アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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ゼレンスキー氏提唱の「サミット」は和平協議の場か

2024年06月05日 | 国家と戦争
   

 ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、アジア安全保障会議(シンガポール)に出席し、自身が提唱している「平和サミット」(今月15、16日、スイス)について、「中国が各国に参加しないよう働きかけている」と中国を批判しました(写真左)。

 ゼレンスキー氏は中国にも同サミットへの参加を呼び掛けていましたが、中国は「ロシアの立場も踏まえた和平交渉」(3日付京都新聞=共同)が必要だとして不参加を表明していました。

 1日も早い停戦へ向けて和平協議が急がれることは言うまでもありません。しかし、ゼレンスキー氏が呼び掛けている「平和サミット」が和平協議の場になるでしょうか。

 同サミットは初めからロシアを排除しています。そしてゼレンスキー氏がかねて提唱している「10項目の和平案」を基に議論するとしています。「10項目」とは次の通りです。

 核と放射線の安全食料安全保障エネルギー安全保障捕虜と連れ去られた人たちの解放領土の一体性・世界秩序の回復ロシア軍の撤退と戦闘の停止正義の回復環境の保護エスカレーションの防止戦争終結の確認

 抽象的な項目の中で、実際の停戦・和平協議では⑥が焦点になります。そしてこれにはロシアとの合意(妥協)が必要であることは言うまでもありません。

 そもそも戦争の一方の当事国が相手国を排除して行う会合が停戦・和平協議の場になりえないことは明白です。
 停戦・和平協議は第三者が仲介し、ウクライナ、ロシア双方が出席して行われなければなりません。そうでなければウクライナが自国への支持・支援拡大を図る場でしかありません。

 ロシアの軍事侵攻(2022年2月24日)から2年3カ月余。グローバルサウスの国々は早くから停戦を主張していました(2022年9月24日のブログ参照)。また、第三者(国)による「和平案」も何度か提唱されました。

 たとえば、▶「中国の12項目和平案」(23年3月4日のブログ参照)▶「ブラジル・ルラ大統領の和平案」(23年4月25日のブログ参照)▶「ローマカトリック教会・フランシスコ教皇の和平工作」(23年5月18日のブログ参照)▶「アフリカ代表団の和平提案」(23年6月21日のブログ参照)▶「フランシスコ教皇の停戦協議推奨(いわゆる「白旗」発言)」(24年3月14日のブログ参照)。

 これらの和平案・和平工作に対し、ゼレンスキー氏はことごとく反対・反発してきました。「ロシアの全面撤退」が前提条件だという主張です。
 しかし、「ロシアの撤退」は停戦・和平協議の「出口」であって、それを「入口」にする限り和平交渉が始まらないのは自明です。

 ゼレンスキー氏提唱の「サミット」への欠席を表明した中国は、ブラジルとの間で、ウクライナ、ロシア双方が参加する和平協議を支持することで合意していると報じられています(3日のNHK国際報道2024、写真右)

 本来、仲介の役割を果たすべきは国連やOSCE(欧州安全保障協力機構=2014年の「ミンスク合意」を仲介)など中立的な国際機関です。しかしそうした動きがまったくみられません(報道されていない)。それが最大の問題です。

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