アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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政治改革は小選挙区制廃止・完全比例代表制導入で

2024年06月26日 | 日本の政治・社会・経済と民主主義
   

「政治の劣化が著しい。国会の審議にしても政治資金の在り方にしても、何も変わらないままだ。国会議員に改革しようという気持ちがないからで、突き詰めていくと、こういうやる気のない議員しか選べない選挙制度の問題に行き着く」(15日付京都新聞夕刊=共同配信)

 通常国会閉会を前に、大山礼子・駒沢大前教授(政治制度論)がこう指摘していました。
 まったく同感です。メディアは今度の国会を「政治改革が焦点」などと評していましたが、選挙制度を変えないで「政治改革」などありえません。

 大山氏は具体的な提案を行っています。

<衆議院> 現行=小選挙区とブロック比例 ⇒ 定数5か6の中選挙区制にし、比例代表で当落を決定
<参議院> 現行=小・中選挙区制と全国比例 ⇒ 都道府県単位の選挙区を廃止し、全国比例を9ブロックに分割

 大山案のポイントは、衆参ともに①小選挙区制(1選挙区で当選者1人)を廃止する②比例代表制を基本とする―です。
 この2点はまさに選挙制度改革の要諦です。

 小選挙区制(小選挙区比例代表並立制)が導入されたのは1994年ですが、それより前から小選挙区制の弊害に警鐘を鳴らし続けている学者がいます。自民党の裏金追及の口火を切った上脇博之・神戸学院大教授です。

 上脇氏は憲法の議会制民主主義の原則に立って選挙制度はどうあるべきかを指摘します。

「代議制・議会制が民主主義と結び付いて議会制民主主義になるためには、(直接)民主制によって国家の意思形成が行われるのと可能な限り同じになるよう議会を構成することが要請されます。…議会制民主主義であるためには、国民の意思が議会に反映されること、すなわち、できるだけ死票が生じないようにし、かつ議会(国会)を「国民(投票者)全体の縮図」にすること(民意を正確・公正に国会へ反映すること)が要請されるのです」(『ここまできた小選挙区制の弊害』あけび書房、2018年)

 この原則から、上脇氏が指摘する小選挙区制の最大の欠陥は、膨大な死票を生むことです。そしてそれは投票率の低下を招きます。自分の票が死票(無駄)になる可能性が大きければ投票意欲がそがれるのは当然でしょう。

 上脇氏の前掲書によれば、第2次安倍晋三政権を誕生させた2012年12月16日の総選挙は、死票が有効投票の53・0%(約3163万票)にのぼりました。その結果、自民党は得票率43・0%で、79%の議席を獲得したのです。
 上脇氏は、小選挙区制こそが、「アベ「独裁」政権誕生の元凶」だと断言しています。

 では、小選挙区制に代わって、どのような選挙制度を導入すべきか。上脇氏はこう指摘します。

憲法上の要請に最も的確に応えられるのは、比例代表制しかないでしょう。比例代表制は、最も中立・公正でもあります。衆参のいずれの選挙制度も比例代表制にすべきです。その際、全国1区の比例代表制(完全比例代表制)が投票価値の平等を保障する点でも最適です」(前掲書)

 比例代表制の方法は大山氏と上脇氏で違いはありますが、比例代表制を基本とすべきだということは共通しています。

 小選挙区制を廃止して、比例代表制に代える。それによって死票はほとんどなくなりすべての投票が価値を持つ。そして、有権者の多様な意思・価値観を代表する議員が国会に現れる。女性の議会進出を阻んでいるのも小選挙区制です(2021年10月19日のブログ参照)。

 完全比例代表制こそ主権在民の憲法原則に沿った選挙制度です。それが実現すれば、腐りきった自民党が政権の座に居座り続けることはできなくなるでしょう。

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