晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『佐賀のがばいばあちゃん』 80点

2007-04-30 11:52:28 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

佐賀のがばいばあちゃん

2005年/日本

がばいばあちゃんには人生の哲学がある

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆75点

島田洋七の自伝小説の映画化。「がばい」とは佐賀弁で「すごい」という意味。昔は何処にでも居たおばあちゃんには、しっかりした人生哲学があった。
広島の母(工藤夕貴)が女手ひとつで2人の息子を育てるのは難しく、叔母さん(浅田美代子)に頼んで佐賀の祖母(吉行和子)に弟・明弘を託す。
がばいばあちゃんには一生貧乏という二文字がついて回ったが、それを吹き飛ばす<明るさと逞しさ>があった。その数年間の暮らしで得た、愛情溢れる人生哲学が随所に流れ、微笑ましい。そして今社会問題となっているイジメ・格差・環境汚染・リサイクルを、難なく超越した生活感に納得させられる。
明弘を3人の子役が素直な演技で分担している。特別出演の三宅裕司が大人になった明弘役で、子供の自分を回想するところに若干違和感があるのが残念。豆腐屋(緒方拳)が指で穴を開け豆腐を半額にするところ、運動会で先生が自分の弁当と交換するところなど周りの大人の思いやりも極めて温かい。
他に島田紳介・山本太郎・洋八が友情出演してこの映画を支えている。
佐賀を去る日、ばあちゃんが「はよ行け。」と言いながらも、姿が見えなくなると堪らず叫んだ「行くな!」が涙をさそう、心温まる作品だ。


『クィーン』 85点

2007-04-29 11:02:52 | (欧州・アジア他) 2000~09

クィーン

2006年/イギリス=フランス=イタリア

人間女王の7日間を見事に表現した

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

スティーヴン・フリアーズ監督ピーター・モーガン脚本で英国皇室と現役首相という、一歩間違えると危険なテーマを見事に映画化した。
’97.8.31ダイアナ元妃がパリで事故死した日エリザベス女王(ヘレン・ミレン)一家は私邸のバルモラル城でバカンスの最中。もはや私人であるダイアナ妃にはノーコメントを貫く筈であった。世論はそれを許さず、新任首相のブレア(マイケル・シーン)が仲介に入る。
米国アカデミー賞を始め主演女優賞を総なめにしたヘレン・ミレンが女王の威厳と孤独な一面を見事に表現している。
そして未だ記憶に新しく現役首相を含め時効になっていない事件を、ここまでリアルに再現できたスタッフに敬服する。
とくに巷間言われるダイアナとの不仲説を裏付けするような、フィリップ殿下(ジェイムズ・クロムウェル)・皇太后(シルヴィア・シムズ)とのヤリトリや皇室廃止論者ブレア夫人(ヘレン・マックロリー)の発言など、良く映画化できたと思うシーンが続出することに驚かされる。
クィーンが唯一涙するシーンが、狩りの途中出会った鹿を、追い込まれた今の自分に重ね合わせたところ。すぐに涙を拭い女王の風格を守る姿が印象に残った。


『クリムゾン・タイド』 75点

2007-04-25 17:59:35 | (米国) 1980~99 

クリムゾン・タイド

1995年/アメリカ

ジーン・ハックマンが適役

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

「トップ・ガン」のドン・シンプソン、ジェリー・ブラックハイマー製作、トニー・スコット監督のサスペンス。デンゼル・ワシントンとジーン・ハックマンがミサイル発射を巡り、潜水艦で対決する。
叩き上げのラムジー艦長(J・ハックマン)とエリート・ハンター副官(D・ワシントン)の対比は類型的ながら、なかなか迫力がある。馬の例えで人種問題をヤリトリするところは如何にも2人を代弁していて面白い。仇役のJ・ハックマンが、主役を食う程適役で印象に残る。
今見ると、良くも悪くも典型的なハリウッド映画らしいエンターテインメント。脚本にも参加したというクエンティン・タランティーノがカメオ出演していたのにビックリ!


『ヒトラー ~最期の12日間~』 80点

2007-04-25 11:57:05 | (欧州・アジア他) 2000~09




ヒトラー ~最期の12日間~


2004年/ドイツ






独裁者の意外な側面と、組織崩壊末期の現実を見る想い





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
85点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
75点





’42秘書としてヒトラーの最期を見たトラウドゥル・ユンゲの手記をもとに、ベルント・アイヒンガー製作・脚本、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督作品。
犬にエサをやったり、女性や子供達に見せる普通の人と変らないところを見せたかと思うと、ベルリン崩壊と第三帝国滅亡を自覚しながらも、軍需大臣に檄を飛ばすヒトラー。地上の悲惨さをよそに、官邸内の人々がこれからの選択をどのようにするかが興味深い。ヒトラーの自殺に殉じるか、大儀名分を立てて生き延びようとするか、自暴自爆となってヤケ酒を煽るかサマザマ。
なかでもゲッペレス大臣一家が幼い子供まで巻き添えにして殉じるサマが痛々しい。夫妻には他の選択の余地が無かったのだ。
「ベルリン天使の詩」のブルーノ・ガンツが人間ヒトラーを演じ、56歳にしては老いが著しい独裁者の最期を再現、ドイツアカデミー賞主演男優賞を受賞した。
何より、この映画をドイツ人が作ったことに価値がある。そしてユンゲ本人が語ったコメント(若かったので真実を知らなかったでは済まされない)に今でも通用する重みがある。






『輝ける女たち』 80点

2007-04-21 18:09:46 | (欧州・アジア他) 2000~09

輝ける女たち

2006年/フランス

人を許すことは時間・空間が必要

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

新鋭ティエリー・クリファ監督が豪華キャストを擁しハートフルな物語を演出。
南仏のリゾート地ニースにあるキャバレー「青いオウム」のオーナー、ガブリエルを巡る人々が彼の死により久し振りに出会う。次々現れる登場人物の相関図を理解するまで落ち着かないが、臨場感溢れる舞台のシーンは、なかなか情緒があって素晴らしい。
ニッキー(ジェラール・ランバン)は、兄と慕うガブリエルを失い店を継げない苦境のなか、専属歌手レア(エマニュエル・ベアール)を追いかける。そのプレイボーイ振りは、老いる孤独さが滲み出ていてなかなか味のある演技だ。レアは憧れていたニッキーに想いを伝えアメリカへ旅立つ。E・ベアールが吹き替えなしで唄うステージも魅力的。元妻のアリス(カトリーヌ・ドヌーブ)は、自由奔放で人生を満喫し、自信満々の自立した女を演じ、さすがの存在感。幼馴染のシモーヌ(ミュウミュウ)は、対照的に男を立てながらも、生活力旺盛なしっかり者で意外性充分。2人の異母兄妹(ニノ・マリアンヌ)の人生も片や同性愛、片や夫と上手く行かず離婚寸前で養子を貰いにロシアへ行こうとする。
普通の人は一人もいない、個性豊かな登場人物のオンパレードだ。夫々悩みを抱えながら、疎遠になっていた人々が新しいスタートに踏み切るためには、現実を受け止めて人を許すことが必要だと教えてくれる。


『ローズ家の戦争』 75点

2007-04-21 11:12:33 | (米国) 1980~99 

ローズ家の戦争

1989年/アメリカ

男の未練が不幸を招く

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆80点

ダニー・デヴィートが2度目の監督をして自らも出演しているブラック・コメディ。
オークション会場でバーバラ(キャスリン・ターナー)との出会いで一目惚れしたオリヴァー(マイケル・ダグラス)は結婚して2人の子供に恵まれ、絵に描いたような一見幸せな家庭を築いていた。妻はマイホームを手に入れ子育てにひと段落の17年目に、2人の価値観が違っているのに気付く。夫の食事マナー・いびきの凄さに我慢できなくなってくる。
こうなると、女は心変わりは絶対しないのに、男は未練たっぷり。ここまでオーバーではないが、良くあるパターンだ。結局、男の未練が哀れな結末となるという教訓か?
観終わって何らかの教訓を得るか、単なるコメディと取るかは人サマザマだが、共通認識は「女は怖い」。


『絶対の愛』 80点

2007-04-19 15:31:11 | (欧州・アジア他) 2000~09

絶対の愛

2006年/韓国=日本

キム・ギトクならではのラヴ・ストーリー

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

韓国の鬼才キム・ギトク製作・監督・脚本による、整形を警告したラヴ・ストーリー。年1作ペースのキム・ギトクが引退宣言したことも起因して韓国では大ヒットしたとか。原題はTIMEだが邦題のほうがぴったりくる。
韓国で大ブームの整形をこんな形で映画化するとは流石だ。まずイキナリの整形手術シーンにドギモを抜かれ、正視できなかった。女性は勇気があるなと改めて実感する。
セヒ(パク・チヨン)はジウ(ハ・ジョンウ)が2年経って愛情が冷めていないか、不安のあまり落ち着かない。突然姿を消して別人(スェヒ=ソン・ヒョナ)となって現れる。唐突な物語もギトク・ワールドに引き込まれ、2人の恋の行方の結末がどうなるか?興味深々。お互いが本当は姿・形と心が一致しない恋は成立するか確信がないまま、衝撃のラスト・シーンを迎える。
韓国マニアには2人が出会う喫茶店・彫刻公園など見所がいっぱい。ウエイトレス役で杉野希妃(ソ・ヨンファ)が出ているのも要チェック。


『ツォツィ』 90点

2007-04-19 11:40:39 | (欧州・アジア他) 2000~09

ツォツィ

2005年/イギリス=南アフリカ

心に染み入る感動的なラストシーン

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆90点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆90点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆90点

ツォツィとは不良のことで、あのマンデラもツォツィだったという南ア共和国の現在が舞台となっている。アルソ・フガートの原作、ギャヴィン・フッド監督・脚本によるアカデミー賞外国映画賞受賞作品。
アパルトへイトの後遺症の残るヨハネスブルグで、窃盗を重ね殺人をすることも平気な少年ギャングのリーダーは、本名を名乗らずツォツィと呼ばれていた。車を盗みその中にいた赤ん坊を持て余しながらも自分の生い立ちがオーバーラップして行く。数々の映画祭で観客賞を受賞しただけあって、命の大切さを訴えるまさに感動的なエンターテインメントに仕上がっていて、R-15なのが残念だ。
埃まみれのスラム街と高層ビルの周辺にある高級住宅街の対比が鮮やかに映し出される。そこには黒人エリートも住んでいる皮肉な現実がある。その中間にドラム缶に暮らすストリート・チルドレンが自分の住みかだったという伏線が、心に染み入る感動的なラスト・シーンに繋がっていて、思わず涙が滲み出てくる。
G・フッド監督の「どんな人生にも救済とセカンドチャンスがあることを描きたかった」というコンセプトが明確に表現されていた。
出演陣も主演のプレスリー・チュエニヤハエを始め南ア人。本人もカージャックのリーダー役で出演しているヒップホップのスター・ZORAの音楽が、現地の臨場感にぴったりの雰囲気を醸し出していて秀逸。特筆すべきは赤ん坊の愛くるしさで、この映画の主役とも云える。


『オール・ザ・キングスメン』 80点

2007-04-16 09:51:15 | (米国) 2000~09 

オール・ザ・キングスメン

2006年/アメリカ

権力を持つと人間は変ってしまう

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

ロバート・ペン・ウオーレンの原作を、「シンドラーのリスト」のスティーヴン・ゼイリアン脚本で製作・監督も手掛け「政治の腐敗」をついた社会派ドラマ。製作費8000万ドルという途方もない大金を賭けただけあってパヴェルム・エデルマン撮影・ジェームス・ホーナー音楽を始め豪華なスタッフ陣。
実在のルイジアナ州知事ヒューイ・P・ロングがモデルでショーン・ペンが人間味たっぷりに演じている。郡の出納官だったウィリー(S・ペン)は小学校建設入札の汚職を訴えクビになるが、欠陥工事で3人が死亡。新聞記事に取り上げられ一躍ヒーローになる。
当て馬州知事候補に祭り上げられながら、庶民の心を射止めた富裕層への挑戦の演説で当選を果たす。新聞記者だったジャック(ジュード・ロウ)の眼を通して善と悪、愛と憎しみの変遷を描いている。
人間は権力を持つと欲望の塊となり、それを維持するため理想を捨ててしまうのだ。このへんはウガンダ・アミン大統領の「ラストキング・オブ・スコットランド」と酷似している。
ジャックは父親代わりの判事(アンソニー・ホプキンス)や初恋の人アン(ケイト・ウィンストレット)とその兄アダム(マーク・ラファロ)も巻き込み犠牲にしてしまう。理想に燃えるウィリーの挫折を観ながら、人間は「愛と憎しみで思わぬ人生を送る哀しさ」を感じる。


『ブラッド・ダイヤモンド』 85点

2007-04-15 11:46:07 | (米国) 2000~09 

ブラッド・ダイヤモンド

2006年/アメリカ

主役3人の確かな演技による力作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

最近アフリカの紛争をテーマにした映画が目立つがこの作品もそのひとつ。社会性と娯楽性を兼ね備えたエドワード・ズウィック監督の力作。
西アフリカ・シエラレオネ共和国は、ダイヤモンドの産地で紛争が絶えない。漁師・ソロモン(ジャイモン・フンスー)は息子ディアの成長を楽しみにしているが、突然現れた反政府軍RUFの襲撃を受け家族をバラバラにされてしまう。前半のこの場面は現実とは思えない程の惨状で、思わず目を覆ってしまう。
元傭兵でダイヤの密輸を生きる糧とするダニー(レオナルド・デカプリオ)とアメリカのジャーナリスト(ジェニファー・コネリー)が絡んで100カラットのピンク・ダイヤモンドを巡り物語が進んで行く様は、下手をすると単なるアクションスペクタルになるところ。
3人の確かな演技と、社会性を失うことなく最後まで引っ張っていったE・ズイック監督の手腕によるところ大。ただ何度も銃撃戦に巻き込まれながら、ダニーとソロモンが最後まで無事なところが、当然といえば当然だがもう少しリアル感が欲しかった。
豊かな国と貧しい国の間に、石油資源などのエネルギー以外に宝飾品があることを改めて訴求している点で価値ある作品だ。女性の憧れのダイヤモンドに、こんな悲惨な現状があるのを、この映画で改めて考えさせられる。