスタート。脚本を赤瀬川原平に委託しただけでも革新的で今なら劇画的なイメージを持っていたのだろう。
原作は秀吉・利休を均等に扱いながらそれぞれの心のすれ違いを描いているが、本作は利休の茶頭としての生きザマが中心。茶の湯を諸国の武将へひろめながら自らを高め深める利休は秀吉にとって権力の頂点に立つまで利益共同体であった。帝に黄金の茶を供し、小田原城を落とし蜜月のときが過ぎると、心底屈服しない家康・政宗などの大名を難なく弟子にする利休に嫉妬と恐怖心を覚える。
華やかな桃山文化を映像化するため、贅の限りを尽くした本物へのこだわりは尋常ではない。出てくる茶碗は桃山時代の一級品が登場し、高価な絨毯も本物だという。さらに三代目草月流家元である監督の生け花は時代を超えて美の極致へと誘ってくれる。衣装は「乱でオスカー受賞のワダ・エミによるデザインで絢爛豪華。充分海外への賞狙いを意識したものだろう。同時公開の熊井啓監督・三船敏郎主演の「千利休 本覺坊遺文」とよく比較されるが映像美ではこちらが断然上。
利休を演じた三國連太郎は脂ぎっていて枯れた境地はなく内政を牛耳ったエネルギーがみなぎっていたが、かなり抑えた演技は好感が持てた。秀吉の山崎努はかなりオーバーで日本人が見ると不自然。ほかに出番は少ないが信長に松本幸四郎、家康に中村吉衛門の兄弟、三成に坂東八十助などの歌舞伎役者を配し時代劇としての重厚さを備えている。女優陣は利休の妻・りきの三田佳子がいい。夫の危機を心配しながらも<這いつくばって生きてゆくことを嫌う夫>への気配りは品格があった。ほかに北政所に岸田今日子。絢爛豪華な衣装で名古屋弁を繰り出す賢妻振りは微笑ましい。脇役では井川比佐志の山上宗二が手堅い。
モントリオール、ベルリンで<日本の美>が高評価されたが、作品としての評価はいまひとつだったのも頷ける。総合評価では「本覺坊・・・」に軍配を挙げたい。


『裏切りのサーカス』 85点

2012-05-07 14:05:12 |  (欧州・アジア他) 2010~15

裏切りのサーカス

2011年/イギリス=フランス

難解さが面白さに変わる快感を味わえるミステリー

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

「寒い国からきたスパイ」「ナイロビの蜂」など英国諜報部(M16)出身のジョン・ル・カレ原作(ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ)を映画化した128分。「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソンが独特の時間・空間を緊張感溢れる映像にして、小説とはひとあじ違う緊迫感を持たせたミステリー。70年代初頭の英国諜報部(サーカス)を舞台にソ連に通じる潜入スパイ(モグラ)を4人の容疑者から探し当てる役目を担った寡黙な初老の元諜報部員スマイリー。
元同僚の容疑者とはティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマンの4人。元ボスでソルジャーを右腕として重用していたコントロールがつけたコードネームである。
一見単純なハナシを複雑にする要因はモグラの存在を知りうる実働部隊(スカルプ・ハンター)の2人。ひとりはジム・ブリトーで、ハンガリーの将軍を亡命させるためボスのコントロールが内命した男。もうひとりはボリスというスパイの動向を探るためイスタンブールに派遣されたリッキー・ターで、ボリスの妻イリーナに恋をして二重スパイの疑いを掛けられた男。
ピーター・アストロハーンとブリジット・オコナー夫妻の脚本はモグラ探しをするスマイリー、ブタペストでコントロール作戦を失敗するブリトー、そしてイスタンブールでイリーナに恋して窮地に立つターの3つのストーリー展開をジグゾー・パズルのように同時並行的に進行させている。それだけでなく、4人の容疑者の言動や、それを探るスマイリーの孤独な要因である妻アンとの別れの回想シーンなど伏線からも目が離せないなど、まるで観客が一緒に参画しているような錯覚に陥るような雰囲気を醸し出している。
優れたミステリーは事前情報なしで見ても、ストーリーを追っていくうちミスリードしながらも伏線が明確にあって最後はなるほどと納得してスッキリするものである。ところが本作は原作を読むか事前に渡されたギャガ・タイムスというリーフレットを見て頭に入れておかないと<リピーター割引き>を売りにしているほど難解である。単純なストーリーの割に登場人物も多く、主要人物の本名とコードネーム・相関関係を予め頭に入れておくと難解さは半減するのでお薦め。
映像は総てスタイリッシュ。当時のファッション・車・タイプライターや電話などの備品、部屋の壁紙・エレベーターなど細かい気配りが行き届いていてそのセンスの良さは抜群。とくにポール・スミスの特別協力によるスーツ姿は、一癖も二癖もある男たちの<野望・忠誠・友情・裏切り・愛憎>を際立たせてくれる。
スマイリーを演じたゲイリー・オールドマンは抑えた演技で孤独な男を緻密に表現してオスカーにノミネートされている。ほかにもコリン・ファース、トム・ハーディ、ジョン・ハート、トビー・ジョーンズ、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチなど英国の新旧俳優たちが持ち味を発揮していて、彼らの演技をみるだけでも充分楽しめる。
冒頭ブタペストのカフェのシーンは「アンタッチャブル」のシカゴ駅と並ぶ緊張感タップリで監督・スタッフのセンスの良さを感じた。そしてシャンソン「ラ・メール」の音楽とともに一気にたたみかけるエンディングは難解さから面白さに変わる爽快感となってゆく。


『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』 80点

2012-05-03 14:50:45 | (米国) 1980~99 

パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー

1998年/アメリカ


R・ウィリアムスのはまり役

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

実在の医師、ハンター・キャンベル・アダムスの半生をもとにR・ウィリアムスがホスピタルクラウンを実践する人間味溢れる医学生を演じた ヒューマン・ドラマ。実年齢よりかなり年上で風貌・イメージは違うR・ウィリアムスだが、トム・ジャドヤック監督が熱望しただけあって型破りで独特の笑顔は、まさにはまり役だ。
自殺未遂から精神病院へ入院した体験をもとに医師と患者の隔たりに疑問を感じたアダムス。、患者と対等な関係の医師を目指すため、ヴァージニア大医学部へ入学するが医学界の常識を破り、子供たちや気難しい患者の治療に笑いを持ち込んだためガントン学部長から睨まれ病院への出入りを禁止される。めげないアダムスは理想を実践するため富豪アーサーの援助を受け、学生仲間のトゥルーマンやガールフレンドのカリンたちと無料で受けられる病院をつくり評判となる。成績はトップクラスだが無資格の医療行為の過度で退学の危機へ。おまけに将来を夢見たたカリンがトラブルに巻き込まれ絶望の底へ落ちてしまう。
トゥルー・ストーリーと副題にあるとおり事実をもとにしているのだろうが、このあたりは<あまりにもドラマチックで、ベタな感じ>が好き嫌いの要因ともなっているが、R・ウィリアムスだからこその展開でもある。マシンガン・トークの「グッドモーニング・ベトナム」のDJ役、「いまを生きる」の名門ハイスクールの教師役、「レナードの朝」の誠心な医師役、「グッドウィル・ハンティング/旅立ち」の大学講師役を演じてきた<若者や弱者の味方R・ウィリアムス>の持ち味がそのままこの役に生きている。
生真面目なエリートで相部屋医学生のローマンにフィリップ・シーモア・ホフマンが扮しているが、知識だけでは医師は務まらないということに気づきアダムスに悩みを打ち明けるシーンは達者な俳優の片鱗を見せていた。
医師をテーマにした作品は多いが「赤ひげ」と並んでこんな医師が沢山出てきて欲しいと思う感動のストーリーだが、ちょっぴり悪ふざけも・・・。