晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『マーヴェリック』 80点

2010-03-29 14:25:59 | (米国) 1980~99 

マーヴェリック

1994年/アメリカ

肩の凝らないコミカルなウェスタン

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「リーサルウェポン」のコンビ、リチャード・ドナー監督とメル・ギブソンによるコメディ・タッチのウェスタン。50年代TVシリーズで人気のあった同名の映画化で、本格的な西部劇ファンには物足りないが肩の凝らないストーリー。駅馬車の疾走シーンや「夕陽のガンマン」「大いなる西部」の主題歌が流れたり結構楽しめる。
何より豪華キャストで、それだけで一見の価値がある。主演のギャンブラー・マーヴェリックにM・ギブソン、女詐欺師アナベルにジョディ・フォスターに加え、TVでマーヴェリックを演じたジェームズ・ガーナーが謎の連邦保安官に扮して健在ぶりを見せている。さらに終盤のハイライトになるポーカー大会の主催者で会場の船主でもある提督にジェームズ・コバーンが登場、リーサル・ウェポンの名コンビ、ダニー・グローバルが友情出演している。
なかでも絶頂期のJ・フォスターがいつもとは違うコミカルな役を楽しそうに演じている。この役は当初メグ・ライアンを予定していたが、彼女に回ってきたらしい。M・ライアンなら当たり前の役回りだが、J・フォスターであるところが意外性があって一番の見どころとなっている。
昨今私生活でしか話題にならない2人だが、J・フォスターは昨年夏、14年ぶりの監督作品(ザ・ビーバー)の主演をM・ギブソンに持ち込んで製作することになったと聞くが、その後どうなったのだろう。まだまだ活躍して欲しい2人である。


『マイレージ、マイライフ』 85点

2010-03-28 09:30:30 | (米国) 2000~09 

マイレージ、マイライフ

2009年/アメリカ

現代のUSAをタイムリーに捉えた佳作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆85点

「サンキュー・スモーキング」「UNO/ジュノ」などいつも意外な設定で時代を切り取って行く32歳の俊英ジェイソン・ライトマン監督。いま油が乗りきっているジョージ・クルーニー主演で、煩わしい人との関わりを回避してきた独身の中年男の生活を通して、心模様の変化を描いた人間ドラマ。アカデミー賞作品賞をはじめ主要5部門にノミネートされ無冠に終わったものの、ハイウッドがいかにJ・ライトマンに期待していて、彼がその期待に応えつつあることを実証してくれた作品である。
「リストラ宣告」という過酷な業務の会社に勤めながら年間322日出張するライアン(J・クルーニー)は、<深入りしない人生>をモットーにマイル1000万ポイントを目標に過ごしてきた。キャリア・ウーマンのナタリー(ヴェラ・ファミーガ)とは似たような境遇で、その場限りの恋を楽しんでいた。ところがネット時代の申し子で新入社員のナタリー(アナ・ケンドリック)が、出張費の削減のためネットでの業務改善を提案しボス(ジェイソン・ベイトマン)に受け入れられる。
世代間の相違や業務の合理化など昨今どこにでも見られる状況を背景に、家族を持とうとしない・あるいは持てない男と、大人の女のしたたかさ、若い女の危うさのトライアングルが絶妙に絡まって、地味ながらウィット・ユーモアに溢れるハリウッドの善き伝統が画面に漂う。
さらに妹ジュリー(メラニー・リンスキー)の結婚式で新郎・ジム(ダニー・マクブライド)が結婚恐怖症に陥り、ライアンが説得するなどシニカルな可笑しさが加わって味わい深い人間ドラマとなっている。目標の1000万マイルを達成したときの何とも言えない無力感や、バックパックに入らないものは背負わない信条の男が一緒に生活したいと思う心境の変化など、ここかしこにライトマンの人間描写の素晴らしさが、うかがえる。
J・クルーニーは如何にも自然体でライアン役をこなしはまり役。A・ケンドリックは一見ドライなエリートでありながら実は結婚に憧れる、可愛い娘を好演、自分をしっかり守りながら人生を謳歌する大人の女を演じたV・ファーガミとともにオスカー助演女優賞にノミネートされたのも納得で次回作が楽しみ。
J・K・シモンズ、ザック・ガルフィアナキスなどリストラされる人たちの反応がさまざまだが、ライアンの常套句「帝国を築いた英雄も、挫折の苦境をバネにする」を聴いて思わず納得してしまう。そして「子供の笑顔を見ると励みになる」「妻の一言で元気がでた」などと言う。皮肉にも原題の<UP IN THE AIR(物事が不安定であること)>を地で行くライアンへの最大のメッセージとなっている。


『白い恐怖』 80点

2010-03-25 16:45:38 | 外国映画 1945以前 




白い恐怖


1945年/アメリカ






サイコ・スリラーというよりラブ・ロマンス





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
85点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





ウグレフランシス・ビーディングの異常心理小説「ドクター・エドワーズの家」を、当時デイヴィッド・O・セルズニック プロデューサーのお抱え的存在だったA・ヒッチコックが監督したサイコ・スリラー。ヒッチコックお気に入りのベン・ヘクトのシナリオは、当初精神分析をモチーフにしたサスペンスだったが、セルズニックの意向でラブ・ロマンスに仕上がっている。
新任の精神病療養所・所長エドワーズ(グレゴリー・ペック)。思ったより若くて素敵な風貌に女医のコンスタンス(イングリッド・バーグマン)は一目惚れする。所長歓迎の食事の席で、エドワーズはコンスタンスがテーブルクロスでつけたフォークのラインを見た途端、気分が悪くなってしまう。その原因を探るうち、男はエドワーズとは別人で、エドワーズを殺したため本人になりすましたというメモを残し、NYへ旅立ってしまった。
フロイトの精神分析がもてはやされたこの時期類似の映画が作られたが、この作品はヒッチコックが手掛けたからか、いまでも多くの人に語り継がれている。コップの底からのアングルや扉が次々と開かれるシーンなど、その片鱗は随所に見られるものの断片的で、後の作品と比べ切れ味に欠けるきらいは否めない。
夢の舞台装置にサルヴァトール・ダリを起用して独特の世界を表現したり、電子音楽テルミンを流したり当時としては極めて斬新な試みをしている。必ずしも成功したとは思えないが、画期的な心理描写を映像化しているのは流石。
絶頂期のI・バーグマンはやや硬いがメガネをかけた女医役にはぴったりで外したときがひときわ美しい。G・ペックは3作目・29歳なので、のちの渋い2枚目ぶりと比べると頼りなさを感じるが、かえって記憶があやふやなこの役にはあっていた。ヒッチコック作品の常連レオ・G・キャロルやマイケル・チェーホフががっちり脇を固めてストーリーに厚みを持たせている。お馴染みのヒッチコック探しは難しいが、エレベーターの男に注目。






『おとうと』 80点

2010-03-20 12:40:24 | 日本映画 2010~15(平成23~27)




おとうと


2010年/日本






久々家族揃って観る映画





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
85点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





ベルリン国際映画祭で特別功労賞を受賞して日本映画の代表的な監督のひとりであると評価された山田洋次監督久々の現代劇。前作「母べえ」に続き吉永小百合と笑福亭鶴瓶を起用した家族の物語。かつてお茶の間でTVを囲んで観ていたドラマを連想する<久々家族揃って観る>映画。
東京・下町の蒲田で亡くなった夫の経営していた薬局を引き継ぎ、ひとり娘(蒼井優)を育てつつましく暮らしている吟子(吉永小百合)と、娘の名づけ親で大衆演劇の役者だった鉄郎(笑福亭鶴謎)。どうみても姉弟とは思えない2人だが、これは寅さんとさくらも同じ。山田監督は幸田文原作で同名の映画を監督した「市川箟へのオマージュ」というが「寅さんへのそれ」を思わせる。そして良くも悪くも大船松竹の伝統を受け継いでいる。それはFIXしたカメラ、きれいなしっかりとした録音、くっきりと映る照明によるもので、スタッフが山田組を支えている。
女神のような存在の姉は吉永小百合の真骨頂。というより他の役をやってもイメージが変わらない。彼女こそタレントではなく「最後の映画女優」である。対する弟の鶴瓶は<ごんだくれ>がそのまんま大人になったようなやんちゃな男でこれも地に近い。15キロも減量して頑張った割に油ぎって見えるきらいはあるものの、一所懸命生きる所以の可笑しさを演じ切っている。つまり山田監督は2人のイメージをそのまま映像化している。そのため吉永小百合に大阪弁を喋らせるような無理はしない。その分小林稔持(兄・庄平)加藤治子(義母)笹野高史(自転車や)など芸達者を配しドラマを円滑に展開させている。鶴瓶と仲良しの中居正広がカメオ出演しているのもサプライズとして楽しい。
昭和・高度成長期の庶民として生きてきた吟子と鉄郎。その対照的な人生を描きながら、平成の若者、小春(蒼井優)と大工の享(加瀬亮)に希望を託す手法は、山田監督の人間賛歌そのもの。そして、家族を持たず故郷を失った人の最後が、民間ホスピスという事実をさりげなく取り上げることで現代社会の矛盾に警鐘を鳴らすしたたかな手腕を感じる。東京・山谷の「きぼうのいえ」がモデルのせいか、通天閣がみえる大阪なのに関西の雰囲気がないのは気にし過ぎか?
久しぶり観ていて自然に涙を流したが、改めて日本人のDNAを持っているのを実感した。






『ハート・ロッカー』 80点

2010-03-16 15:55:36 | (米国) 2000~09 

ハート・ロッカー

2008年/アメリカ

タイムリーなオスカー受賞

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

ライバル「アバター」を破ってアカデミー賞・作品賞をはじめ監督・脚本賞など最多6部門を受賞した話題作。題名「ハート・ロッカー」とはイラクでの米兵の隠語で、<行きたくない場所>とか<棺桶>を意味するそうだ。まさに爆発物処理班はその象徴の部署でブラボー中隊に赴任したジェームズ軍曹(ジェレミー・レナー)の物語。
イラクでの取材体験をもとに書き上げたマーク・ポールの脚本は、単なる反戦映画ではなく兵士達の日常から内面の心情を丁寧に描いたリアリティな物語。「k-19」以来7年ぶりに監督したキャスリン・ビグローは、女性とは思えないドライなタッチで骨太な映像をつくりあげ、見事にオスカーを獲得した。イラク戦争とは何だったのか?を改めて回想している現在、タイムリーな受賞となった。
主演のジェレミー・レナーは「スタンド・アップ」でシャーリーズ・セロンと共演したぐらいで目立った役の印象はないが、かえって複雑なキャラクターをリアルに見せている。ジェームズ軍曹を補佐するサンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)とエルドリッジ技術兵(ブライアン・ジェラティ)の3人の葛藤と連携のサマも戦場での死と隣り合わせにいる兵士たちの人間ドラマである。レイフ・ファインズ(民間請負部隊長)ガイ・ピアース(冒頭爆死したトンプソン軍曹)デヴィット・モース(リード大佐)エヴァンジエリン・リリー(コニー)など著名な俳優が端役で出演しているのもリアルに見せる効果を生んでいる。
兵士達はイラク市民から冷たい目で見られながら黙々と仕事をこなす。祖国のためでもなく正義のためでもない。ジェームズ軍曹は爆発物処理に関してはヒーローだが除隊後はスーパーでの買い物すらおぼつかない平凡な男。まさに戦争は麻薬である。


『すべて彼女のために』 85点

2010-03-07 10:25:43 | (欧州・アジア他) 2000~09

すべて彼女のために

2008年/フランス

久しぶり映画の醍醐味を堪能した

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

題名からラヴ・ストーリーを連想するが、どちらかというとサスペンスである。それも単なるサペンスではなく極限状態で人間は愛する人のためにどのような行動をとるのか?というフランスならではの人間ドラマでもある。
監督はこれが長編デビュー作のフレッド・カヴァイエで、ギョ-ム・ルマン原案を共同で脚本化している。
ファースト・シーンは出血した男が車を必死に運転している。タイトルが終わるとエレベータでの濃厚なキス・シーンがアップで映り、それは3年前の男で、女は帰宅途中の妻で夫婦と分かる。翌朝自宅で出勤の支度をしているさなか、幼い息子の前で妻が突然逮捕される。たたみかけるようなこのつかみが圧巻で目が離せなくなる。
雑誌編集長の妻リザ(ダイアン・クルーザー)が上司を殺した罪であるが、誤認逮捕であることが観客には伝えられる。その間わずか15分程度のテンポの良さで緊迫感が漂う。国語教師の夫ジュリアン(ヴァンサン・ランドン)は冤罪を晴らそうと必死になるが、3年後禁固20年の刑が確定してしまう。
これからの展開は、無実を晴らすための状況証拠を切り崩し裁判で立証するか、警察に頼らず真犯人を突き止めるかを想像するが、本編はなんと「脱獄」。いかにも突飛な流れのようだがそれなりの布石があって、思わずハラハラ・ドキドキの緊迫感の96分、久しぶり映画の醍醐味を堪能した。
主演のV・ランドンは幅広い役をこなすフランスの名優だが、平凡な教師が妻のために究極の選択をして実行しようとする難しい役を説得力をもって演じ、彼なくしてこの映画は成功しなかっただろう。妻のリザ役のD・クルーザーは、近作の「イングロリアス・バスターズ」で魅せた妖艶さとは違って、このヒトのためならと思わずにはいられない美しさを披露してくれた。いま目が離せない女優のひとりだ。
「クラッシュ」「ミリオンダラー・ベイビー」で心情を描くことには卓越したポール・ハギスが、ラッセル・クロウ主演でリメイクして只今編集中とのこと。公開が楽しみだ。


『7月4日に生まれて』 80点

2010-03-04 11:53:02 | (米国) 1980~99 




7月4日に生まれて


1989年/アメリカ






愛国心とは?を考えさせられるストレートな反戦映画





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
75点




キャスト

★★★★☆
80点




演出

★★★★☆
75点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





ロン・コーヴィックの自伝小説をもとに「プラトーン」のオリバー・ストーン監督が映画化して2度目のオスカーを獲得した。
’46年7月4日アメリカの独立記念日に生まれた青年の葛藤の物語。主演は「レインマン」で演技派へ脱皮しようとしていたトム・クルーズで大奮闘している。
愛国心とは?を考えさせられるストレートな反戦映画であるが、自分と同世代でありながら、あまりにも違った人生を送ったヒトの半生記を観ると「作品の善し悪しでは語れない衝撃」を受ける。
この時代のアメリカは50年代・黄金の自信、60年代栄光から苦悩と挫折の連鎖、70年代厭戦ムードと混迷へと変遷の20年間であった。
戦争ごっこと野球に夢中だった少年が高校で海兵隊曹長(トム・べレンジャー)の演説に影響を受け入隊を決意する。典型的なアメリカ人の両親にとって自慢の息子であった。
序盤はロン(T・クルーズ)とドナ(キーラ・セジウィック)の青春ドラマで始まり、ベトナムの戦場では戦争ドラマへ。帰国後はひとりの男の葛藤のドラマへ移り、最後は...。
とくに戦場でのベトナム民間人と仲間を誤って射殺してしまったトラウマは戦争の惨さを訴えてくる。だが、この映画は除隊した彼の葛藤ぶりが本命題である。下半身不随の英雄は故郷での冷たい扱いに愕然とする。ここでアメリカの理想的な家庭像はもろくも崩壊しつつある。心を癒すためのメキシコのひとり旅はさらに悲惨のひとこと。同じ境遇の元傷病兵チャーリー(ウィレム・デフォー)との諍いが凄まじい。このあたりの描写がO・ストーンの真骨頂だろう。
現実は、イラク戦争でも似たようなことを行ったアメリカ。懲りずにアフガンでもこれ以上繰り返して欲しくないことをこの作品で改めて感じるが、いまのアメリカではこんなストレートな反戦映画は作れそうもない。