大いなる遺産(1997)
1997年/アメリカ
A・キュアロン監督のアートへのこだわり満載
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 80点
19世紀英国の作家チャールズ・ディケンズの最高傑作といわれる原作を、現代のNYに置き換えたアルフォンソ・キュアロン監督の愛憎劇。
フロリダのガルフ・コーストに住むフィネガン少年は、姉のボーイフレンドで便利屋ジョーに育てられる。ある日、スケッチブックを手にした海辺で脱獄犯(ロバート・デ・ニーロ)を助ける。そして<失われた楽園>と呼ばれる屋敷に住むディンズムア夫人(アン・バンクロフト)と姪のエステラという少女に出会う。
大人になったフィネガン(イーサン・ホーク)とエステラ(グウィネス・パルトロー)はNYで再会し、愛を育むことができるのだろうか?
ミッチ・グレーザーの脚本は、19世紀の英国階級社会の普遍的な愛憎劇を大胆な置き換えと省略によって米国人の孤独を表現している。そこにはキュアロン監督のアートへのこだわりが満載され、フランチェスコ・クレメントの絵画とともに全般に流れる光りと緑の映像美が秀逸。
印象的な水飲み場のキスシーンはその象徴である。美少年(ジェレミー・ジェイムズ・キスナー)美少女(ラクエル・ボーディーン)とディンズムア夫人のトライアングルが絶妙!
E・ホークは一途な若者を好演しているが、G・パルトロウの我が侭で冷酷な美しさに圧され気味。オトコの敵とも言われるエステラも、彼女が演じるとフィネガンと同じ気持ちになってしまう。
A・バンクロフトは厚化粧で隠しきれないほどのシワを堂々と見せ怪演。「卒業」のロビンソン夫人で見て以来の哀れな女振りは健在である。
ロバート・デ・ニーロには、トキドキ裏切られるが今回もそのひとつ。むしろ育ての親・ジョー役のC・クーパーが素朴で愛情豊かなオトコを演じて印象に残る。
金と名誉と幸せを量りにかけたテーマのドラマとしては荒っぽいが、美しい映像を112分楽しめた。