・ J・フォード監督の法廷西部劇。
ジョンフォード監督による法廷西部劇といえば「リバティバランスを討った男」(62)が有名だが、その2年前黒人人種差別をテーマにした法廷西部劇。ジェフリー・ハンター、コンスタンス・タワーズ、ウディ・スロートが共演し主題歌「キャプテン・バッファロー」が邦題となった。原題は「Sergeant Rutledge」
1881.米国アリゾナの陸軍南西地区本部での軍法会議。第9騎兵隊ラトレッジ軍曹(W・スロート)による白人親子殺害容疑の裁判が行われた。弁護に立ったのは彼の上司でもあるカントレル大尉(J・ハンター)だった。
無罪を主張するラトレッジ軍曹の法廷の模様と証人の証言による回想シーンでストーリーが展開していく構成だ。もちろんJ・フォード監督ならではのモニュメント・バレーを背景に迫力在る馬が疾走する騎兵隊とアパッチの戦闘シーンも登場するが、証言からラトレッジの人物像がだんだん明らかになってどう決着するのか?がメインテーマである。
1960年はケネディ政権でキング牧師の活動が始まり公民権運動が活発になっていくときで、その時代を反映して映画界も本作のような映画が製作されている。
J・フォード作品のなかでは異色の西部劇だが、恋愛やコミカルなシーンもフンダンに取り入れ娯楽映画として充分成立している。
成功した最大の要因は<黒人俳優の父>W・スロートの好演である。スタントマンとしてのキャリアも豊富な彼にとって事実上の主演ともいえるラトレッジ軍曹役は代表的作品のひとつとなった。194センチの長身でしなやかな身体で高潔な軍人像にピッタリ。出番も多く「人間として扱って欲しい」と涙する台詞で演技者としてもこの作品を支えている。
主演のJ・ラッシュはヘンリー・フォンダの後継者と言われたが大成せず42歳で早世してしまった。本作では黒人への偏見も無く、恋人役のC・タワーズとのラブ・ストーリーも清潔感があり正統派2枚目俳優らしい演技だった。
コメディ・リリーフ役には裁判長のフォスゲート大佐を演じたウィリス・ボージェイとその夫人で野次馬根性丸出しのビリー・バークが担いベテランらしい持ち味で和ませてくれる。
裁判の終結の唐突さと先住民蔑視は否めないものの、時代の先駆け的な西部劇としてテーマソングとともに記憶に残る良作である。