アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「天皇訪英」に政治利用の疑惑

2024年06月21日 | 天皇制と日本の政治・政権
  

 徳仁天皇・雅子皇后が22日から29日までイギリスを公式訪問します。イギリス政府の招待によるもの。それに先立ち、19日記者会見し、訪英への思いを語りました(写真左)。

 そもそも天皇はじめ皇族の公式外国訪問(皇室外交)は、天皇の国事行為を定めた憲法や皇室典範には規定のないもので、国事行為と私的行為のあいだの「公的行為」として行われます。それは、法律の定めを超えて天皇・皇族の活動を広げるものです。

 加えて今回の訪英は、2つの意味で、日英政権による政治利用の疑惑が濃厚です。

 1つは、イギリス総選挙の真最中に行われることです。

 英下院はすでに解散されており、天皇が訪問を終える29日の5日後、7月4日に投票が行われます。スナク首相率いる保守党は支持が低迷し、14年ぶりに労働党への政権交代の可能性が大きいと報じられています。

 そうした政治戦の中での天皇・皇后訪問。英王室による晩さん会はじめ歓迎行事にはスナク首相も参加し、現政権へのイメージアップの役割を果たすことが予想されます。

 もう1つは、日本とイギリスの軍事提携の促進です。

 共同通信によれば、「木原稔防衛相は7月下旬に英国を訪れ、日英防衛相会談を実施する方向で調整に入った」(17日付京都新聞)といいます。「日英とイタリアの3カ国で進める次期戦闘機の共同開発に向け連携を強化。開発管理を担う国際機関「GIGO(ジャイゴ)」を2024年度中に英国に設立するのを控え、円滑な事業推進へ協力を確認する目的」(同)です。

 徳仁天皇は19日の記者会見で、「現在、英国とは、経済、文化、科学技術、教育など、幅広い分野において緊密な協力関係を構築するに至っていますが…今回の訪問を契機として…友好親善が更に深まることを願っております」と述べました(宮内庁HPより)。

 日本とイギリスの「緊密な協力関係」は、天皇が挙げた分野だけでなく、軍事面においてもまさに「幅広く」進展しています。すでに自衛隊と英国海軍の共同訓練は行われていますが、それに加え戦闘機の共同開発で「緊密な協力関係」を構築しようとしているのが現在の防衛省・岸田政権です。

 来月行われる木原防衛相の訪英、日英防衛相会談は、天皇の訪英によって地ならしされた「日英親善」の世論の中で行われるのです。

 また天皇は19日の記者会見で、「先の大戦においては…我が国と英国も、不幸にも戦火を交えることになったことは、誠に残念なことでした」などとひとごとのように述べ、祖父・天皇裕仁の戦争責任棚上げを繰り返しました。

 皇室と英王室は歴史的に深い関係にあります(2022年6月13、14日のブログ参照)。徳仁天皇も皇太子時代の英留学で親しく接したという故・エリザベス女王は、裕仁の戦争責任棚上げに手を貸してきた経過があります(写真右)(22年9月19日のブログ参照)。

 徳仁天皇の今回の訪英は、こうした皇室と英王室の関係にまた新たな1ページを加えるものですが、それだけでなく、日英の軍事協力、さらには日本とNATO(北大西洋条約機構)の急接近という軍事情勢と無関係でないことに留意する必要があります。
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