アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

沖縄・生え抜き書店の閉店で危ぶまれること

2024年06月01日 | 沖縄・メディア・文化
   

 先日久しぶりに沖縄へ行った際、時間を見つけて県庁前の商業施設パレットくもじ7偕にあるリブロ・リウボウブックセンター(リブロBC)(写真左)に寄りました。立地の良さもあり、那覇に住んでいたときはよく行きました。沖縄県内で百貨店にある唯一の書店です。
 そのリブロBCが昨日(5月31日)で閉店になりました。

 沖縄県内の出版事情に詳しい新城和博氏(ボーダーインク編集者)によれば、リブロBCの前身は、米統治下の1950年に沖縄の教職員会が中心となって設立した文教図書。教科書、教材、文具、スポーツ用品の供給から始まり、次第に一般書籍も販売するようになりました。1991年にパレットくもじ(写真中は1階の入口)内の百貨店リウボウに移りました。

 リブロBCの最大の特徴は沖縄県産本を数多く集めた「沖縄・郷土本コーナー」です。沖縄の出版社の多くは、自分たちで書店に直接配本するか、地元の流通会社を通じて配本しています。新城氏はこれを「文化の地産地消」と言います。そして「沖縄・郷土本コーナー」の存在は、「本屋のおける御嶽(うたき)」だと。

 1980~90年代には、国際通りにも「本を探してはしごするほど」(新城氏)書店があったといいます。

 リブロBCの閉店に対し、新城氏はこう述べています。

「「沖縄・郷土本コーナー」を大切にしてくれた沖縄の書店は、本を媒介して人々の生活を支え、その文化・歴史をつなぎ続けてくれた。
 どんな書店にも思い出があり、無くなるのは寂しい。それでも今回のリブロBC店閉店の知らせは、やはり重く受け止めてしまう。
 文教図書からリブロがつないだ沖縄の書店の歴史の流れは、このまま終わるのだろうか。それとも街角のざわめきのなかに新しい書店が返り咲くことはあるのだろうか」(新城和博氏「沖縄書店の変遷 “文化の拠点”はいま」、琉球新報5月3日・7日付より)

 書店の減少はもちろん沖縄だけの問題ではありません。

 業界団体によると、2013年度に全国で約1万5600店あった書店は、10年間で約4600店減少。「書店ゼロ」の市町村は全国で28%にのぼり、沖縄、長野、奈良の3県は市町村の5割以上が「書店ゼロ」です(5月19日付京都新聞)。

 沖縄の「県本・郷土本コーナー」は他の都道府県と比べて、質・量ともに格段に充実しています。それは沖縄の苦難の歴史(琉球国に対する日本の侵略、沖縄戦、敗戦後の米国統治など)、現在の米軍基地集中、自衛隊ミサイル基地化など軍事植民地化、構造的差別とけっして無関係ではないでしょう。

 沖縄の書店の「県本・郷土本コーナー」はそうした歴史と現実を告発し、その事実・知識を県内外に発信する場であり、書籍・出版を通じてたたかう人々の活動の場なのです。

 新城氏が懸念するように、リブロBCの閉店がそうした沖縄の出版・書店文化の衰退に拍車をかけるとすれば、それは沖縄にとってきわめて残念であるだけでなく、「本土」の日本人にとっても非常に大きな損失となるでしょう。

 書店文化を守り発展させる英知と政策が求められています。
 

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