本当は昨日の午後、佐藤学さん(東京大学)や野田正彰さん(関西学院大学)などがパネリストになって行われたシンポジウム(案内はここ:http://osaka1117.exblog.jp/ )についてブログで紹介したいのですが、その前に、こちらの話を。
25日(水)に大阪府市統合本部で議論をされた大阪府教委作成の「教育基本条例案」の修正案が、すでに大阪市のHPでアップされ、閲覧可能になっています。PDFファイル3つになっていましたので、こちらでダウンロードして、再度、ここでアップしておきます。
それで、あらためてこの修正案をさっと目を通してみたのですが、「これならやっぱり、いらない」というのが率直な結論。もともとの条例案も、この修正案も、どっちも不要。そもそも「教育基本条例」制定のムーブメントそのものが大阪の子どもや教育にとって「余計なお世話」、という印象を強めました。
理由はいろいろあるのですが、結論から先に言えば、「この修正案って一応、法的な整合性をととのえて、大事なところはすべてあとは府教委が決められるようにしているけど、要は府教委が首長提案や大阪維新の会の教育政策を丸呑みしたら、結果的に同じことになるでしょう」ということ。そのうえで、「資料3-1 知事提案の条例案について」(3shiryo31のPDFファイル参照)を読んで、次のことも指摘しておきます。
(1)まず、府教委修正案は、教育基本条例案を3分割したうえで、教職員の人事評価、分限や懲戒等に関することは職員基本条例に「丸投げ」する形をとっています。しかし大阪府の一般行政職に関する規定と、教職員に関する規定、何もかも同じにすることが妥当なのでしょうか?
(2)府教委修正案でいう「教育行政基本条例案」の目指すところが、やはりグローバル社会に対応した人材養成。このことは「前文」からわかる。大阪の教育が子どもの人権保障やインクルーシブな教育の実現を目指してきたことに対しては、なんら考慮も配慮もない。従来の大阪の教育から数歩も後退して、国の施策と大差ないものにこのままではなるだろう。
(3)「教育行政基本条例案」は結局、府としての「教育振興基本計画」の「共同作成」というところで府知事と府教委の関係をおさめようとしている。ただ、そのときに府知事が強引に「全国学力テストの順位をあげろ」「教員の人件費を削減しろ」「教職員の分限免職や懲戒免職等をもっと積極的に行え」等の要求をして、それが基本計画に盛り込まれることになったのであれば、従来の「教育基本条例案」と大差ないものになるだろう。
(4)教育施策に関する説明責任や点検、評価という「教育行政基本条例案」の第3章の趣旨も、一般論としては正しいのだが、その点検・評価をどのような指標で行うのか次第では、従来の「教育基本条例案」と大差なくなる。それこそ、「全国学力テストの順位が去年よりどれくらい上がったか?」を点検・評価の指標とするつもりなのか否か?
(5)「教育行政基本条例案」第4章の市町村との関係だが、従来だって教員研修等で市町村教委と府教委は連携してきたのではなかったか? ここに書いてあることの多くは、あらためて「教育行政基本条例案」をつくらねばできないことなのかどうか、きわめて疑問。
(6)「府立学校条例」の第1章、第2章でいう「効果的・効率的」な学校配置、学校運営とはなんなのか。それは誰にとっての「効果的・効率的」なものなのか。たとえば、「定期代くらい子どもでもバイトして稼げ」という首長のもとで、府立高校の大規模な統廃合を行って、教育財政面では「効果的・効率的」な学校配置・学校運営が行われたとする。しかし、通学時間が2時間以上かかるような状態が当たり前になってしまえば、高校生たちの生活が大きく乱れることになる。かえって学習効果は損なわれるのではないか。このことは特別支援学校の統廃合に際しても言えることであろう。
(7)「府立学校条例」第4章の府立学校運営の計画づくりって、これ、今までだって府立学校はやってきたのではないですか? もしもそうだとしたら、それで実際に学校がうまく運営されてきたのかどうなのか。学校に組織マネジメントの発想を導入するというのがこの府立学校条例の趣旨のようですし、これがこの十数年の国全体の教育改革の流れのようですけど、それでほんとうに日本の学校の何がよくなって、何がかえって悪くなったのか。そこから議論をするべきでしょう。
(8)「府立学校条例」第5章ですけど、第1節ではまず校長の「任期付採用の拡大」ですか。これって「教育基本条例案」の趣旨と何もかわっていない気がします。また、第2節のほうですけど、ここで書いてあるような教職員の研修等は、いままでだって条例がなくとも府教委としてやってきたのではないでしょうか。わざわざ条例をつくらなければならない理由がわかりません。
以上、ざっと気づいた範囲ですが、「こんな内容の修正案なら、教育基本条例案のもとの案ともども、どっちもいらない!」と、あらためてここで述べておきます。