アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「渋沢栄一1万円札」に無批判な日本社会

2024年06月12日 | 日本人の歴史認識
  

 新紙幣発行まで1カ月を切った、と各種のメディアが報じています。「新紙幣対応 企業は悲鳴」(7日付京都新聞=共同)など、システム上の問題や市民の反応が中心です。

 新1万円札の「顔」となる渋沢栄一が30年暮らした東京都北区では、「官民あげて様々な企画で(渋沢の)功績をPRし、盛り上がっている」(7日付朝日新聞デジタル)といいます。

 渋沢が福沢諭吉に続いて日本の最高額紙幣の「顔」(いわば貨幣経済の象徴)になることについて、日本のメディアも市民も何の批判もせず、むしろ歓迎しています。

 しかし、韓国は違います。安倍晋三政権が渋沢を次の「顔」と決めた時(2019年)から、厳しく批判をしてきました(2019年4月11日付のブログ参照)。

 「渋沢栄一を図柄にした紙幣は1902年から04年の大韓帝国下で発行された経緯があり、韓国メディアは9日、日本の紙幣判断を批判的に報じた聯合ニュースは、当時紙幣を発行した第一銀行頭取を務めた渋沢栄一を『韓鮮半島で経済侵奪した象徴的人物』などと伝えた。渋沢栄一が設立した第一銀行は02年に1㌆券、5㌆券、10㌆券の3種類を当時の大韓帝国下で発行した。聯合ニュースは日本が軍事的圧力を背景に紙幣の流通を図ったと指摘し『植民地支配の被害国への配慮が欠けているとの批判が予想される』と主張した」(19年4月10日付日経新聞)

 また、東亜日報も渋沢の起用は「愛国心を強調する安倍晋三首相の政治哲学と合致する」とし、中央日報は、渋沢が初代韓国統監だった伊藤博文と「親友」だったと強調しました(19年4月10日付朝日新聞デジタルより)。

 なぜ韓国メディアは渋沢が1万円札の「顔」になることを批判したのか。それは渋沢が銀行や鉄道によって、あるいは朝鮮半島に進出した日本企業の後ろ盾として、半島の植民地支配を推進した中心人物だったからです。

 渋沢は親友だった伊藤博文と二人三脚(伊藤が政治、渋沢が経済)で、朝鮮半島の植民地支配を強行しました(植民地支配において渋沢が果たした役割については、19年10月3日付、21年2月16日付のブログ参照)。

 現在の1万円札の「顔」である福沢諭吉も、強烈な朝鮮差別者、朝鮮侵略論者でした(福沢の正体については、2018年2月3日付、同3月1日付ブログ参照)。

 2代続けて朝鮮半島侵略・植民地支配の中心人物を最高額紙幣の「顔」にする。ここに、日本がいかに侵略戦争・植民地支配の加害の歴史に無反省であるか、たんに無反省であるだけでなく、朝鮮半島の人々を新たに傷つけて恥じない国であるかが象徴的に表れています。

 それは日本政府だけでなく、渋沢や福沢の正体や彼らを紙幣の「顔」にすることを批判的に報道・論評しないメディア、そして渋沢や福沢を賛美する日本社会全体の共同責任です。

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