晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「アパッチ砦」(48・米)75点

2021-10-25 16:07:39 | 外国映画 1946~59


 ・ J・フォード監督<騎兵隊三部作>の初回作はH・フォンダ、J・ウェインの共演。

 ジェームズ・ワーナー・ベラ原作をジョン・フォード監督が映画化した<騎兵隊三部作>の第1作目。カスター将軍第七騎兵隊がモデルと言われるシリアスなストーリーを娯楽作品として魅力的に描いた監督の手腕が光る。
 主演はフォード作品の二大スターであるヘンリー・フォンダとジョンウェイン。さらに<アメリカ国民の天使>と呼ばれ名子役だったシャーリー・テンプルと夫のジョン・エイガーが恋人役で共演し、ワ-ド・ボンド、ヴィクター・マクラグレンなどお馴染みのフォード一家が出演している。
 J・フォード作品にはお馴染みのモニュメントバレーなど広大な風景と砂塵が舞う馬や駅馬車の疾走シーンが映し出され、軽快な音楽とともに臨場感満載だ。

 辺境のアパッチ砦へ駅馬車で向かうのはサースデイ中佐(H・フォンダ)と娘のフィラデルフィア(S・テンプル)親子。南北戦争で失策し、将軍から中佐へ格下げされたサースデイの赴任先である。
 中継地で砦との連絡が取れず困惑するが、偶然マイケル・オローク中尉(J・エイカー)への出迎えがあり事なきを得る。これからが思いやられるスタートとなった。

 序盤はフィラデルフィアとマイケルの若い二人の恋模様を軸に、砦での女性たちの暮らしやコミカルな兵士たちの様子、功を焦るサースデイ中佐とカービー・ヨーク大尉(J・ウェイン)など現地兵の空気感の違いが描かれる。

 サ-スデイを演じたH・フォンダは如何にもアングロサクソンのエリート軍人らしく規律に厳しく、先住民への優越感を持った一徹な司令官役。軍曹の父を持つオローク中尉と娘の恋にはヤキモキしている父親でもある。功を焦るあまり部下の注進も聴かず無謀な作戦を指示してしまう。

 ヨーク大尉のJ・ウェインは古参兵で部下の信頼も厚く、アパッチとの和平に尽力するが上司への説得に失敗。前半は控え目で出番は少ないが、クライマックスでは本領発揮するおいしい役どころだ。

 そのためサースデイは軍人精神を貫いた英雄として称えられたにもかかわらず、作戦が対立した場合それを乗り越え集団として困難な任務を達成するという理想の軍隊組織ではなかったことが描かれ皮肉な結果となってしまった。
 
  今観ると大量虐殺の肯定、先住民への偏見などこの手の作品には欠かせない描写もあるがアイルランド人監督ならではの愛すべき人物たちへの視線は貫かれている。

 日本公開が騎兵隊三部作で最も遅かったのは占領時のマッカーサーの意向によるものだが、その訳が分かるような気がする。
 

 

 

「アウト・ブレイク」(95・米) 70点

2021-10-11 12:14:48 | (米国) 1980~99 


 ・ 豪華キャストでバイオハザード(微生物災害)の恐怖を描いたサスペンス・アクション。


 エボラ出血熱の感染危機を描いたリチャード・プレストンのノンフィクション小説「ホットゾーン」を下地に映画化したサスペンス・アクション。ダスティン・ホフマン、レネルッソ、モーガンフリーマンなど豪華キャストで、監督は「U・ボート」(81)・「ザ・シークレット・サービス」(93)のウォルフ・ガング・ペーターゼン。

 ’67、アフリカ奥地モターバ川流域の小さな村で発生した原因不明の伝染病により、村人と米国傭兵部隊が犠牲となった。
 およそ25年経ったカリフォルニアで同じ症状の伝染病が発生、米陸軍伝染病研究所のサム・ダニエルズ大佐(D・ホフマン)がチームの指揮を執ることに・・・。

 ハリウッド王道である<軍隊が絡むヒューマン・ドラマ>の荒唐無稽なご都合主義との批判もありながら、なかなかスリリングで大いに楽しめた。

 主演のD・ホフマンは一見ミスキャストに思えたが、元妻レネ・ルッソへの未練を抱えながら未知の病原菌との闘いに挑むチームリーダーらしい正義漢を好演している。
 共演したレネ・ルッソは前作(ザ・シークレット・サービス)同様CDC(アメリカ疾病予防センター)で働くビューティフル・ウーマン役。M・フリーマンはサムの上司でもあり親友でもあるが研究トップとの板挟みで悩むおいしい役どころ。研究トップのドナルド・サザーランドは多少の犠牲を厭わず大義を重んじる指揮官で敵役を一手に引き受けている。
 研究チームにはケヴィン・スペイシーやキューバ・グッデング・JRが扮し、バイオハザード(微生物災害)に立ち向かうその役柄はいずれもはまり役。

 地下鉄サリン事件の翌月公開された本作。前半はエボラ出血熱を下地にしたリアルさもあって、フィクションながらウィルスが生物兵器として使われる恐怖を実感するエンタテインメント作品に仕上がっている。
 今回の新型コロナも武漢の研究所の動物が発症源では?との噂もあり、サルから感染拡大する様子もあながち荒唐無稽とはいえない。

 密猟されたサルから密売人とその恋人、ペットショップの店長、血液検査技師、映画館でくしゃみによる空気感染ととてもシリアスな感染爆発は、コロナ渦のいま観るには辛いものがある。
 正しい情報をもとに冷静な判断が必要だと感じつつ見終わった。