アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「停戦・和平協議」はグローバルサウスの仲介で

2024年06月19日 | 国家と戦争
   

 ウクライナのゼレンスキー大統領が呼びかけた「平和サミット」(スイス)が16日閉幕しました。「共同声明」は事前報道の通り、ウクライナが提唱する10項目の「平和の公式」のうち、3項目だけ盛り込んだものでした。

 ゼレンスキー氏としては大幅に譲歩したものですが、それでも支持したのは参加した100の国・国際機関のうち78カ国で、インド、南アフリカ、ブラジル(オブザーバー参加)、インドネシア、サウジアラビア、メキシコ、タイ、アラブ首長国連邦(UAE)などグローバルサウスの国々は軒並み支持を見送りました。

 注目されたのは、グローバルサウスの国々から、ロシアの参加を求める発言が相次いだことです。

「サウジアラビアのファイサル外相は「信頼できるプロセスにはロシアの参加が必要だ」と主張し、ケニアのルト大統領は「ロシアがテーブルについていなければならない」と訴えた」(18日付京都新聞=共同)

 UAEのアブドラ外相は「ロシアもこのサミットや和平に向けた交渉に参加していることが必要だ」と述べ(写真中)、メキシコのバルセナ外相も「ロシアをこの議論に含める外交努力がわれわれには不可欠だ」と主張しました(写真右)(17日のNHKニュースより)

 これに対しゼレンスキー氏は、「まず平和の公式に基づく行動計画をつくり国際的な承認を得て、それをロシア側に突きつけて交渉に引き出し、ウクライナ主導で協議を進める戦略」(18日付京都新聞=共同)に固執しています。これではロシアが参加するはずがありません。

 一方、ロシアのプーチン大統領は14日、「ウクライナ東部・南部4州からウクライナ軍が全面撤収し、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を放棄すれば直ちに攻撃を停止し、交渉を開始する用意があると述べ」ました(15日付京都新聞=共同)。

 ウクライナの「平和の公式」に対抗したものですが、これも、それを交渉の前提条件にしている限り正当な「和平提案」とは言えません。

 ウクライナ、ロシア双方が自分の主張を和平協議の前提条件にし、協議の主導権を握ろうとしています。これではいつまでたっても停戦・和平は実現しないでしょう。

 今回の「平和サミット」をめぐる以上のような動きで改めて明確になったことは、停戦・和平協議にはウクライナ、ロシア双方の参加が必要であり、しかもどちらも前提条件なしで協議に臨まねばならないということです。

 そのためには、中立的立場の第三者の仲介が必要不可欠です。

 本来、それは国連の役割でしょうが、いまの国連にはその力はないようです。
 そこで期待されるのがグローバルサウスの国々です。

 グローバルサウスに対してはウクライナもロシアも良好な関係を望んでいます。今回の「平和サミット」でみせた態度からも、グローバルサウスの国々は仲介者として適任ではないでしょうか。

 もちろん、グローバルサウスといっても一様ではなく統一した意思決定も難しいでしょう。しかし、1日も早い停戦・和平を実現するためには、その中立性と発言力に期待するほかないのではないでしょうか。

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