・ 衝撃的な原作を映像化して昇華させた良作。
09本屋大賞のベストセラー、湊かなえの原作を中島哲也が監督したフィクションだがリアリティが潜む衝撃的なストーリー。
「告白」というと宗教的な意味を持ったり、恋愛感情があったりすることを想像するが、本編は中学教師・森口悠子(松たか子)がホームルームで娘を殺したのはクラスの2人であるという衝撃的な<独白>から始まる。現実には起こり得ないはずの約30分をどうとらえるかでこの映画はまるっきり違って見える。
日常のニュースを知る限り、あながち奇想天外な架空の出来事とは言いきれないのでは?
中島監督は原作のテイストを壊すことなく昇華させ、複雑な現代社会に潜む哀しみや憎しみを抱える人間の本質を鋭く描いて、最後まで観客を惹きつける。CMで培った技法を駆使したビジュアル・インパクトの冴えと、映像にぴったりあったBGMは益々磨きが掛かっている。
主演の松たか子は、生徒を指導する立場の教師と、娘を殺された母親という悩ましい役柄に挑戦して、またひとつ芸域を拡げた。人間性を押し殺し、母としての哀しみを振り切って、命の尊さを導いてゆくこの難役を、見事に表現していた。極限の教えは冷たく非情で、ことの善悪を超えていたが...。
少年Bの母親・木村佳乃は、息子を溺愛するモンスター・ペアレントぶりを如何なく発揮。不幸を招くのは周囲が悪いと、絶えず近視眼的な視点で物事を判断してしまうサガで、極端な行動へ走ってしまう。かなり現実に潜んでいそうな母親像を感じさせる好演だ。
なんといってもこの作品を支えたのはオーディションで選ばれた37人の生徒たち。ほとんど演じたというより、普段の中学生のままのような自然な演技で、短略的な殺人を犯してしまう恐怖感を味わうハメになる。とくに少年Aの修哉・Bの直くん・少女Aのみずほの主要3人はそれぞれの個性が出て優れた演出の成果を感じさせてくれた。
温かい思いやりや感動とは程遠く、好きなジャンルではないがこの年上半期ベスト・ワンの邦画であろう。
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