晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『スナッチ』 80点

2008-12-29 10:47:19 | (欧州・アジア他) 2000~09

スナッチ

2000年/イギリス

全編ユーモアたっぷりなノンストップ・ムービー

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

マドンナとの結婚で話題になったガイ・リッチーの監督2作目。前作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バベルズ」のスタイルを踏襲したユーモアたっぷりなノンストップ・ムービー。
ターキシュ(ジェイソン・ステイサム)はロンドンの下町で非合法ボクシングのプロモーターをしている。相棒のトミー(スティーヴン・グレアム)はスロット・マシーンを経営する気のいい弟分。暗黒街のボスでノミ屋のブックトップ(アラン・フォード)に八百長を仕掛けられる。
フランキー・フォー・フィンガー(ベニチオ・デル・トロ)の強盗団はアントワープのダイヤ商から86カラットのダイヤを盗み出し、NYのボス、アビー(デニス・ファリーナ)へ届ける途中ロンドンへ立ち寄る。
ダイヤを巡る大騒動が冒頭の無関係なハナシがテンポ良く進み、最後は一致するまで愛すべきキャラクターが続々登場する。ジョン・マーティの音楽に乗ったポップでスピーディな展開が、この映画でポスト・タランティーノといわれる所以か?前作を観ていたブラッド・ピットが安いギャラで出演を快諾したのは、ハリウッドとは違う新鮮な刺激を実感したかったからだろう。スラングがいっぱいの台詞とお国柄で言葉遣いが違う際どさを乗越えて、楽しくエンディングまで過ごすのが一番!


『華氏451』 80点

2008-12-26 16:23:54 | 外国映画 1960~79

華氏451

1966年/イギリス

読書好き、SF嫌いのトリュフォーらしい作品

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

レイ・ブラッドベリの原作をフランソワ・トリュフォーが監督。「マタハリ」のジャンルイ・リシャールとの共同脚本によるSF映画。
近未来の消防士モンターグ(オスカー・ヴェルナー)が出動した家には禁止されている書物があった。その本を火炎放射器で焼くのが消防士の役目。仕事帰りのモノレールで一緒になったクラリス(ジュリー・クリスティ)は妻(J・クリスティ=2役)とそっくり。昔、消防士は火を消すのが仕事で、あなたには相応しくない仕事だと言う。
情報は、イヤホンを付けた貝の耳のラジオや、家での娯楽は壁に取り付けた大型画面に流れる画像と音声のみ。本の所持を禁止されている近未来の焚書のハナシだが、原作者のブラッドベリは「国家の検閲ではなくTVによる文化の破壊」であるという。携帯・パソコンの情報が主力となりつつあり、TVの情報力は落ちつつある今少し違和感があるものの、思考力・記憶力を失うことへの警鐘は充分説得力がある。
ロボットが出てくるような宇宙もののSF嫌いで読書好きのトリュフォーらしく、この映画はかなり人間的。そして「めまい」のバーナード・ハーマンが音楽を担当しているせいか、どことなくヒッチコックのサスペンスにも雰囲気が似ている。
フランク・ダラボン監督がリメイクを準備中でトム・ハンクス起用を考えていたが、どうやら別人になるらしい。どのようになるのか今から楽しみにしている。


『厳重に監視された列車』 85点

2008-12-20 15:18:52 | 外国映画 1960~79

厳重に監視された列車

1966年/チェコスロヴァキア

コミカルな要素があると悲劇が際立つ

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

チェコの人気作家ボフミル・フラバルの短編をもとに、当時28歳だったイジー・メンツェルの長編デビュー作。’67米アカデミー賞外国映画賞を受賞した。同じコンビの「英国王給仕人に乾杯!」上映を記念して限定劇場公開された。
折りしもナチスドイツ占領下チェコの田舎の村に住むミシェロ(ヴァーツラフ・ネツカーシュ)は、将来楽をしたいというだけで鉄道員だった父親の職を選んで見習いとなる。彼には、車掌のマーシャ(イトカ・ベントヴァー)というガールフレンドがいるが、男として自信がない。駅の先輩フビチカ(ヨゼフ・ソルム)は女好きで、電信技士のズデニチカ(イトカ・ゼレノホルスカー)といちゃついて、鳩好きな駅長を悩ませている。
メンツェルは「つながれたヒバリ」「プラハの春」などチェコを代表する監督だが、ソ連の弾圧によって製作が禁止されたこともあって寡作である。ユーモアを随所に織り込んだ若者の青春を描きながら、コミカルな要素があるほど悲劇性が増すという作風が満ち満ちている。紛れもなく反戦を訴えているが大声で反戦を叫ばずに、深刻なことは返ってジョークを交えたほうが効果的だということを実証してくれた。人間描写・構成・台詞・映像と、どれをとっても感心させられる佳作である。


『プレタポルテ』 75点

2008-12-18 11:27:07 | (米国) 1980~99 

プレタポルテ

1994年/アメリカ

アルトマン得意のシニカルな群像劇も空回り

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆80点

「ザ・プレイヤー」「ショート・カッツ」とシニカルな群像劇を続けて世に出し油が乗り切っていたロバート・アルトマンが、パリコレをテーマにファッション業界とメディアの内幕を痛烈に皮肉っている。
プレタポルテ協会長オリヴィエ・ド・ラ・フォンテーヌ(ジャン・ピエール・カッセル)はネクタイが入った郵便を受け取る。同封のメモにはそれを締めてシャルル・ド・ゴール国際空港へ来て欲しいとあり、指定日時に現れる。空港にはパリコレの関係者達が次々到着していた。
アルトマン得意の群像劇で豪華キャストによる人間模様が繰り広げられ相変わらずの賑やかさだが、今回は残念ながら空回りしていた。
マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンの名コンビも往年の冴えが見られないし、デザイナー役のアヌーク・エーメもファッション界に衝撃を与えるショーを演出するプロセスが良く見えない。もう一組のティム・ロビンスとジュリア・ロバーツもホテルの一室で同じことの繰り返し。
他にキム・ベイシンガーのレポーター役やデザイナー役のフォレスト・ウィテカーが目立っていたが狂言回しと脇役の一人の役割でしかない。
感心したのは、これ程批判的なストーリーにも関わらずパリ・ファッション協会の全面協力を得られたこと。ゴルチエ、ソニア・リキエル、イッセイ・ミヤケなど実際の一流デザイナーとそのショーのシーンが挿入され、ナオミ・キャンベル、川原亜矢子などのトップモデルが出ている。シェール、ハリー・ベラホンテも本人役で出てくる賑やかさ。R・アルトマンの底力を見る想い。
15年前のファッション業界を懐かしんで思い出に浸るには絶好な映画であるが、エンディングのショーは??どうも譜に落ちない。


『あの頃ペニー・レインと』 80点

2008-12-15 15:13:12 | (米国) 2000~09 

あの頃ペニー・レインと

2000年/アメリカ

邦題がぴったりな青春ドラマ

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆85点

「ザ・エージェント」のキャメロン・クロウが73年ロックグループをツアー取材した実体験をもとに監督・脚本化した青春ドラマ。米アカデミー脚本賞受賞作品。
厳格な母エレン(フランシス・マクドーマンド)に溺愛され弁護士志望の優等生ウィリアム(パトリック・フュジット)は、姉アニタ(ズーイー・デシャネル)の残していったロックのアルバムを聴きすっかりのめり込んでしまい、カリスマ・ロックライターのレスター・バングス(フィリップ・シーモア・ホフマン)に取材を依頼される。
ブレイク寸前のスティル・ウォーターのツアーに同行取材するうち、メイン・ギタリストのラッセル(ビリー・クラダップ)に気に入られる。そこには自称バンドエイドのペニー・レイン(ケイト・ハドソン)がいた。
C・クロウの自伝的映画なので当時のロック事情の裏表がとてもリアル。実際少年時代に「ローリング・ストーン誌」の記者としてレッド・チェッペリンを取材しているし、カリスマ・ロックライターのレスターも実在の人物。ペニー・レインのようなグルーピーの生活も目撃していたようだ。
C・クロウの親友ピーター・フランプトンがテクニカル・コンサルタントについただけあってライブ・シーンは本物の迫力。サイモン&ガーファンクル、ザ・フー、イエス、ロッド・スチュアートなどロックファンならずともお馴染みの曲が流れ70年代の臨場感が再現されるのも懐かしい。
F・マクドーマンドとP・S・ホフマンの2人のアカデミー賞俳優が存在感を見せるが、何といってもケイト・ハドソンの初々しい魅力が印象的。原題は「オールモスト・フェイマス」だが、邦題のほうがぴったりくる。


『バッファロー'66』 85点

2008-12-14 13:07:59 | (米国) 1980~99 

バッファロー'66

1998年/アメリカ

V・ギャロのセンスを存分に発揮した

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

マルチ・アーティストのヴィンセント・ギャロが監督・主演・共同脚本・音楽を手掛けた異色のラヴ・ストーリー。
5年振りに出所して故郷のバッファローへ帰るビリー・ブラウン(V・ギャロ)。途中、実家へ電話するが、高級ホテルに泊まっているとか妻はファースト・クラスの飛行機で食べ過ぎたとかウソを重ねる。電話代を借りたダンス・スクール帰りのレイラ(クリスチナ・リッチ)を拉致し、両親(アンジェリカ・ヒューストン、ベン・キャザラ)の前で妻のふりをさせる。
あまり期待しないで観たが、思いのほか拾い物の映画。一見乱暴なストーリーで暗いハナシを想像させるが、ビリーの何処となく間が抜けていてナイーブな優しい<人となり>が見えてくると、女性はレイラでなくても母性本能をくすぐられ、守ってやりたい気分にさせられるのだろう。
彼の人格形成に欠かせない両親の特異性と無関心な様子の描き方が抜群のセンス。食卓でのカット割りはその象徴であろう。
随所で見せるV・ギャロの片鱗は、ボーリングや音楽で垣間見られるが何よりも素晴らしい映像美。最初の刑務所の遠景から只者ではないと思わせるカットである。
C・リッチは美人女優ではないが、芸域の広い女優で役作りにプロ魂を感じ、なかなかの好演。マドンナのレイラ(C・リッチ)は小柄で豊満な体で包容力がある。ビリーの片想い・ウエンディ(ロザンナ・アークェット)とは両極にあるタイプ。人生にケリをつけるために帰郷したビリーにはレイラが天使に見えたのだろう。
他人が信じられなくなったり、気持ちが落ち込んでしまったとき心を癒してくれる。


『エコール』 70点

2008-12-13 11:42:37 | (欧州・アジア他) 2000~09

エコール

2004年/ベルギー=フランス=イギリス

ロリータ趣味だけの映画ではないが...。

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★☆☆70点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

19世紀末の作家フランク・ヴェデキントの「ミネハハ(笑う水)」を原作に、ギャスパー・ノエのパートナーであるルシール・アザリロヴィックが監督したミステリアス。今年再スタートを切ったゆうばり国際ファンタスティック映画祭の05年特別賞受賞作品。
森に囲まれた建物に6歳の少女イリスが棺に入って裸のまま運ばれる。ここは外部から閉ざされた男子禁制の学校で、最年長が12歳の6人が屋敷内で暮らしている。授業は生物とダンスのみで2人の女教師しかいない。
イリス以外の少女は8歳のアリスと12歳のビアンカ。他にボートで脱走しようとして溺死したローラがいる。
女の子が幼女から少女へ移る、女性の成長過程を描いているが、幻想的な雰囲気で何とも不思議な映画である。
少女の水浴びや脚の美しさを異常に強調したシーンのロリータ趣味だけの映画ではないが、時代や状況説明がないまま物語は進行し、観客のオープンな解釈に委ね過ぎのきらいがあった。
少女達はオーディションで選ばれたというが、ビアンカが可愛い。イリスは最後まで男の子としか見えなかった。2人の女教師エヴァ(マリオン・コティヤール)とエディット(エレーヌ・ドゥ・フジュロール)が言う教え、<「絶対服従こそ幸せ」「女の子は可愛らしく、美しく、男に選ばれるのが幸せ」>が、イノセンスな少女には不釣合いに感じて消化不良のまま終わってしまった。


『その木戸を通って』 80点

2008-12-08 15:32:09 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

その木戸を通って

1993年/日本

山本周五郎の世界を市川崑が映像美で魅せてくれた

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

今年の2月、享年92歳で急逝した市川崑監督が山本周五郎の短編を93年に映画化。ハイビジョン・マスターを35ミリに変換してヴェネチア・ロッテルダム国際映画祭で好評を博した。15年を経て、今年日本で劇場初公開。
平松平四郎(中井貴一)は娘・ゆかの嫁入りを迎え、17年前を思い出す。城代家老(神山繁)の娘・ともえと婚約中で、将来の出世を約束されていた。親代わりの中老・田原権右衛門(フランキー堺)に呼び出され家にいる娘は誰なのか?と詰問を受けるが、心当たりがない。
市川崑監督は、ちょっぴりミステリアスな山本周五郎の原作を、忠実に独自の映像美で再現して魅せてくれた。ヒロイン浅野ゆう子には「ふわっとした感じ」で演技して欲しいと注文を出したが、当時トレンディ・ドラマで日の出の勢いの彼女に新境地を切り開かせている。この上映が完成直後だったら彼女の女優人生は変っていたかもしれない。
中井貴一はコミカルな演技が多少オーバーな気もするが、思いやりのある優しい男を等身大に表現して初の老け役も無難にこなしている。
故人となってしまったフランキー堺や岸田今日子が、相変わらず達者な役者振りで正統派ドラマを支えている。
時代劇なのに殺陣が一切ないし、剣豪も悪役も出てこない。男から見て、雪女を思わせる理想の女性像を描いたメルヘンを、92分の程良い長さでジックリと魅せてくれた。日頃のTVドラマについてゆけないヒトにお奨め。


『ヤング@ハート』 90点

2008-12-07 12:17:30 | (欧州・アジア他) 2000~09

ヤング@ハート

2007年/イギリス

死の瞬間まで生きることの大切さを教えてくれる

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★★95点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆90点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★★95点

米・マサセッツ州ノーサンプトンで結成された平均80歳のロックコーラス・グループを、英のスティーヴン・ウォーカー監督が6週間あまりを追ったドキュメント。ロス映画祭を初め観客賞を多数受賞している。
オープニングからドギモを抜かれる。92歳の花形スター・アイリーンがザ・クラッシュの歌をシャウト。彼女の人柄が見えてくるインタビューが続く。脊椎狭さくで歩行すら儘ならないスタン(75歳)、セックス・ビーストのあだ名を持ちオープンカーで吹っ飛ばすスティーブ(77歳)、小型車で練習に通うレニー(86歳)など次から次へ現れるヒトがさまざまな人生を歩んできた。
見逃せないのは、このグループを’82の発足から指導してきたボブ・シルマン(54歳)。クラシックやオペラ好きでロックとは無縁な老人達にソニック・ユース、ボブ・ディラン、トーキング・ヘッズ、ジェームス・ブラウンなどを根気良く時には厳しく時には暖かく教えて行く。まさに素晴らしいプロデューサーでもある。
年1回行われるコンサートに新曲を入れ悪戦苦闘するメンバー達を追いながらアクシデントにも見舞われる。最大の事件はメンバーの天才シンガー・ジム・ベノア(83歳)の死。ポスターのメインで公演1週間前に亡くなったこと。ドキュメントならではのハプニングだが、映像化することにためらいや家族の反対は無かったのだろうか?
タブーである、<老い><孤独><病>そして<死>までも忠実に描きながらも決して暗くはならない。失うものは何も無いと言いながら「死の瞬間まで生きることの大切さ」を教えてくれ、パワーを貰える。
この映画では刑務所慰問で「フォーエバー・ヤング」を歌い受刑者と交流を深めるが、観客も癒され、涙を誘う。
そして元メンバーで特別ゲストのフレッドがデュエットする予定で亡くなったボブのために捧げた「フィックス・ユー」、全員が大苦戦した「イエス, アイ キャン キャン」が何時までも耳に残って離れない。