晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「バッファロー大隊」(60・米)75点

2021-11-22 16:37:32 | 外国映画 1960~79


 ・ J・フォード監督の法廷西部劇。


 ジョンフォード監督による法廷西部劇といえば「リバティバランスを討った男」(62)が有名だが、その2年前黒人人種差別をテーマにした法廷西部劇。ジェフリー・ハンター、コンスタンス・タワーズ、ウディ・スロートが共演し主題歌「キャプテン・バッファロー」が邦題となった。原題は「Sergeant Rutledge」

 1881.米国アリゾナの陸軍南西地区本部での軍法会議。第9騎兵隊ラトレッジ軍曹(W・スロート)による白人親子殺害容疑の裁判が行われた。弁護に立ったのは彼の上司でもあるカントレル大尉(J・ハンター)だった。

 無罪を主張するラトレッジ軍曹の法廷の模様と証人の証言による回想シーンでストーリーが展開していく構成だ。もちろんJ・フォード監督ならではのモニュメント・バレーを背景に迫力在る馬が疾走する騎兵隊とアパッチの戦闘シーンも登場するが、証言からラトレッジの人物像がだんだん明らかになってどう決着するのか?がメインテーマである。

 1960年はケネディ政権でキング牧師の活動が始まり公民権運動が活発になっていくときで、その時代を反映して映画界も本作のような映画が製作されている。
 J・フォード作品のなかでは異色の西部劇だが、恋愛やコミカルなシーンもフンダンに取り入れ娯楽映画として充分成立している。

 成功した最大の要因は<黒人俳優の父>W・スロートの好演である。スタントマンとしてのキャリアも豊富な彼にとって事実上の主演ともいえるラトレッジ軍曹役は代表的作品のひとつとなった。194センチの長身でしなやかな身体で高潔な軍人像にピッタリ。出番も多く「人間として扱って欲しい」と涙する台詞で演技者としてもこの作品を支えている。

 主演のJ・ラッシュはヘンリー・フォンダの後継者と言われたが大成せず42歳で早世してしまった。本作では黒人への偏見も無く、恋人役のC・タワーズとのラブ・ストーリーも清潔感があり正統派2枚目俳優らしい演技だった。

 コメディ・リリーフ役には裁判長のフォスゲート大佐を演じたウィリス・ボージェイとその夫人で野次馬根性丸出しのビリー・バークが担いベテランらしい持ち味で和ませてくれる。

 裁判の終結の唐突さと先住民蔑視は否めないものの、時代の先駆け的な西部劇としてテーマソングとともに記憶に残る良作である。

 

 

「めぐり逢えたら」(93・米)70点

2021-11-07 16:19:06 | (米国) 1980~99 


 ・ 語り尽くされた感のある王道のラブ・コメ。


 「邂逅」(39)をリメイクした名作「めぐり逢い」(57)をヒントに、一人息子と暮らす妻を亡くした男と婚約者のいる新聞記者の出会いをハートフルに描いたファンタジー・ストーリー。原題は「Sleepless in Seattle」
 監督は元ワシントンポスト記者で「恋人たちの予感」(89)の 脚本を書いたノーラ・エフロン。主演は若手コメディアンからの脱皮を図るトム・ハンクスと本作でラブ・コメの女王へと歩み出すメグ・ライアン。

 シカゴに住む建築家のサム(T・ハンクス)は妻を亡くし、シアトルへ8歳の息子ジョナ(ロス・マリンジャー)とふたりで移ってきたが傷心は癒えなかった。
 ボルチモアに住む新聞記者のアニー(M・ライアン)は婚約者ウォルター(ビル・プルマン)とともに実家の両親に引き合わせ、帰りのカーラジオで「シアトルの眠れぬ男」が亡妻の思い出を語るのを聴き涙する。

 「めぐり逢い」はパートナーのいる音楽家と運命的な出会いがあって、2月14日エンパイア・ステート・ビルで再会を約束するというストーリー。テーマ曲「An Affair To Remember」が印象的なすれ違いドラマの代表的な映画。

 本作では偶然というよりかなり強引な出会いだが<パパに新しい奥さんを>とラジオでリクエストする健気で微笑ましい息子の縁結びの行動で緩和されている。
 スヴェン・ニクヴィスト撮影監督による叙情溢れるシアトル、ボルチモアの街並み風景映像とともにスタンダード・ナンバーがオープニングから随所に流れ、ティファニー、プラザ・ホテル、エンパイア・ステート・ビルでエンディングとなるラブ・ストーリーにはもってこいの設定だ。

 今ではSNSで簡単に遠距離で交流が果たせるが、90年代では限られた人以外検索不能だった時代。職業柄のメリットでアニーは探り当ておまけに興信所まで使って人となりを知って取材するという境遇にあったものの、自分の心が揺れる中ストーカー状態に陥るためらいもあり最初の出会いは挨拶のみで失敗する。
 
 サムには恋人候補ヴィクトリア(バーバラ・ギャリック)、アニーには婚約者ウォルターがいるが観客にはお似合いではないことを予め伝えるシーンが用意されている。二人ともいい人だがヴィクトリアはけたたましい笑い声でジョナが懐きそうも無く、ウォルターは誠実だが面白みが無くアニーが心底からときめいていない。

 クリスマスからバレンタインまで冬のラブストーリーとして語り尽くされた感のある王道のラブコメは、時代とともに違和感を持つ若い人も多いと聞く。

 筆者には「めぐり逢い」を始め「危険な情事」「打撃王」「特攻大作戦」などの名画や、「時の過ぎ行くままに」「オーバー・ザ・レインボー」「スターダスト」が随所に流れるだけで懐かしい気分にさせてくれる作品として印象深い。

 N・エフロン、T・ハンクス、M・ライアンのゴールデントリオは「ユー・ガット・メール」(98)で再会を果たすが、本作でジュリア・ロバーツ、キム・ベイシンガー、ミシェル・ファイファー。ジョディ・フォスターなどの候補者に代わって主演したM・ライアンのロマコメの女王最盛期でもあった。