できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

今度は子どもたちへのひどいお年玉ですね。

2012-01-05 23:31:38 | ニュース

http://mainichi.jp/kansai/news/20120105ddf041100016000c.html (橋下・大阪市長:市立小1/3が統廃合対象、14年度末めど、再編プラン指示:毎日新聞関西ネット配信記事2012年1月5日付け)

年末には市立幼稚園の「民営化」というひどいクリスマスプレゼントでしたが、今度は市立小学校の統廃合ですか、ほんとうにひどいお年玉ですね。

それにしても、年末の大阪市議会での施政方針演説では、橋下市長、たしか現役世代や将来世代への公金の投入という趣旨のことを言っていたはずです。ですが、市立幼稚園の「民営化」といい、市立小学校の統廃合といい、どっちも真逆のことを言っていますね。

市立幼稚園の「民営化」も市立小学校の統廃合も、どこまでいっても、市の教育財政の負担軽減、教職員数の削減をはかるもの。おまけに、廃止後の学校用地は「資産流動化」という名のもとに、民間デベロッパーに売っていくことも考えられますしね。

要するに、こういう「資産流動化」や教育財政の負担削減が念頭にあっての「学校統廃合」であり、そのための「学校選択制」導入なのではないかと思います。彼らの立場はおそらく、「はじめにまず、学校と教職員数減らすことありき」でしょう。

それにしても、学校統廃合や学校選択制を導入したあとの大阪市では、地域防災計画や地域福祉、地域コミュニティ形成のプランはどうするんですかね?

このたびの東日本大震災でも、阪神淡路大震災でもそうでしたけど、地元の公立学校を核とした地域コミュニティが防災に関する諸活動ではとても重要になります。大阪市を災害に弱い都市にするつもりなのでしょうか、橋下市長も大阪維新の会も?

また、今の地域福祉のシステムでは、中学校区や小学校区といった「校区」をひとつのエリアとしてさまざまな活動が行われていますが、そのエリアの単位も消滅するわけですよね、学校統廃合や学校選択制導入によって。橋下市長も大阪維新の会も、今まで大阪市で積み上げてきた地域福祉の諸システムを大混乱に陥れたいのでしょうか?

通常の学校統廃合は、こうした混乱をできるだけ最小限に食い止めるため、地元の住民や保護者の理解を得たり、関係諸機関の調整をはかったりしながら、教育行政当局と学校現場が連携をたもって、とても時間をかけてすすめているものです。それだけ関係者がいろいろ配慮して進めた学校統廃合でも、その結果によって子どもたちの生活環境が一変したり、保護者や地元住民の人間関係がしばらくぎくしゃくしたりして、さまざまな混乱が起こります。こんな感じで、橋下市長も大阪維新の会も、大阪市内の各地区を大混乱に陥れたいのでしょうか?

ちなみに、先の新聞記事では「子供たちのため、統廃合は喫緊の課題」と書いていますが、だとしたら橋下市長も大阪市教委も、肝心の子どもたちの意見を聴かなければおかしい。子どもの意見表明権の尊重、保障という原則からすれば、今現在、大阪市内の小中学校に通う子供たちが「自分たちの学校が近隣の小中学校と合併され、なくなるかもしれない」ということを聴いて、どのように感じているのか。その実感調査くらいはしなければいけないでしょう。そのような手続きなしに、自分たちの一方的な思い入れでこの学校統廃合、学校選択制導入を子供のため」などというのは、「ほんと、冗談はよしてほしい」と思ってしまいますね。

ついでにいうと、この前の市長選挙のとき、彼は選挙公約か何かで、公立学校選択制の導入や学校統廃合、市立幼稚園の民営化などを主張していましたか? もしも「していなかった」としたら、選挙で彼に投票した人々の「民意」はこういうことを想定していなかったわけで、これは「民意のすり替え」ではないか、有権者をだましたのではないか、という批判を受けてもしょうがないと思いますが。もしもどうしても今すぐ「民意」を問うなら、大阪都構想の是非と同じように、もう一度市長を辞職し、「民意」を問うべきかとも思いますが。

そして、もうそろそろ、大阪市や大阪府の市民のみなさん、目を覚ましてもいいころかと思いますよ。彼らは自分たちの都合のいいときだけ、選挙でみなさんの「民意」を調達し、選挙が過ぎたら次々にみなさんを裏切ることをしかけてくるわけですからね。


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