アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

NHK大河の朝鮮侵略・植民地主義者美化の系譜

2021年02月18日 | 朝鮮・韓国差別とメディア

    
 今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一が朝鮮侵略・植民地支配の先頭に立った人物だったことは先に書きましたが(16日のブログ参照)、NHK大河ドラマ(以下、大河)が朝鮮侵略者・植民地主義者を主人公(モデル)などにして美化するのは今回だけではありません。

 大河は「青天…」が、第1回の「花の生涯」(1963年)から60作目になります。その中から、朝鮮侵略者・植民地主義者を主人公あるいは主人公に近い人物として登場させた作品をピックアップすると、以下のようになります(年代さかのぼり。作品名の次は主人公またはそれに近い関連人物)。

第60作 「青天を衝け」 渋沢栄一(主人公)
第59作 「麒麟が来る」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第57作 「西郷どん」 西郷隆盛(主人公)
第54作 「花燃ゆ」 吉田松陰・伊藤博文(主人公周辺)
第52作 「八重の桜」 吉田松陰・西郷隆盛・伊藤博文(主人公周辺)
第50作 「江~姫たちの戦国~」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第49作 「龍馬伝」 坂本竜馬(主人公)
第45作 「功名が辻」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第43作 「新選組!」 坂本竜馬(主人公周辺)
第41作 「利家とまつ」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第35作 「秀吉」 豊臣秀吉(主人公)
第30作 「信長」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第28作 「翔ぶが如く」 西郷隆盛(主人公)
第23作 「春の波濤」 福沢諭吉・伊藤博文(主人公周辺)
第21作 「徳川家康」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第19作 「おんな太閤記」 豊臣秀吉(準主人公)
第16作 「黄金の日日」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第15作 「花神」 吉田松陰・伊藤博文(主人公周辺)
第11作 「国盗り物語」 豊臣秀吉(主人公周辺)
第6作 「竜馬がゆく」 坂本竜馬(主人公)
第5作 「三姉妹」 西郷隆盛(主人公周辺)
第3作 「太閤記」 豊臣秀吉(主人公)
  (西郷隆盛は「征韓論」、坂本竜馬は「竹島開拓」構想など=備仲臣道著『坂本龍馬と朝鮮』かもがわ出版2010年参照)

 以上、全60作中22作品(37%)が朝鮮侵略者・植民地主義者が主人公であったりその周辺の人物であったりした作品です。
 なかでも突出しているのが豊臣秀吉で、11作品(全作品の18%)に登場しています(主役・準主役3、周辺8)。

 秀吉は、1592年~1598年にかけて朝鮮半島を侵略しました。日本では「文禄・慶長の役」として教科書にたんなる事実として記述されていますが、被害を受けた朝鮮半島では「壬辰・丁酉(じんしん・ていゆう)の倭寇」と呼ばれる歴史的侵略として記録・記憶されています。
 「豊臣秀吉の朝鮮侵略は、後々まで日本人の思想に大きな影響をもたらした」(中塚明著『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』高文研2002年)もので、秀吉こそ朝鮮半島侵略に先鞭をつけた歴史的犯罪人と言わねばなりません。

 その秀吉をはじめ上記の通り朝鮮侵略・植民地支配の中心的人物が大河ドラマで56年間(「太閤記」~「青天を衝け」)にわたって美化され続けていることは、NHKの重大な社会的責任を示すものです(中には必ずしも美化とは言えないものもありますが、歴史的重要人物として描いていることは変わらず、朝鮮侵略の素顔を隠ぺいしていることは共通しています)。
 同時にそれは、朝鮮侵略・植民地支配の歴史的責任に対する日本人の無知・無関心・思考停止を永年にわたって助長してきたと言わざるをえません。

20日(土)午後1時、NHKEテレ「こころの時代」(「沈黙は共犯 闘う医師」)で、コンゴの婦人科医でノーベル平和賞受賞者、デニ・ムクウェゲさんのインタビュー番組の再放送があります(2019年12月22日の再放送)。日本人(特に男性)はぜひとお薦めします。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« NHK(大河)がふれない渋沢栄... | トップ | <番外>就任会見で鮮明にな... »