晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『グッド・シェパード』 85点

2007-10-28 11:43:45 | (米国) 2000~09 

グッド・シェパード

2007年/アメリカ

13年振りデ・ニーロ監督、渾身の第2作目

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

ロバート・デ・ニーロ監督2作目で、製作総指揮フランシス・F・コッポラ、エリック・ロスの脚本。9年越しの企画を実現した待望の正統派作品。べルリン映画祭芸術貢献賞を受賞した。
’61年キューバのカストロ政権の転覆を狙ったピッグス湾侵攻失敗の責任を背負ったCIA諜報員エドワード・ウィルソンの半生を描いている。
原題は「良い羊飼いは羊のために命を捨てる」という新約聖書の引用で、羊飼いをCIAに例えている。「ゴッドファーザー」同様<組織と家族>に葛藤する男の物語だ。
海軍の高官だった父の自殺をトラウマに詩を愛する高い理想を持ったエール大学生だったエドワード(マット・デイモン)が秘密結社「スカル&ボーンズ」に入籍したのをキッカケに数奇な運命を辿って行く。後のCIA長官フィリップ・アレン(ウィリアム・ハート)やリチャード・ヘイズ(リー・ペイス)が在籍していて、リーダーのラッセル上院議員の娘クローバー(アンジョリーナ・ジョリー)とできちゃった結婚。直後にCIAの前身OSSのサリヴァン将軍(R・デ・ニーロ)にヨーロッパ偵察を命じられる。
第二次大戦からソ連との冷戦を経て、家族にも云えない仕事の重責に、男のロマンと冷徹な現実のギャップに悩みながら、「組織を優先する孤独感」を漂わせる。2時間47分の長さを感じないほどオーソドックスで重厚な作品に仕上がっていてシリーズ化が期待できそう。
妻クローバーとの不和、後を追うようにCIA入りした息子ジュニア(エディ・レッドメイン)との葛藤を軸に、人を信じられない男の寂寥感をM・デイモンが好演している。残念ながら中高年での老け役がメイキャップなどの工夫が乏しく時代の変遷を感じさせない。
逸話が盛り沢山で、力を抜くところがないのも観客を疲れさせるが、それ程渾身の作とも云える。


『大統領暗殺』 80点

2007-10-26 12:18:55 | (欧州・アジア他) 2000~09

大統領暗殺

2006年/イギリス

ドキュメント風フィクション映画の危うさ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★☆☆70点

イギリスのガブリエル・レイジが製作・監督・共同脚本化した現職大統領の暗殺というショッキングなテーマのドキュメント風フィクション。トロント映画祭国際批評家賞受賞作品。
’07.10.19シカゴで演説直後にブッシュ大統領が何者かに銃撃される。大統領を警護するラリー・スタッフォード主任、グレッグ・ターナー・シカゴ市警、エレノア・ドレーク大統領顧問の証言をもとに、まるでTVのヒストリー・チャンネルを観るようなリアルな映像が写る。
容疑者が何人か絞られるが、ここにこの映画の論点があるのだろうか?監督は9.11以降のアメリカの彷徨ぶりを3人の容疑者に込めている。決して趣味の悪いジョークとは受け止めてはいないが、あえて現役大統領を暗殺する映画を作った意図は成功したとはいえない。
マイケル・ムーアのようなストレートさはないし、決して有り得ないことではないだけにドキュメント風フィクションの危うさを拭いきれない。


『ノッティング・ヒルの恋人』 75点

2007-10-21 18:17:00 | (米国) 1980~99 




ノッティング・ヒルの恋人


1999年/アメリカ






ハッピーなラブ・ストーリー





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
75



ストーリー

★★★★☆
75点




キャスト

★★★★☆
80点




演出

★★★★☆
75点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
75点





ロジャー・ミッチェル監督でジュリア・ロバーツ主演のラブ・ストーリー。
ロンドンのノッティングヒルにあるトラベル専門の小さな本屋へハリウッドの大スター、アナ・スコット(J・ロバーツ)が突然現れる。店主・ウィリアム(ヒュー・グラント)は一顧客として親切な対応をするが...。
誰でも憧れる、「遇然の出会いから忘れられない人になって行く」ラブ・ストーリー。メグ・ライアンではなくJ・ロバーツが演じるところがキャラクターにも多分に影響していて、チョッピリ我がままで心が純粋で大スターなのにイメージが娼婦的なのは、「プリティ・ウーマン」のイメージを彷彿させる。
相手役のH・グラントが適役。優しそうなタレ目がこのドラマには欠かせない。
若い女性が観て、ロンドン観光旅行でドラマを実感すると楽しいのでは?






『アザーズ』 85点

2007-10-16 16:59:26 | (米国) 2000~09 

アザーズ

2001年/アメリカ=スペイン=フランス

役柄にピッタリなN.キッドマン

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「オープン・ユア・アイズ」のアレハンドロ・アメナーバルが監督・脚本・音楽を手掛けた格調あるゴシック・ホラーサスペンス。
イギリスのジャージー島に住むグレース(ニコール・キッドマン)は2人の子供と夫の戦地からの帰りを待って1年半になる。子供達は光アレルギーで窓にはカーテン、蝋燭の灯りで外出も儘ならない。ある日3人の使用人が来てからは不思議なことが次々と起こる。
3人の思わせ振りのある言動から興味深々で引き込まれる。途中、中だるみがあるが、終盤どのような結末が待っているのか、目が離せない。
ヒステリックな美人で、気品あるグレース役はN.キッドマンの独壇場。2人の子役もピッタリだが、使用人役のフィヌラ・フラナガンの受身の演技が存在感を示している。
トム・クルーズがアメナーバル監督を気に入り製作総指揮を買って出ただけあって、期待を裏切らない。グレース・ケリーのヒッチコック作品を連想させてくれた。


『題名のない子守唄』 90点

2007-10-13 11:20:23 | (欧州・アジア他) 2000~09

題名のない子守唄

2006年/イタリア

6年ぶりJ・トルナトーレが満を持して監督した力作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆90点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆90点

「ニューシネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」のジュゼッペ・トルナトーレが「マレーナ」以来6年ぶりに監督・脚本化したミステリアスな作品。
北イタリアのテリエステにきた謎の女イレーナ(クセニア・ラパポルト)は、金細工工房を経営するアダケル家へ家政婦として雇われる。衝撃的な冒頭シーンからフラッシュバックで、この女の悲惨極まりない暗い過去が徐々に分かってくる。
ヴァレリア夫人(クラウディア・ジェリーニ)にはすぐ認められるが、自己防衛に障害を持つ娘テア(クララ・ドッセーナ)にはなかなか気に入ってもらえない。献身的な子守をするうち、やがて打ち解けるが、イレーナには忌まわしい過去を拭いきれない通称黒カビ(ミケーレ・プラチド)と呼ばれる男が付き纏う。
テアを巡ってイレーナとヴァレリアの母性愛の話だが、異常な緊張感のままドラマチックなラストシーンでほっとさせられるまで眼が離せない。
いままでのトルナトーレ作品のような、ほのぼのした物語を想像していたが180度違う展開に驚かされた。金髪の娼婦とヒッツメで黒髪の家政婦が同一人物で、そこには悲劇と人間愛の物語が交錯している。
イレーナの恋人の死はどうして分かったのか?黒カビがゾンビのごとく生きていたこと、植木鉢の中に隠していたのはお金かそれとも...。と気になることはあるものの、骨太な作りに圧倒されてしまった。
主演のK・ラパポルトが美しくパワフルなヒロインを見事に演じている。そして特筆されるのは子役のC・ドッセーナ。こんなに上手い子役を観たのは久し振りで、10年にひとりの逸材だ。脇役陣のキャスティングもキメ細かく、M・プラチドが珍しく悪役を達者にこなしているのを始めとして、家政婦役のピエラ・デッリ・エスポスティ、管理人役のアレッサンド・ヘイベルなど流石トルナトーレ。お馴染みエンニオ・モリコーネの音楽も厚みのあるバックアップ振り。
最近実在の人物をモチーフにしたドキュメントタッチの映画が多い中、こんなドラマチックなフィクションはとても新鮮な感じがする。


『パーフェクト・ストレンジャー』 80点

2007-10-12 12:28:10 | (米国) 2000~09 

パーフェクト・ストレンジャー

2007年/アメリカ

犯人当てミステリーとして観ない方が楽しめる

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

エレイン・ゴールドスミス=トマスが<ヴァーチャル世界のインターネット・広告・メディアなどコミュニケーションツールの怪しさ>をテーマにプロデュースした、ジェームス・フォーリー監督ハル・ベリー主演のサスペンス。
元新聞記者ロウィーナ(H・ベリー)は久し振りに再会した幼馴染みのグレースの死によって、彼女が告白した広告会社社長のハリソン・ヒル(ブルース・ウィルス)の不倫スキャンダルを追いかける。元同僚のマイルズ(ジョヴァンニ・リビシ)や恋人のキャメロン(ゲーリー・ドゥ-ダン)も絡んでくる...。
「ラスト7分11秒で衝撃な事実」が謳い文句だが、そのための犯人当てミステリーとして観ると期待外れ。むしろJ・フォーリー監督が言う「隠された真実を漏らさないために人間がとった行動の限界」を訴えたドラマとして観た方が楽しめる。
登場人物の殆どが他人に知られたくない秘密を持っていて、大都会NYで生き抜く惨さを映し出している。チャットで擬似恋愛をすることなど映画では映像化しにくいテーマも、現代社会のお飾りとして入れたと思えば割り切れる。
主演のH・ベリーの魅力が存分に生かされたドラマで、B・ウィルスが気の毒な役回りとなってしまった。


『ダイヤルM』 75点

2007-10-08 15:49:17 | (米国) 1980~99 




ダイヤルM


1998年/アメリカ






M・ダグラスとG・パルトロウのコンビを楽しむ





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
75



ストーリー

★★★★☆
75点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
75点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
75点





A・ヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!」のリメイクで「逃亡者」のアンドリュー・デイヴィスが監督している。
舞台をロンドンからNYへ変え、設定人物もそれらしくマネー・トレーダーのマイケル・ダグラスと国連の通訳、グウィネス・パルトロウの夫婦。
妻の不倫相手が無名の画家(ヴィーゴ・モーテンセン)。
夫の仕掛けで妻への殺人が失敗するまでの前半は期待充分だったが...。
サスペンの魅力はヒッチコック作品には及ばない。金のためなら妻も殺しかねない冷酷なエリートと、良家に育ち本当の愛を願望する妻のキャラクターを楽しみながら観る作品か?






『ラヴェンダーの咲く庭で』 80点

2007-10-08 11:42:01 | (欧州・アジア他) 2000~09

ラヴェンダーの咲く庭で

2004年/イギリス

2人のDAMEの演技比べ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆85点

ウィリアム・J・ロックの短編小説をチャールズ・ダンス監督が2人のDAME(大英帝国勲位叙勲者)であるジュディ・デンチ、マギー・スミスの競演を得て映画化した大人の寓話。
イギリス西部のコーンウォール地方で静かに暮らす老姉妹のジャネット(M・スミス)とアーシュラ(J・デンチ)。ある朝、海辺に漂流した青年(ダニエル・ブリュール)を巡って日常生活に妙な変化が起きる。ポーランド人のヴァイオリニストである彼を中心に、思いもしなかった姉妹の密かな競争心。それは分かっていてながら、嫉妬やウヌボレが交錯する。
J・デンチの少女のような恋心が、表情ひとつ、仕草のワンシーン毎に胸を打つ。
片やM・スミスはそんな妹を大人気ないと諌めながら、さり気なく対抗心を燃やす。
老いて静かな生活が理想だった2人に波紋を投げかける若い青年・アンドレアは、彼の言動に一喜一憂する2人に対して罪の意識は全くナイところが切ない。若い人が観ても何ら共感を得られないが、おそらく年を取って観ると実感するに違いない。
ジョシュア・ベルのヴァイオリンで流れる「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジー」は今年フィギュア・スケートの浅田真央のテーマ曲として話題になっているが、この映画の美しい風景を連想させ心に沁みてくる。


『エディット・ピアフ ~愛の賛歌~』 90点

2007-10-06 11:06:32 | (欧州・アジア他) 2000~09

エディット・ピアフ ~愛の賛歌~

2007年/フランス=チェコ=イギリス

壮絶でピュアなE・ピアフを見事に描いた傑作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆90点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆90点

「愛の賛歌」「ばら色の人生」のヒット曲を歌った大歌手エディット・ピアフの47年を綴った伝記映画。オリビエ・ダアンが監督・脚本化し、マリオン・コティヤールが主演。
幼いピアフは父の兵役、母の蒸発で祖母(カトリーヌ・アレグレ)の娼家に預けられる。娼婦ティティーヌ(エマニュエル・セニエ)に可愛がられるが、栄養不足で失明の危機を味わう。聖テレーズへの祈りが通じたか奇跡的に回復したことが、後の彼女の人生を大きく左右することになる。
やがて除隊後の父に引き取られ、街頭で歌を歌いながら生活の糧となってゆく。ある日ルイ・ルプレ(ジェラール・ドパルデュー)に見出されキャバレーで売れっ子になるが、彼の怪死で容疑者となり、また下町へ舞い戻るハメになる。
作家で詩人のレイモン・アッソに初めて歌の特訓を受け、再デビューしたのを契機に再び脚光を浴びる。その後は結婚・離婚、交通事故、アル中・麻薬中毒とジェット・コースターのような生活を送りながらも、どんどんステージ歌手として名声を高めて行く。
’63リヴィエラで死去するまで、壮絶な人生を送るが、なかでも恋人のボクサー、マルセル・セルダン(ジャン=ピエール・マルタンス)とのドラマチックな別れや、麻薬に溺れ体が蝕まれながら次々とヒット曲を生んで行く後半生がこの映画のハイライト。とてもリアルに再現されている。
何より主演のマリオン・コティヤールが素晴らしい。実年齢を遥かに超えた晩年の衰えたピアフを演じた様は、よっぽど研究し尽くしたに違いない。
歌はピアフの録音で吹き替えたのも成功した要因だろう。
実在の著名人(ジャン・コクトー、イヴ・モンタン、ジョルジュ・ムスタキ)との交友も多いが、マレーネ・デートリッヒがワンシーン出ただけに留めたのも、話が散漫にならず良かった。
注文を付けるとすれば、登場人物が整理され過ぎ、誰だか分からない脇役陣が多いことと、時代が交錯して話題転換に付いて行くのに眼が離せない所が随所に見られたところか?
原題はイヴ・モンタンとの恋愛中の大ヒット曲「LA VIEN ROZE」。日本でも越路吹雪などカバー曲が多い「愛の賛歌」も要所で流れ邦題になっているが、この映画に相応しいテーマ曲はE・ピアフの心境そのままを歌詞にした「水に流して」だろう。