アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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佐渡島金山・世界遺産推薦の不当性示す「朝鮮人名簿」隠ぺい

2024年06月10日 | 侵略戦争・植民地支配の加害責任
  

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関は6日、自民党政権が執拗に世界文化遺産登録を狙っている「佐渡島(さど)の金山」について、補足説明を求める「情報照会」を勧告しました。

 重要なのは、勧告が「説明や展示にあたっては明治以降を含めた全体の歴史を扱う配慮を求めた」(6日付朝日新聞デジタル)ことです。なぜなら、この勧告に従うなら、帝国日本が植民地支配していた朝鮮人を強制動員し過酷な労働を強いた歴史の説明が必要不可欠だからです。

 韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」の報告書(2019年)では、「佐渡金山での朝鮮人強制動員は1939年2月に始まった。以後、1942年3月まで6回にわたって1005人を募集で連れて来るなど、計1200人を強制動員した」とされています。

 強制動員の実態を解明する上で、有力な資料となるのが金山の「朝鮮人労働者名簿」です。

 ところが、この名簿の公表をめぐって重大な事態が起きていると、朝日新聞の「多事奏論」(田玉恵美論説委員)が2回(23年12月、24年4月)にわたって報じています。要点は次の通りです。

 歴史研究者の竹内康人氏が23年4月、新潟県立文書館に、鉱山会社(三菱鉱業=現三菱マテリアル)が所蔵していた「半島労務者名簿」の閲覧を申請した。

 ところが同館は、1983年に(名簿)原本を撮影した写真(マイクロフィルム)があるが、所有者(三菱)の許可がなく公開していない、と答えた。

 田玉記者が同館を取材したところ、名簿の有無についても「答えられない」とした。それで田玉記者は情報公開請求した。24年4月にようやく文書が開示された。それによると、竹内氏に「名簿の写しはある」といったん認めたが、その6日後に、「慎重に対応すべきだった」と反省したという。この空白の6日間に何があったのか―。

 調べると、竹内氏が公開申請した3日後に、韓国の公共放送KBSが、「強制動員された朝鮮人の公式名簿が存在することが確認された」「公開は拒否」と報じていた。

 朝鮮人名簿がお蔵入りし、その存在すら伏せられていることについて三菱マテリアルに見解を求めると、「回答しない」という返事だけが戻ってきた。

 以上が朝日新聞記事の要点です。

 「空白の6日間」に三菱マテリアルと新潟県(花角英世知事)が共謀し(おそらく日本政府も関与して)、「朝鮮人名簿」の隠ぺいを図ったことは明らかです。

 「佐渡島金山」の世界遺産登録にとりわけ執着していたのが安倍晋三元首相です(22年1月29日、1月11日のブログ参照)。安倍氏の実兄・寛信氏は大学卒業後三菱商事に入社し、以後、同社(子会社含む)の幹部を歴任しました。

 植民地支配による強制動員の労働現場を、その事実を隠したまま、したがって反省も謝罪もないまま、世界遺産にするなど言語道断です。「朝鮮人名簿」の隠ぺいはその不当性を象徴するものです。

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