アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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ハンセン病入所者への人体実験「紅波」の徹底追及を

2024年06月27日 | 差別・人権
  

 戦時中、国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園(熊本県合志市=写真右)の入所者に対し、陸軍の機密研究によって、「紅波」という薬剤(写真左)を使った人体実験が行われていました。

 同園の自治会や熊本日日新聞、京都新聞の情報公開でその一端は分かっていましたが(2023年6月24日のブログ参照)、より詳しい実態が24日に同園が公表した中間報告書で明らかになりました。25日付の熊本日日新聞と京都新聞の同時掲載記事が報じました。その概要は以下の通りです。

<「紅波」投与の臨床試験は1942年12月~47年6月まで少なくとも4回行われた。初回だけでも当時の入所者1157人の3分の1に投与。全体で被験者は472人、投与された可能性も含めると842人に上る。被験者の年齢は6歳~67歳

「紅波」は発熱やおう吐などの副作用があり、試験中に少なくとも9人が死亡した。

 塗り薬や筋肉注射のほか、尿道、肛門、膣など「体内に入りさえすれば、どこからでも薬剤を入れていたように感じられた」(入所者の証言)。

 被験者は錠剤を宮崎松記園長の前で服用しなければならず、拒絶することができなかった

 43年11月には副作用を恐れ、投与を拒否する入所者が続出したが、中止しなかった

 報告書は、こうした行為は64年に世界医師会採択したヘルシンキ宣言の「医薬品の臨床試験の実施基準」に抵触すると言及した。

 「紅波」は、感光剤を合成した薬剤。旧陸軍第7陸軍技術研究所の機密研究で、「極寒地作戦での人体の耐寒機能向上」などが開発目的。研究を嘱託された宮崎松記園長や熊本医科大教授らは京都帝大(現京大)医学部出身。>(25日付熊本日日新聞・京都新聞)

 朝日新聞によれば、「報告書は、入所者に十分な説明がなされなかった▽医師への遠慮で試験参加の拒否を訴えることができなかった▽薬剤の効果について正直な感想を入所者が述べることができなかった▽副作用について何らの補償もなされなかった▽実施にあたり病理学・薬理学的な根拠が不足していた―など9項目を問題点として指摘する」(25日付朝日新聞デジタル=写真も)。

 驚くべき実態です。藤野豊・敬和学園大教授は、「虹波の治験という非人道的な行為が、隔離された療養所という環境の中で行われた。新たな人権侵害として国の責任が問われるべきだ」(22年12月5日付京都新聞)と指摘していました。

 この問題は、ハンセン病入所者に対するあからさまな差別・人権蹂躙であるとともに、旧日本軍の残虐性、さらに京都帝大(現京大)の責任も絡んだ根深い問題です。また、ハンセン病療養所と天皇制(皇室・皇族)の関係も見逃すことはできません(23年6月24日のブログ参照)。
 重大な歴史の闇です。真相を究明し、国はじめ関係者の責任を徹底追及しなければなりません。

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