・ アメリカから見たバブル期の大阪を舞台にした刑事アクション。
「ブレード・ランナー」(82)のリドリー・スコット監督による刑事アクション。
NYで逮捕した日本人ヤクザを大阪に護送中逃げられ、言葉の通じない日本で犯人を追う2人の刑事と府警の警部補との交流を描いている。
大阪が舞台となっているため、多くの日本俳優が出ているハリウッド作品は貴重な存在。なかでも出番はそれほど多くないが、ヤクザ佐藤を演じた松田優作の代表作であり、遺作としても有名だ。
日本(人)が出てくるハリウッド作品は中国と紛らわしいものが多く、怪しげな日本人が出てガッカリすることが多いが、本作は粗があまり目立たないのが心地よい。
主演はNY市警の刑事ニックにマイケル・ダグラスが演じている。離婚して慰謝料に苦労していて、調停委員に調査されているグレーな部分を持つが、犯人逮捕には執念を持つ。バイク乗りには絶対の自信がある個性的な刑事役を気持ちよさそうに演じている。
相棒チャーリーには売り出し中のアンディ・ガルシアが扮し、ニックの良きサポート役となっていて旬な二大俳優の共演が最大の売り。
当初監督は「ロボコップ」(87)のボール・バーホーベンだったが、黒澤映画と新宿歌舞伎町好きのR・スコットに変更となった。
当初舞台を東京・歌舞伎町を想定していたが許可が下りず急遽大阪に変更、思ったより綺麗な街並みにガッカリしたという。どうやら香港の下町をイメージしていたきらいもあり、新日鉄堺の自転車シーンはまるで中国のよう。監督は否定しているが、4半世紀前のハリウッドは日本と中国の区別がはっきりしていなかったのでは?
スコット監督は松田優作の個性豊かな存在感に驚き、続編の可能性まで考慮したストーリー変更までしたが、残念ながら病魔に侵されていた彼は期待に応えられなかった。せめてデ・ニーロとの企画まで存命であればと無い物ねだりをする気にさせる鬼気迫る演技であった。
映画の出来は平板だが、出演者の演技は本物揃い。なかでも脇に廻った高倉健の演技には感心させられた。日本のトップスターでありながら、自己主張することない抑えた演技で名脇役ぶりは流石。
ガルシアとの掛け合いで「What’d I Say」を歌うシーンは邦画では絶対見られない。また「日本人は力を合わせて経済力をつけた。いまアメリカにあるのは、映画と音楽だけじゃないか」というセリフにバブル期ならではの自信を感じる。
やくざの親分・菅井には若山富三郎が扮している。貫禄たっぷりの関西弁の迫力は、アメリカ人には伝わらなかったと思うが、題名ともなっている<B29爆撃のあと、黒い雨が降ってきた経緯を語る姿>は重厚な存在感ある俳優として印象に残ったことだろう。
R・スコットならではの光と影の幻想的な映像はヤン・デ・ポンのカメラが支え、ハンス・ジマーのやるせないメロディで東アジアの異国情緒を醸し出していた。
21世紀のいま、こんな映画は良くも悪くも作れないだろう。
「ブレード・ランナー」(82)のリドリー・スコット監督による刑事アクション。
NYで逮捕した日本人ヤクザを大阪に護送中逃げられ、言葉の通じない日本で犯人を追う2人の刑事と府警の警部補との交流を描いている。
大阪が舞台となっているため、多くの日本俳優が出ているハリウッド作品は貴重な存在。なかでも出番はそれほど多くないが、ヤクザ佐藤を演じた松田優作の代表作であり、遺作としても有名だ。
日本(人)が出てくるハリウッド作品は中国と紛らわしいものが多く、怪しげな日本人が出てガッカリすることが多いが、本作は粗があまり目立たないのが心地よい。
主演はNY市警の刑事ニックにマイケル・ダグラスが演じている。離婚して慰謝料に苦労していて、調停委員に調査されているグレーな部分を持つが、犯人逮捕には執念を持つ。バイク乗りには絶対の自信がある個性的な刑事役を気持ちよさそうに演じている。
相棒チャーリーには売り出し中のアンディ・ガルシアが扮し、ニックの良きサポート役となっていて旬な二大俳優の共演が最大の売り。
当初監督は「ロボコップ」(87)のボール・バーホーベンだったが、黒澤映画と新宿歌舞伎町好きのR・スコットに変更となった。
当初舞台を東京・歌舞伎町を想定していたが許可が下りず急遽大阪に変更、思ったより綺麗な街並みにガッカリしたという。どうやら香港の下町をイメージしていたきらいもあり、新日鉄堺の自転車シーンはまるで中国のよう。監督は否定しているが、4半世紀前のハリウッドは日本と中国の区別がはっきりしていなかったのでは?
スコット監督は松田優作の個性豊かな存在感に驚き、続編の可能性まで考慮したストーリー変更までしたが、残念ながら病魔に侵されていた彼は期待に応えられなかった。せめてデ・ニーロとの企画まで存命であればと無い物ねだりをする気にさせる鬼気迫る演技であった。
映画の出来は平板だが、出演者の演技は本物揃い。なかでも脇に廻った高倉健の演技には感心させられた。日本のトップスターでありながら、自己主張することない抑えた演技で名脇役ぶりは流石。
ガルシアとの掛け合いで「What’d I Say」を歌うシーンは邦画では絶対見られない。また「日本人は力を合わせて経済力をつけた。いまアメリカにあるのは、映画と音楽だけじゃないか」というセリフにバブル期ならではの自信を感じる。
やくざの親分・菅井には若山富三郎が扮している。貫禄たっぷりの関西弁の迫力は、アメリカ人には伝わらなかったと思うが、題名ともなっている<B29爆撃のあと、黒い雨が降ってきた経緯を語る姿>は重厚な存在感ある俳優として印象に残ったことだろう。
R・スコットならではの光と影の幻想的な映像はヤン・デ・ポンのカメラが支え、ハンス・ジマーのやるせないメロディで東アジアの異国情緒を醸し出していた。
21世紀のいま、こんな映画は良くも悪くも作れないだろう。