遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

悪人

2008年02月27日 16時18分06秒 | 読書
 
  悪人     吉田修一(著)

 この作者の本を読んだのは、「パークライフ」以来です。
 「パークライフ」は当時かなり絶賛されて(芥川賞受賞)いて、
 そうかー、素晴しいのか・・・というノリで読んだのですが、
 その時の私には、イマイチだったような記憶が。

 その後、「東京湾景」をドラマで見たなあ~程度でした。

 ところが、昨年末に日経新聞の書評で「年間ベスト3」を
 選ぶという紙面があり、2人の評者がこの本を選んでいたん
 ですねー。
 それじゃあ、私も読んでみましょう、という単純な動機で
 読んだわけです。

 そうして読み始めたら、(結構枚数あるんですが)ぐんぐん
 と引き込まれて、知らぬ間に読み終わっていました。

 最初は、九州で起きた携帯の出会い系サイトにまつわる
 殺人事件、なんて趣味じゃないな~、ワイドショー的なのは
 苦手だし、、、と思ったんです、正直なところ。

 ところが、この小説は、そんなものではなかった。

 現代の若者達、大人の心の空洞がみごとに描かれていて
 ドキッとします。
 回りを見渡したら、すぐそこに祐一や佳乃や光代や増尾
 みたいな若者が、そしてその親たち、親戚がいるじゃ
 ないですか。
 そんな普通に生活しているはずの人達の心情が、事件を
 きっかけに揺れ動く気持が、本当に丁寧に描かれています。

 また、本文の中にこんな一節が、、、

 「あんた、大切な人おるね?」
  略
 「その人の幸せな様子を思うだけで自分までうれしくなって
 くるような人たい」
  略
 「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎうたい。大切な
 人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失う
 もんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる」
  略

  沁みますね~。

  格差の問題、親子家族の問題、社会のひずみなどが
  巧みな物語構成の中に織り込まれています。

  やりきれない悲しさ、虚しさを感じます。
  「希望」はどこにあるのだろう・・・。
 
  堪能いたしました。同じ作家なんですよね~??
  そういえば、ある人は、
  「吉田修一は進化している」と書いていましたっけ。


         わがまま母
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