・ 今どきの家族を象徴的に描いたG・ドラン監督のカンヌ・グランプリ作。
19歳で監督デビューしたカナダの俊英グザヴィエ・ドラン。27歳にして早くも5作目は、ジャン=ルック・ラガルスの舞台劇を独自の作風で映像化、カンヌ・グランプリを受賞した。
作家として成功したルイ(ギャスパー・ウリエル)が12年ぶりに帰郷する。
手料理でもてなすためにハイテンションの母マルティーヌ(ナタリー・バイ)、幼い頃ルイと別れ馴れないオシャレをして待つ妹シェザンヌ(レア・セドゥ)、勝手に家を出た弟を快く思っていない兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)とその妻でルイとは初対面のカトリーヌ(マリオン・コティヤール)の4人が出迎える。
ルイが12年ぶりに帰郷したわけは、自分の死期が近いことを家族に伝えるためだった。
出演したのはフランスを代表する俳優ばかりの豪華キャストで、彼らの演技合戦が見所のひとつ。
なかでも主演のG・ウリエルは殆ど台詞がないのにエモーショナルな演技で難役ルイを好演。
共演した母役N・バイは流石大女優ならではの存在感はあったが、L・セドゥ、M・コティヤールはあまり見せ場もなくもったいない気がした。
名優V・カッセルの兄役は、原作のように弟のほうがイメージが合う役柄で気の毒な気がした。
登場人物をアップで捉えその心情を炙り出す作風と、音楽を大胆にテーマに絡める手法に定評があるドラン作品。
本作では、オープニングに流れるカミーユの<ホーム>で家は誰かを傷つけるものであることを暗示し、ルイの帰郷は決して楽しいものではなく、これから起こるであろう出来事に不吉な予感を呼び起す。
12年ぶりの再会は家族にとって怒り・憎しみを潜在したものであっても、それぞれルイへの思いやりのあるものだった。それぞれが本音を隠しはしゃいで見せたり、取り留めもないおしゃべりで話題をそらす。
ゲイであるルイの帰郷を最も嫌っていたアントワーヌですら、偽りの家族愛に葛藤しながらルイの死の予感を察し核心に触れさせようとしない。
ルイの12年ぶりの帰郷は、家族であっても気遣うあまり互いに傷つけあったり、意思が伝わらないことも多いことを思い知らされる。
家の鳩時計のハトと、エンディングに流れるモービーの<ナチュラル ブルース>が、まるでルイの心情を代弁しているようだ。