角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

去り行く友へ。

2008年08月18日 | 実演日記


今日の草履は、私が作ったものではありません。詳細は後ほど。

今年の五月でしたか、国籍がさまざまな外国人の若者がゾロゾロお越しです。ひとりのお若い女性が集合時刻などを指示し、若者たちは思い思いに散策をはじめました。そのお若い女性がひとり、実演席近くのベンチに腰を下ろしています。ちょっと興味があってお声をかけてみました。

聞いてみると若者たちは秋田市内の大学へ通う学生で、その日は「日本探索」を趣旨に角館散策なんだそうです。そして女性はと言うと、今春都内の大学を卒業したばかりの新米職員さんなんですね。どうりで学生たちと変らない年代に見えたわけです。
出身を訊ねると秋田市内、つまり東京からふるさとへ就職したんですね。女性は言いました。

『こっちから都内の大学へ行った友人が何人もいて、秋田で就職したい人もいたんですけど、思うように就職先が見つからなくて…。私は幸運でした』。
雇用の場が少ないと云われて久しい秋田県、私は女性の言葉を聞きながら頷くしかありませんでした。

今日都内からお越しの男性、昨晩宿泊したホテルで来月のお祭りを聞いたそうです。男性は、『県外に出てる人たちが、お祭りにずいぶん戻って見えるらしいですねぇ』。ほんとにそうなんです、角館に生まれ育った人たちが、たとえお盆に帰らずともお祭りには戻って来るんですね。
私がお返した言葉は、『あの人たちが全員角館で暮らせたらイイんですけどねぇ』。

エッセイ「父親稼業」その二十一に登場している、子ども五人の家族。帰郷して何年かは家族七人で頑張っていましたが、お父さんの収入がいかにも都会との差が大きく、やがてひとり東京へと戻っていきました。いわゆる単身赴任というやつですね。
その後お母さんは五人の子どもの面倒を見ながら、私と共に「はっぴい・マム」の設立に参加したり、別に赤ちゃんサークルの立ち上げなどに尽力しました。

お母さんは私のカミさんと同い年で、互いの子どもも同年代。小学校PTAでは同じ時期に同じ空気を吸い、部活が一緒の子ども送迎では互いに協力したものです。家も近くですからときに一緒に飯を食ったり、よくある家族ぐるみの付き合いが十年近く続いていました。

やがて子どもの成長と共にオヤジの存在が重要になり、『やっぱり一緒に東京で暮らそうと思って…』と言われたのが今年の初めでした。
私は子どもが一定の年齢に達するまで、家族全員が離れないことを「良し」と考えています。お父さんが単身東京へ戻ることを知ったときも、もし家族全員で戻ることを決意したら笑顔で送り出すつもりでした。
ただひとつ、子どもたちを田舎で育てたいとする両親の願いは、私も実によく分かるんです。結果そのときは、お父さんの単身上京となりました。

「今日の草履」は、私のカミさんが十日もかけて少しずつ編んだ草履です。もちろん贈る相手は五人の子どものお母さん、去り行く友へ「友情の草履」なんです。
土踏まずもつかない、形も決して美しくない草履なれど、込められた想いは私が日々編み続ける草履となんら変らない、むしろそれ以上かも知れません。

これでまたお父さんと一緒に暮らすことが出来ます。それはそれで嬉しいことなんですが、悔やまれるのは少ない雇用の場、そして賃金格差でしょうか。今の時代、子ども五人を安定的に育てる経済力は、並大抵ではありません。
東京への出立は明日午前、私は西宮家で草履を編みながら、彼らの健闘を祈りまたこれまでの縁に感謝したいと思います。

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青春の年代。

2008年08月16日 | 実演日記


今日の草履は、横浜市鶴見区からお越しくださったお若い女性のオーダー草履です。『茶系でおまかせっ!』がこちらになります。
「茶系」と聞いたとき、すぐにこちらの配色が頭に浮かびました。『気に入らない配色が届いても怒らないでくださいよ~』かなんか言ってましたが、実は少しばかり自信があったんです。
イメージ通り、和が活きたお洒落な草履と思います。

JRが発売している「青春18切符」、新幹線は使えないものの時間にゆとりのある旅にはかなり格安のようですね。名称に「青春」が付されていますが、もちろん年齢制限もないと聞きます。

十日ほど前でしたか、山口県からお越しの男性もこの切符で旅を続けていました。『竜飛岬まで行って、そこから南下してきたんです。リュックに寝袋を入れてますから、気のままに旅してますよ。去年で仕事から離れたもんで、これからはゆっくりですぅ』。
定年退職後、旅をご趣味とされている方がずいぶんいらっしゃいますね。「羨ましい」と云うにはまだまだ早い草履職人ですが、そんな方々の笑顔はいつも明るいです。

三日ほど前、やはりこの切符で旅している青年がお越しでした。『いやぁ~、ナニを作ってらっしゃるんですかっ?』と笑顔で近づいて来た青年、聞けば来春就職が決まった都内に暮らす大学生と言います。
『春に名古屋の会社へ入るんです。そうなればもう旅行なんて言ってられませんからねぇ』と笑う青年。確かに社会人となれば学生気分では勤まらないでしょう。

『ずっと東京暮らしだったもので、名古屋に不安もあるんですけどねぇ』と言うので、『大丈夫、健全な肉体と精神さえあれば、人間というものはちゃんと順応するもんダっ』と教えました。終の棲家を田舎に求める方々、あるいは老後を子ども頼りに都会へ出る方々との、これまでのおしゃべりでも明らかですね。
青年は、『そうっスかっ、なんか安心しましたぁ』。

実演の写真を撮りたいと言うのでOKすると、ファインダー越しに『いやぁ、なんか職人みたいっスねっ!』。
これこれ青年、「○○みたい」というのは「実際は異なるがとてもよく似た様」を言うものですよ。これでも私は草履職人を自認しているんですからねぇ。そういうのは大学でちゃんと覚えてもらわないとっ(笑)。

昨日のこと、八戸市からひとり旅を愉しんでいるお若い女性がお越しです。興味がありそうに立ち止まったので、実演ベンチに招きました。
女性は昨年まで大学生で、今年から会社勤務がはじまったそうです。『お盆休暇に実家へ行ってもたいしたことがないので、ひとりで歩いてますぅ』と笑う女性。はじまったばかりの「仕事」に若干の不安があると言います。

『一番好きなのは写真と編集なんですけど、就いた仕事はぜんぜん関係ないんです。なんか、ほんとにやりたくてやっているのかさえ…』。若者によくある悩みですね。
『仕事にするのは二番目に好きなこと、一番好きなことは大切にとっておくのがイイよ。仕事にしてしまえば苦労が付き物だから、そんなとき一番好きなことが助けてくれるでしょ』と教えると、『(草履を編むのは)二番目に好きなことですか?』と訊かれました。
私の答えは、『はははっ、一番になっちゃったかもっ』。

五年前にこの草履の第一号作品が完成して、その後人生が大きく変った話をしました。『四十を過ぎて新しい仕事に向かった人もいるんだからっ』と笑うと、気分がほぐれたのか女性は草履をオーダーし旅の続きへと出掛けました。

自由闊達に過ごせるのをひとまず「青春」と呼ぶのであれば、それは学生時代と定年後かも知れませんね。
フランスの諺、『結婚生活がバラ色なのは、最初の一週間と晩年の一週間である』。あれっ、ちょっと意味が違いますか!?
大学とは無縁の草履職人ですから、そのあたりはご容赦を…。

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スペインのわらじ!?

2008年08月15日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
紺基調の井桁プリントをベースに、合わせはエンジです。過去にも新柄で登場したこちらのベース、この夏またあらたに入荷しました。はじめて見たときからこの柄のファンだった草履職人、嬉しい再会となりました。やっぱりイイですね、紺の和柄。
そして平生地はこちらになります。



「今日の草履」は出来上がってすぐ、茨城県に生まれ、東京で角館の男性と知り合い、現在は都内でご主人の親御さんとも一緒にお暮らしの女性がお買い上げです。
ちょっとややこしいですが、結婚を契機に生活が一変する方、案外多いですよね。

さすがはお盆です。夏休み旅行に加え帰省客が多いですから、実演席でも実に多くの出逢いが生まれています。詳しくは今後ご紹介するとして、今日はやはりご結婚で生活が一変したスペイン在住のご夫婦をご紹介しましょ。

奥様は神奈川県のご出身で、ご主人がスペイン人でした。ご主人はとにかく日本の文化に関心が高く、私の実演を観ながら奥様が通訳として大活躍してくださいました。
そんなおしゃべりの中、『スペインにも縄と布で作る履物があるらしいですヨ』と奥様。今度は私の質問に奥様が通訳してくださり、ご主人から出来る限りの情報をもらいました。
そしてネットで調べて出てきたのがこちらです。なんかとてもお洒落で、私たちが云う「草履」や「わらぐつ」とはまったく別の印象ですね。

日本文化が大好きなスペイン人のご主人に、今晩行われる角館の送り盆行事を見せたいと思いました。それを奥様に通訳してもらおうと思ったところ、『国民宿舎に泊まるのに時間が決まってて、それは彼に教えないでおきますぅ』。

きっとこちらのご主人、気になるものが見つかると「計画」というものが消えてしまう性格なのかも知れませんね。

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浪花節だよ人生は。

2008年08月14日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
エンジ基調の和柄プリントをベースに、合わせは茶色基調の小花プリントです。同系色合わせのこちら、和のお洒落感が存分に出ましたね。綺麗な草履と思います。
そしてベースの平生地がこちらになります。



今年は雨のお盆になりました。今朝降り始めた雨はときおり土砂降りの様相で、こんな天気が週末まで続くようです。カラカラに乾いていたところへの雨、ある意味恵みの雨とも言えますが、気になるのは今晩から連続する夏祭りなんですね。
三年前までこうしたイベントへ玩具で出店していた私は、今日の昼にはドンパン祭りのテント設営があり、夜は田沢湖芸術村の夏祭りでした。

草履職人となって玩具出店を取りやめた今、立場としたらただのお客さんです。天気が悪ければ行くも行かないも自由、でもどうしても頭をよぎるのはかつてのスタッフ側の目線なんですね。『他人のことなんかオレには関係ねぇ』とは、なかなか思えないわけです。

例年のことながら、展示パネルの在庫が数えるほどになりました。お持ち帰りできない場合はオーダーとなり、毎日三足ほどをご注文の草履に向けています。
今日、定番配色①のご注文草履を編み終え、「ご売約品」の札を下げて展示しておりました。そこへひとりのおばさまがお越しになり、『あら~、その配色がイイわねぇ。んっ、売約品なの!?また作ればイイじゃない、あたしにそれ譲ってっ』。

こうした会話は年に何度かあるんですが、やはりそれは出来ない相談でしょう。『待ってくれてる草履ですから、スイませんねぇ』とお応えすると、だいたいの方は順番をお待ちくださるか、在庫の中から選び直してくださいます。
こんなとき、たとえば『誰にも言わないでくださいよぉ』かなんか言って、売約品の草履をお譲りしたとしたら、そのお客様はお喜びになるでしょうね。でもやっぱり私には出来ないんですよ。

二週間ほども前でしょうか、数人のおばさまが実演席の前を通り過ぎました。その中のおひとりに見覚えがあって、少し考えて思い出しました。双子の娘たちが小学校に新入学した当時の教頭先生だったんです。
こちらの教頭先生とは一年間だけのお付き合いでしたが、今でも忘れられない言葉があります。

入学式からずいぶん日が経ち、いろんなPTA活動に参加していました。やがて冬になると、教頭先生から一通の「ご案内」が私宛に届いたんです。詳しい中身までは憶えていませんが、なんとかと言う「PTA研修会」の案内でした。
文面を熟読し、教頭先生が私に期待感を持って案内をくださったことは分りました。多少の無理をすれば、日程的にも参加出来ないことはなかったんです。熟慮の結果私が出した答えは「不参加」、教頭先生にはこんな内容の文書で回答しました。

『ご期待に沿うことが出来ず申し訳ありません。私はついこの間小学校PTAに加えていただいたばかりの身、そんな一年坊主が諸先輩を差し置いて参加するのは、どうしても気が引けます。決して参加したくなくての結論ではありません。どうかご理解ください』。

その後三月の年度末慰労会の場で、たまたま教頭先生と近くの席に座りました。ここでまたあらためて「不参加」を口頭でお詫びしたものです。すると教頭先生は朗らかに笑いながら、『浪花節のようなお父さんですねっ』。
後にも先にも私を“浪花節”と評したのは、こちらの先生おひとりでしょうか。

いまでもときどき自身の融通の利かなさを感じるとき、このときの言葉を思い出しています。

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田舎暮らしのリスク。

2008年08月12日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
和調の縦縞プリントをベースに、合わせは赤茶の漢文プリントです。和調の落ち着いた明るさが出ましたね、綺麗な草履と思います。
今朝こちらのベース生地を裁断していて、このまま平生地状態もお見せしたいなぁと思いました。それがこちらです。



これからもときどきこうして平生地をご紹介したいと思っています。

もう一ヶ月ほども前でしょうか、仙北市西木町で五十年近くを過ごしたというおばあさんがお越しでした。かつては商いをされていたそうですが、ご主人が他界しご自身も体調を崩されてから、娘さんが嫁いだ東京都板橋区にお住まいだそうです。
『東京サ行ってがら、もう十年もなるぅ』とおっしゃってましたから、おそらく七十歳代と思います。

慣れ親しんだ田舎を離れての都会暮らし、『帰って来でぇと思わねんシか?』とお訊ねすると、おばあさんはしばし考えました。
『うん、んだなぁ、五十年近くも暮らした土地だもの、やっぱり恋しぐなるぅ。んだどもなぁ、東京サいれば病院も近いしスーパーも近い、年寄りには案外イイどごろだよぉ』。

おばあさんのこの言葉を聞いた瞬間、ちょっとだけ「意外」を感じました。都会暮らしの長かった方が、終の棲家に田舎をお選びになる話はいくつもあります。私はそんな「田舎像」を少なからず誇りに思っていますし、少なくとも私が将来都会で暮らすなんてことは想像すら出来ません。

でも少し考えて私は思いました。確かに高齢者には、都会のほうが暮らしやすい面が多々あるんですね。
おばあさんが永年過ごされた仙北市西木町には、診療所がひとつあるだけです。学校も統廃合が進み、大きなスーパーもありません。住民の足であった秋田内陸縦貫鉄道は、累積赤字の負担増から廃線が云われています。
こうした田舎の現状と都会暮らしの今、どちらを取るか言われたときに都会を選ぶ方がいないと言い切れるでしょうか。特に緊急医療体制は高齢者にとって、いや年齢は関係ありませんね、住民すべてにとってまさに“生命線”と思うんです。

一週間ほど前、角館で商いを営む女性が急逝しました。享年52歳、心筋梗塞による急死です。私は親しいというほどの付き合いはなかったですが、互いの存在を知り行きかうときには挨拶を交わす、そんな女性でした。
深夜突然体の不調を訴え、家族が救急車を呼びます。しかし救急車はその後二時間に渡り発進することはなかったそうです。詳細を知らない私が推測を口にするのは軽々でしょうが、受け入れるに十分な病院が近くになかったんじゃないでしょうか。

27年前、8月13日未明に体の不調を訴えた私のオヤジは、目と鼻の先にある角館総合病院に搬送されることはありませんでした。三つ町を隔てた旧六郷町の個人病院で息を引き取ったオヤジ、享年52歳。明日、命日を迎えます。

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ある病気との闘い。

2008年08月11日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
黒基調のカラフルプリントをベースに、合わせは同柄のピンクです。「可愛い」と言っても和柄とは違う、なんと言いますか「メルヘン」の世界でしょうかね。ベースの布地は「星空」がイメージされます。

そう言えば、昨日初対面を果たしたmasatoさんの娘さんが言ってたそうですよ、『秋田は星が綺麗っ!』。都会からお越しの方は「空気」もそうおっしゃいますね、『空気(風)が綺麗っ!』。
いつまでも遺すべき、日本の宝じゃないでしょうか。

夕方閉店近くにお越しは、五本指ソックスに下駄履き、さらには風呂敷包みを背負った麦藁帽子のおばあさん。いかにも「草履好き」にいそうなタイプとお見受けしました。
お言葉は標準語に若干の訛りがあります。こうした場合ふたつのタイプがあって、当地のご出身で県外生活が長かった方と、県外ご出身で当地暮らしが長い方ですね。お話を伺うとこちらのおばあさんは前者、当地のご出身でドイツと東京に長くお暮らしだったそうです。

お見受けしたとおり、『こういうのに出くわしたかっ。あぁ、ハマりそう…』とおっしゃりながら、おともだちの分も含めて三足お買い上げです。
こうしたタイプのお年寄りは、まず間違いなく口が悪いんですね。お金を払うときも、『なんでそんなに高いのよっ、角館は少しモノの値段が高過ぎるんじゃない!?』。
その数分前試し履きされたときの、『そっか、なるほど。高いには高い理由ってものがあるわけだっ』の言葉で、“口は悪いが人はイイ”を確認していましたから、草履職人はそうした方こそおしゃべりしたくなるんですね。

おばあさんの言葉で気になったのが、『少し元気になったから出かけて来たのに、こんな買い物するとは思わなかったぁ』。
『どこか悪いんですか?』とお訊ねすると、『うつ病よ。かれこれ二年も人前に出られなかった。自分ひとりのためにご飯も作りたくないし、挨拶したくないから外にも出ない。郵便物なんて二年もそのままにしてたわよ。昔医療関係の仕事もしてたから、自分の病気は分るのよ。これだけで死にはしないってこともね』。

いきなりこの話を聞かされ、はじめはにわかに信じられませんでした。二年間も社会と隔離した生活をして、いよいよ「これではダメだ」と思い玄関先の草むしりをしたのがたった二週間前と言います。
その後スーパーへ買い物に行けるようになり、銀行や役所にも行き出し、そして二週間後の今日、私と出逢ったというわけでした。

この二年間、食料の買出しはもっぱら近くのコンビニだったそうです。それも人影が少ない深夜、昼の時間は必ず知った顔と出逢うため、愛想笑いさえツラかったんだそうです。
おばあさんは結局閉店まで実演ベンチで過ごされました。お帰り際、『また気が向いたら遊びに来てくださいよっ』と言うと、『そんなに何度も草履は買えないっていうのっ』。やはり口の悪さは筋金入りですね。

当地の星空はもちろん綺麗ですが、星空を見上げる人間は実にさまざまということでしょう。

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びっくりSunday。

2008年08月10日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
白黒のマス目プリントをベースに、合わせは紺です。縦縞プリントの場合、裁断の位置によって表面に出てくる色柄が動かされますから、案外気を遣います。こうしたマス目の場合は必ず黒と白が交互に出てくるので心配要りませんね。男女共にいける配色と思います。

今年の角館は人影が少し寂しい話を以前からしていますが、日曜や祝日に至ってもそうした状況の日があります。平日がいつも寂しいというわけではないにしても、やはり日曜日への期待度は大きいでしょう。
今年になって米蔵スタッフとの間に生まれた新語が“びっくりSUNDAY”。来客数や売上額が想定を上回る低さのときに、『今日はびっくりSUNDAYだなぁ…』ってな具合に使うわけです。

一日の時間帯で最もお客様が多いのは昼食時間、この時間帯を過ぎた午後二時くらいにこの言葉が使われます。今日の日曜日、少し久しぶりにこの言葉が出ました。
ところがところが、この言葉が出て間もなく実演席は一変します。

まっすぐ実演席を目指し歩いて見えた男性が開口一番、『今日のブログのトップニュースは私にしてくださいっ!』。
私のブログをお読みになっている方というのは分りました。でも草履のご愛用者かと言えば、お顔に憶えがありません。そして次の言葉で事情がすべて解けました、『masatoですっ!』。
当ブログにたびたびコメントを寄せてくださる、埼玉県のmasatoさんその人だったんです。どちらからともなく瞬時に固い握手をしていましたね。

大仙市神宮寺にご実家があるというのは存じていましたが、お盆前の今日お里帰りというのは知りませんでした。奥様と娘さんおふたりを伴って、ご実家の法要にお越しとのことです。
今晩のバーベキュー大会で肉の買い付けを任され、時間が少ないことであんまりゆっくりも出来ませんでしたね。それでも奥様には草履をプレゼントされていました。その草履が一昨日の「今日の草履」、その日のブログでは『中高年のおばさまが…』なんてことを書いてしまいましたが、masatoさんの奥様にはピッタリの配色と思いました。
次回お逢い出来るときは、もう少しおしゃべりしたいと願ってますよ~!

masatoさんご家族と入れ違いにお越しは、6月27日のブログでご紹介した盛岡市の男性。今日はお母上を伴って三度のご訪問です。
今日お話を伺ってはじめて知ったのですが、盛岡市へは転勤でお越しになっていて、本当のお住まいは東京にあるそうです。今日は東京のご親戚宅へ贈り物とのことで、ご家族分四足をオーダーくださいました。

転勤ですからいずれはまたほかの土地へ赴任されるんでしょう。やはり「縁」を感じずにはいられませんね。お母上の言葉が印象的でした、『どんなこともすべて縁なんですよねぇ』。
まったく同感であります。

その後時刻を確認するためケータイを取り出すと、群馬大会へ同行している長女からメールが入っていました。その内容は、『群馬のとーさんのともだちから、おやま囃子同好会にお菓子とかもらいました』。
なんと7月24日のブログでご紹介した伊勢崎市にお住まいのご夫婦が、ご声援のみならず角館高校の生徒たちへ差し入れまでお届けくださったとのこと。父親として、角館人として感謝に絶えません。深く深くお礼を申し上げます。

人の「縁」と「心」を、これほどいくつも感じる日はそうありませんね。私にとって今日の日曜は、まさに“びっくりSUNDAY”でした。

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角館を100倍楽しむ法。

2008年08月08日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
淡いピンク基調の桜&さくらんぼプリントをベースに、合わせはピンクのプリントです。文句なしに可愛い草履と思います。こうした配色は、案外中高年のおばさまがお選びになるから楽しいんですね。明日はお休みですから、あさって以降どんな方がお選びになるか、私も楽しみにしています。

今日も最高気温は30℃に達しました。関東以南からお越しの方は、『暑いといえば暑いけど、やっぱり向こうとは違うわよねぇ』とおっしゃいます。私たちは日中30℃を超えると『暑い~』と言ってしまいますが、今辺りが薄暗くなって外を吹く風は涼しささえ感じます。昨日は「立秋」、やはり日本には四季がありますね。

東京都文京区からお越しの女性ふたり旅、旅の前に角館をネットで調べ上げ、夕食のお店さえもご予約だったそうです。そのお店というのが、今年になって銀座から故郷に錦を飾った同期生のお店でした。『東京でもなかなか食べられないお料理でしたよっ』とおふたり。料理人であれ職人であれ、同期生が褒められるのはなかなか嬉しいもんですね。

実演ベンチにお座りになり比較的時間のある県外の方々に、最近よくお話しするのが「角館の楽しみ方」です。今日の女性おふたりにもお話し共感をいただいたのですが、それは「角館人と喋ること」なんですね。
場合によっては、気の合わない角館人と出くわすことがあるかも知れません。でもそのリスクを恐れてうわべだけ眺めて帰るのは、どうにももったいないというのが草履職人の考え方です。

つい先日、千葉県からお越しのお若いカップルとおしゃべりしました。男女とも見るからにフレッシュな可愛いカップルです。あれっ!?若者を指して「フレッシュ」なんて言葉、今どき使いませんかね。
まっ、それはそれとして、こちらのカップルにお話したのも「角館人と喋ること」。そしたらすぐに返ってきた言葉が、『あっ、さっきのおばさんもすんごくイイ人でしたぁ』。「さっきのおばさん」をよくよく訊いてみると、西宮家がっこ蔵のおばさんのことなんですね。
『あのおばさんには、母の日にお客さんから花が届くんだよ』とお教えすると、おふたりとも『へぇ~、そうなんですかっ!』。

今日の女性おふたりから返された言葉は、『美術館の方もとっても親切だったし、夕食のお店の奥様もとってもよくしてくださいましたよっ』。
そうなんですね、角館を100倍楽しむ法は「角館人と喋ること」、そしてそのためには散策して歩くことが肝心と思うわけです。

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娘に弱いおやじ。

2008年08月07日 | 実演日記


今日の草履は、秋田県横手市にお住まいの男性のオーダー草履です。実はこちらの男性、7月27日のブログでご紹介した市民活動の広報誌を発行されている女性のご主人なんです。26日開催の「ちっちゃな夏祭り」へ奥様と共に訪れ、私が無理やり「うどん早食いレース」にも参加させてしまいました。

それから一週間ほど経って、奥様の草履を見ていたご主人がご自分用をお求めにいらしたというわけです。『このあいだは急に悪がったねぇ』と言うと、『いえいえ、楽しませてもらいましたっ』とご主人。とても礼儀正しい男性でしたね。
ご注文の草履は明日の便で出発です、お楽しみにお待ちくださいっ。

千葉県富里市からお越しのご家族、高校生ほどの女の子が草履をとても気に入ってくださいました。留守番らしい中学生の妹さんへお土産を主張し、お父さんもそれなら…と買ってくれることになりました。しかしお父さん、現金の用意がそれほどなかったようです。『近くに銀行はありますか?』とのことで、歩いて2~3分の銀行をお教えしました。
行き違いにお母さんが入って見え、『どうしたの?草履を買うの?』。すると娘さん、『そっ、お父さんに銀行へ行ってもらってるのっ』。

どこぞのお宅も、娘に頼まれるとお金の用意をしてしまうもんですねぇ。
わが家の双子は今朝群馬県へと出発しました。旅費の大部分は学校経費として支出されるようですが、高校生の娘が四泊するとなれば一定の出費があります。まして二人分ですしねぇ。

今日茨城県のYさんご夫妻が突然のご訪問です。キャンピングカーで全国を走り回るYさんご夫妻とのご縁も、娘たちが西宮家中庭で披露していた手踊りが発端でしたね。
『北海道の帰りなんだけど、やっぱり安藤さんの醤油と草履だけは寄りたいと思ってねっ!』と奥様。お顔を見せてくださるだけでも嬉しいのに、ご夫婦分の草履をオーダーくださいました。

今日から四日間、娘たちには全国の高校生たちとの「縁」を感じて欲しいものです。せめてかけたお金くらいは…(苦笑)。

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踏ん張りどころ。

2008年08月06日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
茶色基調の小花プリントをベースに、合わせは赤茶基調の漢文プリントです。
同系色合わせの典型例ですね、落ち着いた雰囲気がなんともお洒落と思います。

連日30℃超えが続いています。昨日は34℃、今日は33℃まで上がりました。散策のお客様も汗をふきふき、『東京となんにも変らないわねぇ』。暑さのピーク時はおそらく東京も秋田も変りないでしょう、ただ北東北はそのピーク期間が短いわけですね。お盆が過ぎると朝晩は秋を感じる時節になります。

秋田の夏を彩る竿燈祭り、本日をもって最終となりました。さすがに今日はお客様が少なめでしたが、昨日までの四日間ほどは桜まつりに次ぐ賑やかさでしたね。
彩シリーズの男性向けLグループは在庫が尽き、Mグループも数えるほどしかなくなりました。これからまだまだ夏の草履需要期が続きますから、さらに踏ん張りどころですね。

さてトップページでもお知らせしている、第32回全国高等学校総合文化祭群馬大会へ向け、明日角館高校おやま囃子同好会が出発します。わが家の双子の娘たちも旅の荷物が完了したようです。8月10日に15分だけの舞台なんですが、そのために四泊を費やすんですね。

7月24日のブログでご紹介した伊勢崎市の奥様から、群馬県での大会PRの様子などメールを頂戴しました。なかなか大きな宣伝がされているようですよ。
激励のお言葉と共にいただいたのは「暑さ対策」、群馬の暑さは私もサラリーマン時代に経験しています。人間というものは気温が体温を超えるとおかしくなることを、群馬県高崎市ではじめて知りました。

「暑さ」と「大舞台」、角館っ子たちには大きな“踏ん張りどころ”となるでしょう。

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