晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『あゝ結婚(1964)』 80点

2012-01-26 14:49:51 | 外国映画 1960~79

あゝ結婚(1964)

1964年/アメリカ

S・ローレンの魅力を堪能できる人情喜劇

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

イタリアの巨匠ヴィットリア・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニの黄金トリオ2作目の人情喜劇。前年「昨日・今日・明日」1話で逞しいナポリ女ぶりを見せたローレンがさらにしたたかな女を演じ、ラヴ・コメとは一味違うコメディとシリアスなドラマが混在するストーリー。貧しさゆえ17歳で娼婦となったフィルメーナと女好きな放蕩息子ドメニコの22年間を描き、S・ローレンの女優としての魅力がタップリ堪能できる。
冒頭フィルメーナが過労で倒れ男たちに家へ運ばれドメニコが駆け付けるシーンがいかにもナポリ的。医者を呼ぼうとするドメニコにフィルメーナは神父を呼んでくれという。
ここでドメニコが回想する。出会いは戦時中爆撃に遭って怖くて震える17歳。終戦後店のNO.1となって再会した19歳で同棲。フィルメーナは実家で母親の介護をさせられ、菓子店の経営まで任され使用人同様の扱いを受けるが、ドメニコは家に寄り付かず、たまにふらりと戻るだけ。おまけに店の若い娘と結婚しようと目論んでいる。
どう考えてもドメニコは分が悪い。身勝手で男のずるさと、どこか哀れで滑稽なイタリア男を演じたマストロヤンニの面目躍如。
フィルメーナは仮病で、神父を呼んだのは結婚詐称だった。ここで彼女の回想が場面転換となり、驚きの?真相が明らかになってゆく。いままで100%同情していたフェルメーナの打算的なしたたかさに、同情というより女の強さを色濃くした生命力を感じる。
いままで泣いたことのない女が「幸せでないと泣けない」というS・ローレンは、自身の生い立ちを重ねていたのかもしれない。
黄金トリオが6年後、名作「ひまわり」を誕生させるが、本作もなかなか味わい深い作品である。


『グラン・ブルー 完全版~デジタル・リストア・バージョン~』 80点

2012-01-21 15:26:44 | (欧州・アジア他)1980~99 

グラン・ブルー 完全版~デジタル・リストア・バージョン~

1988年/フランス=イタリア

リュック・ベンソンの想い入れが詰まった出世作

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

熱狂的なファンを持つリュック・ベンソンの原点とも言うべき、想い入れがたっぷり詰まった作品。自分にとってのベンソンは「ニキータ」「レオン」で、もっと若かりしときの出世作ともいえる本作は純粋な感動とはいうより、<完全版でデジタル・リストア・バージョンと銘打った訳が理解できた>青春ドラマだ。
実在した伝説のフリー・ダイバーであるジャック・マイヨールのドキュメント映像は何度か観ているが、フィクションである本作がヒットしたことは幸せだったのだろうか?アドバイザーとしてクレジットされているので満足していたと信じたい。
潜水具を使わず深さを競うフリーダイバーの2人は幼な馴染みのジャックとエンゾ。ライバルであり親友でもあるが明るいイタリア男で世界チャンピオンに生き甲斐を感じるエンゾに対し、イルカと友達になり一晩中海で戯れる静かなジャック。性格は正反対だ。マンマに愛され弟を可愛がるエンゾと両親を亡くした孤独なジャックは環境も対照的。そのジャックと運命的に出逢ったNYの保険調査員ジョアンナとの恋も、結末が予測できそう。
美しく壮大なギリシャやシチリアの海の青さと海の底の暗黒の世界は見事なコントラストを見せている。そして3.11を知ってしまったあと<海の怖さ>も感じざるを得ない。
ジャックとジョアンナの恋の経緯が多く盛り込まれた本編は監督の想い入れがあるにせよ168分は如何にも長い。「グレート・ブルー(120分)」「グラン・ブルー オリジナル版(132分)」のほかにも米公開など何作もあるこの作品は、リュック・ベンソンとともにエンゾを演じたジャン・レノの出世作でもあった。それほど彼のキャラクターが強烈だともいえる。


『ランジェ公爵夫人』 80点

2012-01-19 15:18:07 | (欧州・アジア他) 2000~09

ランジェ公爵夫人

2006年/フランス=イタリア

バルザック作品を映像化した名匠J・リヴェット 

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆75点

「美しき諍い女」の名匠ジャック・リヴェットがバルザックの原作を忠実に映画化している。19世紀ナポレオン亡きあとルイ18世王政復古時代の貴族社会が舞台。フランス軍がスペインへ侵攻したときの将軍モンリヴォーは歓迎会を断り何故か修道院で唯一のフランス人修道女テレーズとの面会を強要する。2人は恋人同士だった。
ここから5年前パリの社交界での出逢いへさかのぼる。舞踏会で恋の駆け引きを楽しんでいるランジェ侯爵夫人(ジャンヌ・バリバール)とアフリカから帰国した無骨で直向きな軍人モンリヴォー(ギョーム・ドパルデュー)は傍から見ても危なっかしい。恋愛を頭で考える夫人と身体で愛そうとする将軍との恋の駆け引きは、支配者が入れ替わる恋愛のバイブルのような展開。映像化が難しいのでは?と思わせるバルザック作品をリヴェット監督はカット替わりを字幕でつなぐ緻密な構成と時代を再現した衣装・家具調度とともに見事な世界を披露してくれた。BGMを使わず、足音やドアのきしむ音、ろうそくの明かり、暖炉の火が臨場感や心の内面を映し出している。
ヒロインを演じたJ・バリバールは華やかさは感じないが色とりどりのコスチュームを着こなし、聡明な貴婦人の雰囲気が溢れていた。将軍のドパルデューは堂々たる体躯に恋に悩む苦渋を情感たっぷりな表情で好演していて早死にしたのがなんとも惜しい。バイク事故で右足を義足にしたことを役柄に活かした靴音と歩く姿が印象的。健在なら父親と並ぶフランスを代表する俳優になったことだろう。時代を窺わせる伯父・伯母役のミシェル・ピコリとビュル・オジエの存在感もこの作品には欠かせない。
当初ヌーヴェルバーグの旗頭と崇められた名匠渾身の2時間17分をフランス文学の世界にたっぷりと浸ることができた。


『突然炎のごとく』 80点

2012-01-18 17:48:17 | 外国映画 1960~79

突然炎のごとく

1962年/フランス

色褪せないトリュフォーの長編3作目

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

映画評論家だったトリュフォーが本作を作りたいために監督になったというほど思い入れのあった長編3作目で彼の代表作といってよい。
オーストリア生まれのジュールとフランス人のジムはモンパルナスで暮らす親友。アドレア海にある彫刻像に良く似た女性カトリーヌに出会う。
ナレーションでテンポ良く進むストーリーは映像美に溢れ、2人を翻弄する奔放な女性カトリーヌの女王のような振る舞いが3人のこれからを暗示するよう。
ヌーヴェル映画の代表作でもある本作は従来の映画における常識を覆すストーリーと映像といわれ世界中の映画界に衝撃を与えている。この作品がなかったらアメリカン・ニューシネマの「明日に向かって撃て!」も生まれなかっただろう。男2人が親友で女一人の構成や自転車のシーン、挿入歌など似た部分も多い。何よりラウル・クタールの映像によるアイリス・ショットやストップ・モーションは当時とても斬新だった。
原題は主人公2人「ジュールとジム」だが邦題もヒロイン・カトリーヌを表現していて言い得て妙。
扮したジャンヌ・モローはこの作品で忘れられない女優となった。男装したり、セーヌ川に飛び込んだり、冷たい表情が一変して豊かに豹変したりファムファタルぶりは女そのものを体現している。まさにジュール(オスカー・ウェルナー)がいう「彼女は美しくない。聡明で誠実でもない。だが女そのものだ。」にぴったり。ジム(アンリ・セール)は女性経験も豊富でジュールほど一途ではないが、婚約者がいながらカトリーヌを忘れることができない。2人は男の代表的な象徴でもある。
第一次大戦後3人が一緒に住む山荘は、不安定な関係でありながら友情と愛情が一瞬均衡が保てた幸せの絶頂だったのかもしれない。


『シルバラード』 75点

2012-01-13 15:09:53 | (米国) 1980~99 

シルバラード

1985年/アメリカ

マカロニから戻ったウェスタン 

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★☆☆70点

ローレンス・カスダンが製作・監督した正統派西部劇。マカロニから戻ったウェスタンという雰囲気。西部の街シルバラードに集結した4人の男が悪徳牧場主を倒すため決闘するストーリー。歴代西部劇の名シーンを連想させるシークエンスが随所にあって往年の西部劇ファンが喜びそう。
マカロニ・ウェスタンが一人のヒーローが圧倒的に多かったのに対し、本作はケビン・クライン、スコット・グレン、ケビン・コスナー、ダニー・クローバーの4人がほぼ均等に出てくる。なかでも冷静だが実は人情家ペイドンのC・クライン、家族愛溢れる正義漢エメットのS・グレンが中心。それに若くて無鉄砲なエメットの弟C・コスナー、故郷へ戻る黒人ガンマンのマルのD・クローバーが絡む。友情・裏切り・家族愛・恋愛など盛り沢山だが、その分散漫な感じも否めず133分はちょっとまどろっこしい。
インパクトに欠けたのは、悪役のボス・マッケンドリック役のレイ・ベイカー。見せ場が少なく他人の土地を乗っ取り放火殺人という悪行の割に目立たない。むしろ街の顔役で保安官役コッブのブライアン・デネヒーが用心棒の仲代達也のような存在で小悪人として目立つが、肝心の決闘が盛り上がらず平盤だ。
荒涼とした大地を疾走する馬や幌馬車・酒場など舞台設定は充分なだけに、シナリオをもうひと工夫しスリム化すれば、テンポの良い西部劇の佳作として記憶に残る作品となったことだろう。


『ジャッカル』 70点

2012-01-12 17:14:54 | (米国) 1980~99 

ジャッカル

1997年/アメリカ

ハリウッドらしい展開を楽しむ

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★★☆75点

フレデリック・フォーサイスの小説を映画化した「ジャッカルの日」のハリウッド版。随所にリメイクを感じさせるが、別物として観た方が楽しめる。
最大の売りはブルース・ウィリスとリチャード・ギアの2大スターの共演。いまではそれほどでもないが、当時は大物暗殺者ジャッカルにB・ウィリス、ジャッカルに恨みを持ち顔をしっているIRAテロリストにR・ギアという役の意外性が新鮮だった。モスクワ・ヘルシンキ・モントリオール・ヴァージニア州・ワシントンD・Cと舞台は移るがストーリーは割とストレート。弟をFBIに殺害されたチェチェン・マフィアのドンの依頼で米要人殺害を引き受けたジャッカルの殺害計画とそれを阻止するためFBIの取った措置が交互に映されクライマックスへと進む。
主演の2人ではB・ウィリスが静かな大物暗殺者らしい雰囲気が出ていた。カツラ・髭・メガネの変装がいまいちだが観客には分かり易い?。これを機に敵役が続く彼にはダイハード・シリーズで沁みついたイメージを払しょくしたかったのだろう。対するR・ギアは何でも器用にこなす俳優だが、IRAテロリストには見えなかった。その分元恋人マチルダ・メイやロシア内務省の女性ダイアン・ヴェノーラを絡ませその優しげな風貌を活かす役ドコロとなっている。おまけにジャッカルに「お前は女を守れない男だ」といわれこれがキイ・ワードとなる。
適役だったのはベテラン、シドニー・ポアチエ。FBI副長官が現場のリーダーとなって大活躍するのは不自然とはいえなくもないが、彼が演じると納得してしまう。
シナリオには突っ込みどころが多々あるもののリモコン付きのマシンガンといい、派手なアクションもあって飽きさせない展開の124分だった。気の毒だったのは台座づくりを請け負ったジャック・ブラック。試し撃ちの標的にされるシーンが妙に印象に残った。


『瞼の母('62)』 85点

2012-01-09 13:33:18 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

瞼の母('62)

1962年/日本

加藤泰・錦之助コンビで究極の股旅映画

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

長谷川伸の原作は昭和初期の歌舞伎で六代目菊五郎が演じて一躍有名となって以来、新国劇(島田正吾)・映画(片岡千恵蔵)・歌謡曲(三波春夫など)で何度も演じられている。今まで観たなかで、この作品は最高位にランクされる出来。思春期に映画館で観て以来、何度か観るたびに同じ場面で涙した自分に今更ながら驚かされる。
錦之助の哀愁を帯びた番場の忠太郎を演出した加藤泰の才能は、翌年「関の弥太っぺ」を演出した山下耕作と並んで股旅ものの頂点といえる本作で見事に開花。独特のカメラアングルは冒頭の立ち回りで従来の東映時代劇とは違う新鮮な印象を持った。撮影・坪井誠、音楽・木下忠二のスタッフも絶妙の仕事ぶり。
五歳のときに生き別れした母を訪ねて旅を続ける忠太郎は、懐に百両を大事にしまって決して手をつけないでいる。再会した母がいい暮らしをしていれば良いが、もしも暮らしに困っているようならとの想いである。弟分・金町の半次郎(松方弘樹)の母(夏川静江)に手を添えてもらったとき思わず母の温もりを想像したり、橋のたもとで三味線を弾いて物乞いをする老婆(浪花千栄子)や老夜鷹おとら(沢村貞子)をもしや母親では?と尋ねるプロセスを経て実の母おはま(木暮実千代)に出会ったからこそ盛り上がるのだ。ベテラン女優の達者な演技が、それぞれ見せ場をつくって母を恋しがる忠太郎を際立たせている。


『二重誘拐』 60点

2012-01-08 16:13:41 | (米国) 2000~09 

二重誘拐

2004年/アメリカ

極限のとき、夫婦・家族のあり方を問う心理劇 

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 60

ストーリー ★★☆☆☆50点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★☆☆☆50点

ビジュアル ★★★☆☆60点

音楽 ★★★☆☆60点

「インサイダー」のプロデューサー、ピーター・ジャン・ブレッジが母国オランダで起きた実在の事件をもとに自ら監督を務めた誘拐劇。
レンタカービジネスで成功を収めた実業家が公園管理の仕事をしている平凡な男に誘拐される。2人の子供に恵まれ妻と暮らす幸せな生活を脅かされた男と妻の実家に同居する肩身の狭い男の接点は30年前の職場で交わした会話以外何もない。
誘拐されたウェインを演じたロバート・レッドフォード、犯人アーノルドを演じたウィレム・デフォーの静謐な心理劇を縦軸に妻アイリーンを演じたヘレン・ミレンの夫婦・家族愛の心の揺れ具合を横軸とした演技比べが見どころ。
原題は「THE CLEARING」なので邦題とは無関係で、3人が今までの人生を清算するという意味か?
狙いはとても面白いが明らかに脚本の練り不足と編集ミスで3人の演技も実らなかった。なかでもH・ミレンは健闘したが、R・レッドフォードの存在感がマイナスとなっている。無名の俳優のほうがミスリードにならなかったように思う。


『サラの鍵』 80点

2012-01-07 13:20:41 |  (欧州・アジア他) 2010~15

サラの鍵

2010年/フランス

語り継がれることの大切さ

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

ナチス占領下のフランスがユダヤ人迫害をした「ヴェルディヴ(冬期競輪場)事件」をテーマにした作品では「黄色い星の子供たち」が印象に残っているが、原作はタチアナ・ド・ロネのベストセラー。
10歳の少女サラが辿る過酷な運命と60年後真実を明らかにすることで自分の人生を見つめてゆく雑誌記者ジュリアを交錯させながらミステリータッチのような切り口で描いている。
42年パリで行われた一斉検挙の朝、サラは咄嗟の機転で弟を納戸に隠し鍵をかける。すぐ帰れるはずが親子が離れ離れとなり収容所送り。それでもサラは弟が心配で脱走を試みる。
フィクションなので現実にはありえないのでは?というシークエンス(収容所の監視員、命懸けで助けてくれた老夫婦)があるものの、フィクションだからこそそうあって欲しいと願わずにはいられない。サラを演じたメリュジーヌ・マヤンスの大人を凝視する真っすぐな眼差しは、何よりも心を揺さぶられる。
NY生まれのジュリアがパリで取材を始めたヴェルディ事件は若い同僚にはスペルも分からないほど存在が風化しつつあって歴史を紡ぐことの難しさを感じる。これは今の日本人にも言えることで決して他人ごとではない。人種問題も無縁ではなく、明治以降の在日外国人への対応は大同小異では?
ジュリアは45歳で身ごもり、新しい命に胸を躍らせるが夫は望んでいない悩みを抱えながらNY、フィレンツェへと憑かれたように取材を重ね14歳の娘を心配させてしまう。夫は中国との商談で家族は離れ離れとなるなど現代の家族の在り方が絶妙なスパイスとなっている。ジュリアを演じたクリスティン・スコット=トーマスの悩みを抱えながら凛としている抑えた演技はもっとも得意なジャンルで、ここでも女性の共感を誘う。少し45歳の役には老けて見えたのは酷な注文か?
<真実を知ることの是非はジャーナリズムの本質を問うこと>だが、自身や周囲を傷つける代償を払わなければならない。ジュリアは他人の生活に立ち入り傲慢だったという反省とともに自身の人生にも区切りをつける。
37歳のジル・パケ=ブランネル監督は’95シラク大統領の演説でユダヤ人迫害があったことを知る。語り継がれることの大切さを再認識させられた作品でもあった。