私の中のあなた
2009年/アメリカ
普遍的なテーマ「家族の絆」を丁寧に描いたN・カサヴェテス
総合 85点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 85点
音楽 80点
ジョディ・ピコーのベストセラー小説を「きみに読む物語」のニック・カサヴェテス監督が、難病の長女を巡る一家の葛藤を繊細でやさしい眼差しで描いた家族のドラマ。
いきなりアナ役であるアビゲイル・ブレスリンの「姉のドナーとして生まれてきた」というショッキングなナレーションが始まるこのドラマは、臓器移植問題という思いテーマを包含しながら社会派的切り口ではなく普遍的なテーマである「家族の絆」を丁寧に描いている。
骨髄性白血病に侵されたケイトの命を救うため遺伝子操作で生まれたアナ。11歳のとき腎臓移植を拒否し両親を訴訟するという展開がこのドラマを牽引して行く。
監督を父(ジョン)に大女優(ジーナ・ローランズ)を母に持つカサヴェテスは死に直面した家族がどのような想いで行動するのかを追いかけて映画化している監督。「ジョンQ-最後の決断ー」では難病のこどもを救うため病院に立てこもる父親を、「きみに読む物語」では年老いて認知症になった妻を最後まで見守る夫の視点から語られている。本作は家族全員の視点で描かれていて、その膨らみが増す分フラッシュ・バックによる構成が前後関係を煩雑にしている。監督自身はリリカルな雰囲気を出すためと言っているが、もっと単純に時を追っていったほうが良かったのでは?
出演陣は全て好演している。とくにアナのA・ブレスリンとケイトのソフィア・ヴァージリヴァの姉妹が上手い。A・ブレスリンは「リトル・ミス・サンシャイン」で米アカデミー賞候補になったほどの実力者だが、S・ヴァージリヴァは複雑な娘心を見事に表現して観客の涙腺を刺激して止まない。そしてキャメロン・ディアスは弁護士を辞めて盲目的に娘の命を救うため立ち向かうタフな母親を、ノー・メイク、スキン・ヘッドで熱演し芸域を広げた。
脇を固めるジェイソン・パトリックは優しい眼差しで見守りながら大事なときは毅然とした理想の父親像を、アレック・ボールドウィンは自身の病気を隠し法より人間の尊厳を大切にする弁護士役を、ジョーン・キューザックは従来のコミカルなイメージとは間逆の娘を事故で失った判事役を好演。それぞれが、この心温まるドラマを盛り上げている。
原作とは違う脚本にカサヴェテスのこだわりが見えるが、エンディングは丁寧過ぎた気がする。