・ 痛快アクションで本領発揮のメル・ギブソン。
私生活で何かとお騒がせのメル・ギブソンが原点に却って製作・脚本・主演したメキシコに実在した刑務所を舞台に描いた痛快アクション。監督のエイドリアン・グランバーグはM・ギブソンの助監督だったから、彼のワンマン作品と言って差し支えない。
マフィアから大金を奪ってメキシコへ逃亡中に失敗し、史上最悪の刑務所という形容詞を持つエル・プエブリート刑務所だった。
場末の盛り場のような雰囲気の刑務所は犯罪者が家族と同居していて、麻薬取引・売春まで行われている非現実的な社会。まさに<小さな町は大きな地獄>そのもの。
56歳のM・ギブソンが、最初のカーチェイスから爽快なラストシーンまで「ペイバッグ」の続編を想わせる大活躍。
どのようにして大金を取り戻し脱獄できるか?を観客は期待しながら観ることになるが、どうなろうが心配せず観ることになる。はらはらドキドキ感よりは、M・ギブソン演じる通称<ドライバー>のスーパーマンぶりを楽しむ映画だ。
所内で出会った少年キッドが、刑務所のボスの肝臓移植のドナーであることから、少年とその母親を救うために立ち上がるところが見所。
彼に立ち向かうマフィアのボス・フランク(ピーター・ストーメア)や刑務所を支配する男ハビ(ダニエル・ヒメネス・カチョ)など敵役もいるが恐怖感はあまり感じられなかった。
もっとも彼を悩ませたのはエル・プエブリート刑務所そのものだろう。6000人の囚人が暮らし600人の家族もいたというこの刑務所は、02年軍隊が制圧したという。その雰囲気は充分伝わってきた。