アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

NHK(大河)がふれない渋沢栄一の素顔

2021年02月16日 | 侵略戦争・植民地支配の加害責任

    
 14日から始まったNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公(モデル)は渋沢栄一(1840~1931)です。「新しい時代を切り開いた」「日本経済の父」などと番宣を繰り返してきましたが、NHKがけっして触れない(描かない)渋沢の素顔があります。それは、彼が朝鮮半島侵略・植民地支配の先頭に立った人物だったことです。

 「そもそも渋沢は1876年の日朝修好条規の締結前後という早い段階から第一国立銀行(1873年に渋沢が創設―引用者)の朝鮮侵出に強い意欲をもっていた。1878年に釜山支店が開設され、元山、仁川と次々に出張所が設けられていった。…その行動は日本の朝鮮半島への経済侵出の大きな足がかりとなり、植民地化を導くものであった
 その動機は第一国立銀行の…業績の低迷を補う経営的な目的と、渋沢自身がもともと強く持っていた「三韓征伐神話」や「日鮮同祖論」といった対朝鮮意識に由来するものであった。…独立した国家としての主権を無視した(渋沢の)主張は大いに批判されるべきものである」(島田昌和文京学院大教授『渋沢栄一』岩波新書2011年)

 渋沢は第一国立銀行を朝鮮半島に侵出させただけではありません。なんとそこで紙幣を発行し自らその肖像画におさまったのです。

 「栄一の行ったことに同情できない点もある。それは1905年(正確には1902年―引用者)に第一銀行券を韓国で発行した件である。しかも、本人の肖像入りの銀行券である。この発行は、国内における第一銀行の経営不振を朝鮮で補う意味もあった(が)…日本が朝鮮を植民地化するための第一歩に加担したとの理解ができる。彼が植民地主義者であったとみなせる一つの証拠である。現に…1910年には韓国併合の時代を迎えるのである」(橘木俊詔元京都大教授『渋沢栄一』平凡社新書2020年)

 紙幣の発行が植民地支配の重要な手段であったことは言うまでもありません。渋沢は1902年に発行された(旧券)、一円券、五円券、十円券、そして1904年に発行され直した(新券)各紙幣、合計6種類の朝鮮紙幣のすべての肖像画になりました。韓国ではそれが渋沢の植民地主義・支配を端的に示すものとして、ソウルの韓国金融史博物館に見本が展示されています(写真中)。 

 その渋沢が、今度は日本政府・安倍晋三政権によって、2024年から日本の最高額紙幣1万円札の肖像になることが決まっています(写真右)。韓国メディアがこれを批判的に報じたのは当然です。

 「聯合ニュースは、当時紙幣を発行した第一銀行頭取を務めた渋沢栄一を『韓半島で経済侵奪した象徴的人物』などと伝えた。…聯合ニュースは日本が軍事的圧力を背景に紙幣の流通を図ったと指摘し『植民地支配の被害国への配慮が欠けているとの批判が予想される』と主張した」(2019年4月10日付日経新聞)。

 NHKが今年の大河の主人公を渋沢にしたのは、この安倍政権の決定が背景にあることは言うまでもありません。現在の1万円札の顔・福沢諭吉も、朝鮮侵略・植民地主義者として朝鮮半島ではきびしく批判されています。渋沢は福沢が創刊した「時事新報」に頻繁に寄稿しており、福沢と親交が厚かったと思われます。

 福沢から渋沢へ。この植民地主義者の“1万円札リレー”は、日本(政府)がいかに植民地支配責任に対して無反省か、無反省どころかその再生産を図ろうとしているかを象徴的に示すものです。韓国の批判をみるまでもなく、日本人自身が自らの恥・罪と自覚しなければなりません。
 その渋沢を、NHKは看板番組の主人公にして、1年間美化し続けるのです。

 ※渋沢は朝鮮侵略・植民地支配の最大責任者である伊藤博文とも親交があり、共同歩調をとりました。また、渋沢は多くの日本企業の創設・経営に携わりましたが、その中の多くは朝鮮半島へ侵出した企業でした(2019年4月11日のブログ参照https://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20190411
 さらに、紙幣と並んで植民地支配の根幹となった鉄道建設・経営の中心にもなりました(19年10月3日のブログ参照https://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20191003)

 

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