晴れ、ときどき映画三昧

「ある日どこかで」(80・米)60点



・ タイム・トラベル ラブストーリーの隠れた名作。




スピルバーグ監督デビュー作「激突」(73)の原作・脚本家でもあるSF作家リチャード・マシスンの原作・脚本を映画化。監督は「JAWS/ジョーズ2」のジャノー・シュワーク。

80年代、若い劇作家が70年近くの時空間をタイム・トラベルし、女優との恋を体現するSFラブストーリー。

陳腐なメロドラマと評論家から酷評され、わずか2Wで打ち切りとなったが、ジワジワと人気が出始め10年後蘇り、隠れた名作となった。

72年、母校で自作の初演を迎えていた劇作家のリチャード(クリストファー・リーヴ)は、見知らぬ老婦人から金の懐中時計を渡される。

8年後、母校へ再訪した彼がホテルに掛かっていた肖像写真に心を奪われる。そこに描かれていた美女は、かつて老婦人の若き日の姿だった・・・。

タイム・トラベルのラブストーリーの元祖的存在である本作は「ゴースト/ニューヨークの幻」(90)など理屈抜きに切ない切ないラブストーリーを生んでいる。大ヒット作アニメ「君の名は」もそのひとつ。

主演のC・リーヴはスーパー・マン俳優として有名だが、自伝で臨死体験を語っていて若くして急死したため、本作を結果的に有名にしている。

リチャードが一目惚れした女優エリーズに扮したのはジェーン・シーモア。役柄がぴったり似合う美人女優だが、その後恵まれず活躍はあまりなく本作が代表作となった。

2人の恋を予言したマネージャー、ロビンソンを演じたのは昨年公開された「手紙は憶えている」に主演し健在ぶりを示した1927生まれのクリストファー・プラマー。50代の彼が見られるのも嬉しい。

このジャンルで大切なのは時代背景に見合うロケ地。場所はミシガン州のマッキナック島のグランド・ホテル。およそ100年前がタイムスリップしたような雰囲気が素敵だ。

もう一つ重要なのが音楽。007シリーズでお馴染みのジョン・バリーのテーマ曲とラフマニノフの<パガニーニの主題によるラプソディ作品43 18編曲>が切ないラブストーリーを盛り上げてくれる。

世界中にファンクラブがあってロケ地でイベントが開かれるという本作。恋の障害が時空であることを教えてくれた。

コメント一覧

オーウェン
この映画「ある日どこかで」は、初恋にも似た瑞々しい恋の予感をうまくとらえ、恋の高ぶりを知った時の、胸が切なさで締め付けられんばかりの思い出を、えも言われぬ訝しさを、そっと心の奥底にしまい、いつまでも大切にしておきたい----と、ほろ苦くも切ない思いにさせてくれる、そんな素敵な映画なのです。

「カム・バック・トゥ・ミー」----、クリストファー・リーヴが劇作家としてデビューしたパータィの日、彼の許に知らない老婦人が訪れ、そう囁くのです。

それから8年後、リーヴは滞在したホテルの資料室にある、絶世の美女のポートレートに魅かれ、彼女のことを調べるのです。
そして、この美女は、70年前の大女優で、あの謎の老婦人がその女性だったことを知ったリーヴは、その時代へのタイムトラベルを試みるのです----。

この女優の正体を探るミステリアスな前半から、過去へと旅をし、湖畔で初めて、「あなたなのね」と呟く彼女との出会いに始まるラブロマンス。
一歩間違えれば、実に陳腐な三流のメロドラマになったところを、限りなき美しさに彩られた上質の名作に仕上がったのは、"時の流れ"というものが、そこに横たわっているからだろう。

このクリストファー・リーヴとジェーン・シーモアのロマンスは、時間という絶対に越えられないものによって阻まれてしまうのです。
その壁が越えられた時、この物語はノスタルジックな世界の中に"夢物語"として美化され、かつてのハリウッド黄金期の"甘美で華麗な世界"に足を踏み込んだような錯覚を覚えてしまうのだ。

それほどまでに、想い出にも似た、過去の風景はひたすら美しく、ジョン・バリーの音楽もひたすら甘く効果的だ。

壁のシーモアが微笑むポートレートは、まさに彼女がリーヴに愛を告白した、人生で最高に幸せな瞬間のもの。写真に封じ込まれた、その至福の時は永遠に続く一方、リーヴと時の流れに引き裂かれた彼女は、その生涯を60年後に会える彼のためにホテルの一室に封じ込めるのです----。

そして、待ちに待った再会の日、といってもリーヴは未だ彼女を知らない、切ない不幸な出会いの日、彼女は静かに息を引き取るのです。

とにかく、この映画で素晴らしいのは、ジェーン・シーモアの比べようもないほどの美しさ。
女優というものが、その生涯において、最も輝いていた時を、「ある日どこかで」の中で見せてくれています。

彼女の美しさこそが、この映画を名作の域にまで高めたのだし、我々観る者をこの世界に魅了してやまないだろうと思うのです。

上質のメロドラマと、タイムトラベルというSF的要素を巧みに織りまぜて、"ノスタルジックな感性溢れるファンタジー"に仕上げた、まさに名作だと思います。
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