アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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天皇英国晩さん会「あいさつ」5つの問題点

2024年06月28日 | 天皇制と憲法
   

 徳仁天皇は日本時間26日午前(現地時間25日夜)、訪問先のロンドン・バッキンガム宮殿で、チャールズ国王夫妻主催の晩さん会であいさつしました。日本のメディアは「(両国の)関係発展や両国民の幸せを願い…」(27日付京都新聞=共同)などと最大限賛美していますが、実はきわめて問題の多い、しかも危険性を含むものでした。問題点を5点挙げます(カッコの引用は共同配信の「あいさつ全文」より)

1、日本の侵略戦争の責任棚上げ

  「日英両国には、友好関係が損なわれた悲しむべき時期がありましたが…」

 15年戦争(太平洋戦争)における日英交戦の歴史を述べたものですが、「悲しむべき時期」を招いたのは帝国日本の侵略戦争です。その責任を棚上げし、ひとごとのように述べることは、重大な歴史的事実の隠ぺいにほかなりません。

2、天皇裕仁の戦争責任に対する市民の抗議を隠ぺい

  「私の祖父は、1917年の晩さん会で、日英両国の各界の人々がますます頻繁に親しく接触し、心を開いて話し合うことを切に希望し…」

 裕仁の訪英が友好的だったかのような言いようですが、事実は違います。このとき裕仁はイギリスを含め欧州7カ国を訪れました。

「訪問した7カ国、とくにオランダ、西ドイツ、イギリスでは、憤慨したデモ参加者が彼(裕仁)の車列に物を投げつけたり、侮辱したりした。彼らは天皇を平和の象徴とは認めず…ヨーロッパでの抗議運動は、「戦争責任」がまだ過去の問題になっていないことを改めて教えた」(ハーバート・ビックス著・吉田裕監修『昭和天皇下』講談社学術文庫2005年)

3、天皇明仁にも向けられた非難・抗議を隠ぺい

  「私の父は、1998年に同じ晩さん会で日英両国民が…手を携えて貢献していくことを切に念願しておりました」

 明仁訪英時にも、天皇の戦争責任を追及する声は収まっていませんでした。元英国軍捕虜たちは、バッキンガム宮殿に向かう天皇の車に「背を向けて抗議」(22年9月16日付朝日新聞デジタル)したのです(写真右)。

 そんな明仁に救いの手を差し伸べたのはエリザベス女王でした。歓迎晩さん会でのスピーチで女王は、「いたましい記憶は今日も私たちの胸を刺すものですが、同時に和解への力ともなっています」などと述べ(同朝日新聞デジタル)、「和解」を強調したのです。

4、自民党政権の「政治・外交」を賛美する政治発言

  「われわれの時代においては、国王陛下からも言及があったとおり政治・外交、経済、文化・芸術、科学技術、教育など、実にさまざまな分野で…日英関係はかつてなく強固に発展しています」

 「水」やアニメの話をしている分には実害はないとも言えますが、この発言は見過ごせません。「政治・外交」を含めて両国関係を称賛することは、自民党政権によるイギリスとの政治・外交関係、すなわちG7(西側陣営)の一員としての「政治・外交」を賛美したものであり、天皇の政治的関与を禁じている憲法(第4条)に抵触する疑いがあります。

5、日英軍事協力推進を後押しする危険

  「今後とも日英両国が…永続的な友好親善と協力関係を築いていくことを心から願っています」

 この発言の危険性は、天皇の前に行ったチャールズ国王のスピーチとの関係で見る必要があります。天皇自身、4で引用したように、「国王陛下からも言及があったとおり」と、チャールズ国王のあいさつを念頭に発言しています。チャールズ国王はこう述べました。

  「日英両国は共通の安全保障のために、かつてないほど緊密に協力しています。…両国は、ハイレベルな軍事演習を行い、専門的知識を共有しています。…防衛と産業界の協働に至るまで…このような共通の努力のすべてを支えているのは…日英両国民間の永続的な絆です」

 あけすけに軍事協力を賛美し、いっそうの強化を主張しています。このチャールズ発言に呼応して日英間の「協力関係」を「心から願っ」た天皇のあいさつは、日英間の軍事協力(軍事演習、兵器開発など)の強化を客観的に後押しするきわめて危険な役割を果たしています。
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