晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(02・米) 80点

2023-07-28 17:30:40 | (米国) 2000~09 
 フランク・W・アバクネイルの自伝小説「世界をだました男」をスティーヴン・スピルバーグ監督、レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクスの共演で映画化。
 ’68年、NYブロンクスヴィルに住む16歳の高校生フランクJr(R・ディカプリオ)が、両親の離婚をキッカケで家出。生活のため小切手詐欺に手を染めるが上手く行かない。パイロットに成りすますことがキッカケで成功するのを手始めに医師・弁護士として偽名を使いFBI捜査官カール(T・ハンクス)との追走劇が繰り広げられる。
 昔から偽名を使った詐欺事件の映画は数多くあって楽しませてくれている。筆者は「チャップリンの殺人狂時代」(47)、「スティング」(73)、「ペーパー・ムーン」(73)などが好みだが邦画では「クヒオ大佐」(09)が本作によく似ている。
 事実だがウソのようなストーリーは魅力的でダスティン・ホフマン主演で過去にも映画化の話があったという。
 スピルバーグはコメディタッチやシリアスなクライム・サスペンスにもなそうなハナシを大筋は変えないものの、16歳の少年が何故大胆な詐欺行為をしたかを追いながら<帰る家のない自分の居場所探しをする男のビター・スイーツな人間ドラマ>として描こうとジョニー・デップの起用を考えていたという。
 フランクJrを演じたディカプリオは当時20代後半で流石に16歳には見えないが、両親とくに父親に憧れを抱いた純粋な少年の面影を巧みに演じ見事期待に応える主人公になりきっていた。
 FBI捜査官カールに扮したT・ハンクスはスピルバーグ作品には4度目の出演。オーバーな演技が裏目に出ることもあるが、本作では離婚して独り身の捜査官を渋い受けの演技で支えている。
 フランクJrの愛する父親フランクにはオスカー俳優クリストファー・ウォーケンが出演し、息子の人格形成にはこの父がいたからだと納得の存在感を魅せ、オスカー・ノミネートも納得の演技だった。
 また後に「魔法にかけられて」(07)でブレイクし売れっ子女優となっていくエイミー・アダムスが新人看護師役で初々しい姿を見せてくれているほか、「アメリカの夜」(73)のナタリー・バイが浮気をごまかす母親を巧みに演じているのも目を惹いた。
 最近ヤンキースの縦縞のユニフォームは元気がないが、昔から<馬子にも衣装>といわれるとおりエリート階級の制服には騙されやすい。
 IT時代の今、小切手詐欺よりもっと大がかりな詐欺事件が横行しているに違いない。そんなテーマの作品も垣間見えるが、名作が生まれるのを期待したい。
 
 

「キャスト・アウェイ」(00・米) 70点

2023-07-24 12:30:37 | (米国) 2000~09 


  ・ 身体を張ったT・ハンクスの大熱演。

 メンフィスにある世界宅配便・フェデックスのシステム・エンジニアがマレーシアへ飛行中に墜落し無人島にたどり着く。
 孤独な4年間のサバイバル生活を経て帰還する男の人生を描いた人間ドラマ。

 「フォレスト・ガンプ/一期一会」(94)のロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演のゴールデン・コンビによる映画化で共演は「恋愛小説家」(95)のヘレン・ハント。

 フェデックスと言えばゴルフPGAツアーの年間スポンサーとしてお馴染みだが、宅配便会社の最大手。自社便が墜落するストーリーで始まる本作ではイメージダウンになりはしないか?と思うが、フレッド・スミスCEOが本人役で出演するなど全面的協力がされている。
 
 お陰で事実をもとにしたのでは?と思うほどリアリティにこだわり不自然さを極力排除したシナリオ・映像・演出である。
 
 なんと言っても主演のT・ハンクスの身体を張った独演ぶりに目を奪われる。デニーロ・アプローチと呼ばれる体重の増減は25キロに及びお陰で2型糖尿病になってしまった。
 無人島でのサバイバル生活でのアクション・表情では孤独感を目一杯に表現しているが、重くならない彼のキャラクターによって安心して?観ていられる。

 約140分のうち前半分刻みの猛烈サラーリーマンの暮らしぶりが30分、無人島のサバイバル生活が80分、帰還後が30分という構成で「生きること」とは?を問いかけている。

 皮肉なことに無人島では希望を捨てずに頑張っていてバレーボールをウィルソンと命名・擬人化し友としたり、火起こしから食料調達や脱出の工夫を凝らすなど日々生き生きとしている。
 しかし無事帰還し皆から大歓迎を受けるが浦島太郎状態を味わい、恋人まで失って失意のどん底を味わうハメに。

 冒頭に出てきた<デックとベッティーナの工房>への宅配便が<世の中から見捨てられた漂流者>への救世主になるというエンディングがさり気なく表現されるが、もっとドラマチックさを期待していた筆者にとって肩透かしを食らったようなオシャレな作品だった。

「遠い空の向こうに」(99・米)75点

2023-07-19 12:03:52 | (米国) 1980~99 


 ・ 実在人物の自伝的小説を映画化した感動の青春ドラマ。


 NASAの元エンジニアだったホーマー・H・ヒッカム・ジュニアの原作「Rokecket Boys」をジョー・ジョンストン監督・ジェイク・ギレンホール主演で映画化。原題「October Sky」は原作のアナグラムとなっている。

 舞台は1950年代ウェストヴァージニアの炭鉱の町に住む高校生ホーマー(J・ギレンホール)がソ連の人工衛星スプートニクに衝撃を受け、仲間4人で「ロケット・ボーイズ」を結成。ロケット開発に夢中になり何度の失敗や困難を乗り越えながら夢を諦めず挑戦するという感動のストーリー。

 炭鉱の町をテーマにした作品は良作が多く、古くはジョン・フォード監督「わが谷は緑なりき」(41)を筆頭に同時代では「ブラス!」(96)・「リトル・ダンサー」(00)など英国映画の名作が多い。日本でも「フラガール」(06)が有名だが、何れも花形産業だった炭鉱が時代に置き去りにされながら懸命に生きる世代と、そこから何とか抜けだそうとする若者たちの世代ギャップを捉えている。
 本作は何しろ英語の教科書にも載っているというほどの有名なハナシなので、友情・家族愛・善き理解者が周囲にいて敵役が殆ど登場しない。
 大きな壁となったのは、封鎖社会環境や頑固で保守的な父と愛情ある母の期待を背負った少年の心の葛藤。炭鉱の町で生きていくには父親のように炭鉱夫になるか、兄のようにスポーツで奨学金をもらって大学進学するしかすべがない。
 そんななか、ロケット遊びと誤解される彼らの善き理解者は教師ライリー(ローラ・ダーン)だった。<夢見るだけでは道は拓けない>、<内なる自分の声を聴け>に励まされ、頑固な父ジョン(クリス・クーパー)を説得、「国際学生科学技術フェア」への道を切り拓いて行く。

 山火事・父の怪我・難病の教師などいくつかの逸話を挟みながら感動のラストシーンへ。 初主演のギレンホールの初々しさと昔気質の父親C・クーパーの父と息子の絆は固いヒモに結ばれていた。きれいごと過ぎるキライはあるものの素直に受け入れて鑑賞できたのは事実をもとにしたドラマだったからだろうか?
 

 
 
 

「恋に落ちたら....」(93・米)70点

2023-07-12 16:48:50 | (米国) 1980~99 


 ・ キャスティングの意外性で魅せたラブ・コメディ。


 NYを舞台に繰り広げられたラブストーリー「恋に落ちて」(84・米)にあやかった邦題だが、原題は「Mad Dog and Gloly」。シカゴを舞台に冴えない中年刑事がグローリー(ユマ・サーマン)というギャングの情婦を巡って描いたラブストーリー・コメディ。マッド・ドッグとは皮肉を込めた彼のあだ名で主演はロバート・デ・ニーロ。
 ギャングのボスを演じたのがシカゴ出身のビル・マーレイで、シリアスなドラマならキャスティングは反対に入れ替えられたに違いない。

 ひょんなことからギャングのボス・フランク(B・マーレイ)の命を救ったシカゴ警察のウェイン(デ・ニーロ)はお礼に美女と1週間過すということに。迷惑がっていたが気弱なウェインはやむを得ず受け入れる。兄の借金4万ドルをカタに情婦となっているグローリーに同情するうち恋心が芽生えてしまう。

 モテない中年男が恋に目覚める様子はコメディの要素だが、ベッド・シーンがシリアス過ぎて笑えない。
 当時ゲイリー・オールドマンと破局したユマ・サーマンは22歳の若さ。本作出演の翌年「パルプ・フィクション」でブレイクするが、気立ての良いピュアな姿はのちの「キル・ビル」(03)とは違った魅力を発揮している。

 ウェインの相棒マイク(デヴィッド・カルーソ)、ボスの用心棒ハロルド(マイク・スター)が、それぞれはまり役で脇を固めているのも見逃せない。

 なんといってもタレ目で愛嬌のあるギャングのボスを演じたB・マーレイが随所で見せるとぼけた味は主演のデニーロを喰う存在で、何より主題曲「Just A Gigolo」がその証となっている。