晴れ、ときどき映画三昧

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「お日柄もよく、ご愁傷さま」(96・日) 75点

2013-06-12 07:31:27 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

 ・小津の世界を90年代にタイムスリップさせたホーム・コメディ。

 

 東京に住む中年サラリーマン家庭に次々と起こった出来事を通して、家族の絆を確かめ合うハートフルなホーム・コメディ。

 原案と監督は「相棒」シリーズの和泉聖治。今でこそ売れっ子の監督だが、17年前はVシネマの監督として知られていた程度で、ホーム・コメディとは無縁の世界のヒト。デビューは72年でキャリアは長いが、もっぱらピンク映画専門の苦労人。
 小津の世界を90年代にタイムスリップさせたような良質なハートフル・コメディを誕生させていた。

 主演は、橋爪功でTVで幅広い役柄でお馴染みの俳優が映画では本作が初主演。本作で見事日本アカデミー賞主演男優賞を受賞している。筆者にとって印象深かったのは刑事ドラマより「仕掛け人・梅安」シリーズでの彦次郎役。目立たないが秘かに目的を果たすためには全てを投げ出す一途な男が印象的だった。
 ここでは何処にでも居そうな平凡なサラリーマン。これが俳優にとってはイチバン難しい。観客は現実を知っているからウソ臭さは直ぐに見破ることになるからだ。友人に懇願され初の仲人を務めることになって一所懸命練習。いよいよ当日になって、昨日まで元気だったお爺ちゃん(松村達雄)が急死。
 こんなことは同時に起こることは滅多にないが、起こらないとは言い切れない。興味と同情を交えながら映像を観ることに。臨月の長女(伊藤かずえ)は夫(布施博)の浮気に怒って家に戻っているし、次女(新山千春)は付き合っている男がいるらしい。これから
何かが起こりそうである。

 改めて感じたのは17年前は3世代同居の家族があって、それぞれの交流があったこと。家には固定電話しか通信手段がないのは今は昔。お爺ちゃんが亡くなると、孫が大泣きする時代だったのだ。娘(根岸季衣)の売れない脚本家(西岡徳馬)との結婚を大反対していた、かつてのお爺ちゃん。こっそり新聞記事をスクラップしていたなんて人柄が偲ばれ、家族の絆を感じる。

 一家の主婦を演じたのは吉行和子。才人一家に育ち、のんびりしたお嬢さまだった彼女も本作では61歳。とても若くて橋爪とは6歳年上とは思えない。「愛の亡霊」(78)での主演を始め、「佐賀のがばいばあちゃん」(06)など幅広い役柄をこなす貴重な女優だ。

 一歩間違えるとドタバタに成りかねないこのドラマは達者な俳優たちと布施博一の脚本が手堅い手法で纏まりのあるものとなった。

 
 

 


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