・ 全米ベストセラーのSFラブ・ストーリー?の映画化。
全米で28週トップ10入りしたオードリー・ニッフェッガーの純愛小説を、「ゴースト/ニューヨークの幻」の脚本家ブルース・ジョエル・ルービンが念願の脚色によるSFラブストーリー。監督はロヴェルト・シュヴェンケ。原題は直訳すると「タイム・トラベラーの妻」。
6歳のとき母の運転していたワゴン車がスリップ事故に遭い空中に投げ出されたヘンリー。成人して図書館で働いているが若い女性が親しげに話しかけてくる。ヘンリーは見覚えがないが相手はよく知っているらしい。それどころか、女性の名はクレアといってヘンリーは運命の人で、クレアが6歳のトキから知っていたという。
時空を超えて旅するタイム・トラベラーの男ヘンリーと彼と運命的に結ばれた女性の愛を綴ったラブ・ストーリー。女性の感涙を絞りそうなテーマだが、いまひとつのめり込めないのは年のせいか?
この手の映画は矛盾が前提にあるにもかかわらず、どうしても粗探しに目が行ってしまうのが悪い癖。主人公が自分の意思とは関係なく過去・現在・未来を瞬間移動してしまうため、時空の変化がシャッフルされ多少分かりにくさはあるが、6歳の少女が見知らぬ裸の男に好意を抱くだろうか?クレアが大人に成長するのに都合よく若い男のヘンリーと出会い恋に落ちるだろうか?と疑問符だらけでストーリーを追って行くハメに陥ってしまった。
救いはクレアを演じたレイチェル・マクアダムス。「きみに読む物語」で印象に残る女優だが、ここでも運命の人と再会し、幸せな夫婦生活を送り可愛い娘を得る理想的なヒロインを演じて、女性の共感と男性の憧れを誘う。穏やかな色調の映像が彼女をより一層際立てて魅せている。
ヘンリーに扮したのはエリック・バナ。「ブーリン家の姉妹」で同じ名前のヘンリー8世役での記憶が生々しく、純愛モノよりアクション系に向いているような風貌だが、ところ構わず裸で出現する奇妙な設定に耐えるためには美青年では務まらない。それでも観客はヘンリーに死の影が及ぶのを知っていながら経過を追うこととなるので、哀れを誘うことに。
このジャンルで欠かせないのは子役達。クレアの6歳時にブルックリン・クルー、10歳時にヘイリー・マッキャン、夫婦の娘アルバにテイタム・マッキャンと達者な女優の卵たち。これから大女優に成長するかもしれない。
タイム・トラベラーは自分の生死は選べないが、ロトで大儲けできるのか?という奇想天外なラブストーリーという印象が残ってしまった。