角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

“会心の作”とは…。

2007年11月19日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23cm土踏まず付き〔4000円〕
辛子色の絣風をベースに、緒は赤茶基調のひらがなプリントです。まず普通はこの逆配色が一般なんですが、最近この手にハマってます。おそらく近々また元に戻るでしょう。

11月10日のブログにご登場の北村画伯に、『こりゃあ売り物にできないなぁ…、なんてものが出来たりしないの?』と訊かれたことがありました。まさに「ものづくり」に携わっている人の質問ですね。「ものづくり」ばかりでなく、たとえば楽器の奏者にもそういうことってあるんじゃないですかね、『うわぁ~、今日の演奏は人に聴かせられるものじゃなかったよぉ』みたいな。

北村画伯はどうかと言うと、『ボクはあるんだよねぇ、どうしても気乗りしないで終わった作品。見た人はどこがダメなの?って言うけど、そういうのは売り物にしないね』。
プロとしてのプライドがそうさせるんでしょうね。

草履の「失敗作」というのは、実はないんです。これは私の草履が「美術品」とは違う、およそ庶民的なモノだからと思うのですが、その日そのときの精一杯を出し切っている証しとは言えるんですね。ただ、「そのときの精一杯」は年々変化するんです。たとえば二年前の草履を今見てみると、仮にそれが「今日」作ったものであれば間違いなく「失敗作」ですね。二年前に草履をお買い上げくださった方々にはホントに失礼な話なんですが、これも年々「腕を上げている」ということでご理解いただけるとありがたいです。

失敗作はありませんが、ときに“会心の一作”と出会うことがあります。これはとても微妙な話で、北村画伯の画と同様に、見た人はきっと『どこが違うの?』って言うでしょうね。
配色じゃないんです、草履のかたち、それもかなり細かい点です。「つま先の丸みと踵の丸みがコンパスで描くように整い、側は一直線に編まれ、さらにイ草で綯った芯がきれいに隠れている状態」、あえて言葉にするとこんな感じでしょうか。

これが出来るときの条件はかなり厳しいですね。布地の厚み、イ草の乾燥状態、そのときの湿度、そして手に疲労感がないとき。おそらくまだほかにも微妙な条件があるように思います。
“会心の一作”というのは、日常の中に生まれる稀な現象、まさに「偶然の産物」と言えるでしょうね。

これからご注文予定のみなさま、『会心の一作をください』というのはどうかご容赦ください。
お母さんたちも、『今朝は会心の目玉焼きを作ってよ』と言われても困るでしょ

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クリスマスシリーズ、好調です!

2007年11月17日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23cm土踏まず付き〔4000円〕
ベージュ基調のひらがなプリントをベースに、緒は赤のいらかです。どちらも暖色系で、この時期に合いますね。
秋田市からお越しのご夫婦、ご主人が奥様へのプレゼントと言いながら「今日の草履」をお買い上げです。草履のように、奥様のお顔が暖かい笑顔になりました。

プレゼントにご利用のお買い上げがとても多く、作り手としてこれはとっても嬉しいことです。ずいぶん前のブログでも触れたことがありますが、草履職人となる以前はギフト業を生業の一部としておりまして、人様への贈り物や返礼品にいくつもかかわってきました。
そんな仕事から学んだことは、『自らが気に入らないモノは人様へ贈らない』ということです。つまり、草履を贈りたいとおっしゃっていただくのは、なによりその方が草履を気に入ってくださったことに他ならないわけです。

湯沢市からお越しのお母さん、以前ご友人とお二人で散策に見え、そのときはご友人のほうがお買い上げでした。今日再度お越しになり、『家族へのクリスマスプレゼントに草履を贈ろうと思って…』。さらに聞いてみると、ご実家のお母さんとご実家を継いでいる弟さん、そして弟さんの奥様へのプレゼントなんですね。イイ話じゃないですかっ、特に喜んでくださるのは弟さんの奥様じゃないですかね。“小姑鬼百匹”なんていうのは、きっとどっかの国の話ですよ。

『クリスマスプレゼントならクリスマスバージョンの草履がありますよっ』とご覧いただくと、『あっらー、可愛い!でも普通のにするわっ』。
こちらのお母さんにはクリスマスバージョンを却下されましたが、ここまで順調にご予約あるいは販売が進んでいます。
シリーズ①はあと4足分ほど生地がありますが、②はひとまず完売、③は残り1足分です。それぞれ完売の後は、極めて近い配色でお作りできますので、どなたかに贈りたいとお考えの方はぜひご連絡をお待ちしています。

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支援は期待薄!?

2007年11月15日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23cm土踏まず付き〔4000円〕
辛子色のひらがなプリントをベースに、赤のいらかを合わせた配色Ⅱパターンです。
オーダー草履を作る傍ら、毎日少しずつ展示品の補充分も作るのですが、どうしても色の濃い配色になってしまいます。これも寒さによってそういう気分になるんでしょうね。どうやら秋田市で初雪が観測されたようです。角館もいよいよ明日がその日になりそうです。

札幌市からお越しの団体さん、4~5人のお母さんたちが関心高く実演をご覧です。中でもひとりのお母さんが、ずいぶん高い評価を示してくださいました。それは私の草履そのものではなく、草履を編む技術を比較的若い私のような人間が継承していることについてです。

これまでもそういう評価はいただいたことがあります。『年寄りのする仕事かと思ったら、若い人がしてるのねぇ』とか、『お弟子さんをいっぱい作って、ずっーと永く続けてちょうだいね』といったお言葉です。
今日のお母さんはちょっと違ってました。『草履を編める人って少なくなってるんでしょ、あなたのような人は貴重よぉ。日本の伝統文化なんだから、国がちゃんと支援しなきゃダメなのにねぇ』。

私の草履に「国の支援」ですかっ!?あんまりシックリ来ませんが、激励の意味だけはありがたく頂戴しておきます。こちらのお母さん、言葉だけじゃなく草履もお買い上げくださいました。重ねて御礼申し上げます。

こちらのお母さんたちがお帰りになって間もなく、スーツ姿の男性4~5人が入って見えました。うちのおひとりのしゃべり口調に聞き覚えがあります。人の良さそうな関西弁のおじさま、間違いありません、関西選出の大物代議士さんです。

取り巻きの男性は私の草履に一言二言声を掛けて行かれましたが、代議士さんは一旦足を止めただけで足早に立ち去りました。ご年齢からすれば「ワラ草履」に郷愁を憶えるはずなんですが、どうやらこの手の作品はあまり関心がなかったようです。

札幌のお母さ~ん、やっぱり国の支援は無理みたいでーすっ!

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晩秋の出逢い。

2007年11月14日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、11月6日、静岡市駿河区からお越しくださった女性のオーダー草履です。
ちょうどクリスマスシリーズ③を作っていたときに、実演をチラッとご覧になっていたそうです。それが米蔵ショッピングを終えて再度お立ち寄りのときには、すでに売れて無くなっていました。どうしてもそのときの配色が忘れられないとのことで、オーダーは『クリスマスベースで可愛くお任せっ!』と相成りました。
クリスマスプリントをベースに信号三色を合わせ、ついでに先ツボの色も変えてみました。履くときは、「右足が緑」と覚えていただければイイですね。

男性用もオーダーいただきました。ご主人かどうか聞き漏らしましたが、草履を贈りたい男性ですからきっと大好きな人だと思います。お二人仲良く「信号三色」でお楽しみください。男性用はこちらです。


晩秋の西宮家、観光シーズンの終了に向かい人影はグッと少なくなっています。でもそうした時期だからこそ、なおさら「出逢い」を強く感じます。

屋久島からお越しの女性、屋久島の方とははじめてお会いしました。とても草履を気に入ってくださり、『洗い替えがあったほうがイイわねっ!』とのことで二足オーダーです。
『屋久島から一人旅ですか?』とお尋ねすると、少し言いにくそうに『ええ、ちょっと治療のために秋田へ来てるの』。治療目的で秋田を訪れるという方を、ほかにも何人か知っています。女性に対してこういう話題を詳しく訊くのは失礼ですから、すぐに話題を変えました。

いつもはすぐにお帰りのところ、今日は飛行機まで時間が空いたとのことで、タクシーをチャーターして角館散策なんだそうです。
『嬉しいものに出逢えたわ、ここまで来て良かったっ!』、そう言っていただければ私のほうこそ嬉しいです。次の機会にも、ぜひお立ち寄りくださいね。

『あっ、これこれ!』と言いながら入っていらした、秋田市からお越しのご夫婦。奥様が布草履作りの経験者で、お仲間に『角館にスゴい草履を作ってる人がいるわよ』と教えられ、それは見に行かねば…とのことでご来店です。
小一時間ほどご覧でしたでしょうか、『あぁ、やっぱり見に来て良かったっ!』と言って下さいました。こちらこそお出でいただきありがとうございました。

町内に暮らす男性、ご夫婦共に私の草履を履いてくださっている方なんですが、どなたかにプレゼントらしい草履をオーダーいただいてました。その草履は昨日お引取りになっています。
今日夕方になってお越しの女性お二方、ひとりの女性が『私昨日プレゼントにいただいたんですぅ』。差し上げた方のお名前を伺うと、昨日の男性に間違いありません。
『作った人に会えるなんて、嬉しいっ!』と、何枚も写真をお撮りになってました。

以前に一度お会いしてる男性なんですが、お住まいは地元と思います。私のブログを欠かさずご覧とのことでした。なんと言いますか、実演やブログ、こうした私の活動を暖かく見守ってくださる方がいるというのは、たいへんな励みになるもんですね。いつも米蔵を通る地元のお母さんたちからも、『寒くなってたいへんだなっ』とお声を掛けていただきます。

今日も若干寒さを感じる角館でしたが、やって見えるお客様はみんな暖かくて嬉しい人ばかりです。

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熱く、暖かく…。

2007年11月13日 | 地域の話

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23cm土踏まず付き〔4000円〕
赤茶基調のひらがなプリントをベースに、紫を合わせた配色Ⅱパターンです。ベース色に暖かみを感じますね、心の暖かいお母さんにいかがでしょう。

昨日ほど天気は悪くなかったのですが、少しくらいのお陽さまではもう暖かさを感じなくなりましたね。明後日は今シーズン一番の寒さになるとのこと、平地でも雪マークが出ています。当地の晩秋としてはこれまで温暖で来ましたが、もう初冬へと向かうんですね。熱い鍋料理が恋しい季節になりました。

先般行われた「全国学力検査」、結果はすでに報道されていますが、秋田県が各分野で一位を獲得しました。わが家の娘は中学三年と小学六年ですから、三人全員がこの試験を受けています。私もそうですが、はっきり言って少し驚いた県民が多かったんじゃないですかね。
『私立は参加していないから…』とか、『全体はそうでも、わが子はどうよ…』てな言葉も聞きましたが、まずは素直に喜ぶべきでしょう。

中央教育審議会が、これからの学校教育について少し指針を変えるようです。「ゆとり教育」を旗頭に数年が経過し、特に「総合的学習」で弊害が現れているそうです。基本的に、間違っていたなら直すということは大切でしょう。

間もなく「総合的学習」が本格導入されようとしていた年、当時の長女の担任といろんな話をしたもんです。二人の考えが合致した点は、『これからはさらに教師の資質が問われる』ということでした。
国語でも社会でも算数でもない教科、ことに「生きる力」を育む授業なんですから、とても学校の先生だけで賄える範疇にありません。「学校は地域と共に歩む」という言葉を、そのまま実行に移すのがこの「総合的学習」じゃないかと思ったわけです。

現場の教師が多忙を極めているのが、このたびの指針変更の理由のひとつと云われています。本当に先生という商売は忙しいですよ、この九年間学校にかかわって来て、掛け値なしにそう思いますね。
ただ思うのは、学校には保護者を含む地域を巻き込む仕掛けが足りなさ過ぎます。世の中見渡してみれば、学校教育に有効と思える活動や事業がいっぱいあるし、また人材もたくさんいますよ。過去に一度だけ「ゲストティーチャー」として教壇に立ったことがありましたが、私なんぞはハナタレ小僧、もっともっと「生きる力」を教えてくれる「地域の先生」がいますね。
何人かの先生に話したことがありますが、学校の先生はもっと地域を知る勉強が必要と思うんです。私には、「総合的学習」が不完全燃焼で終わった思いが拭いきれません。もっと地域を巻き込むことに、熱くなって欲しかったですねぇ。

秋田県が全国一位になった理由の一説に、「家族団らん」が挙げられています。秋田県という田舎では、朝晩みんなでご飯を食べる習慣が根強く残っています。夕食後の宿題や自習も、親が一緒の居間でする子が多いんじゃないですかね。『そんなことも分からないのっ』なんていう母親の小言も、うるさいだけじゃなくちゃんと活きているんでしょう。
家族団らんという心の安定が、そのまま学業成績に現れたとしたら、私はこれが一番喜ぶべきことじゃないかと思うわけです。

学校の先生は「熱く」、家庭は「暖かく」。日々寒さが増す時節に、そんなことを考えています。

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分かってても嬉しい言葉。

2007年11月12日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23cm土踏まず付き〔4000円〕
山吹色のうさぎプリントをベースに、緒は深緑の絣風です。紺系・赤系・秋田おばこ調の三種がこれまでの定番でしたが、緑色を好まれるお客様がことのほか多いんです。これからは緑系もいろいろ作ってみたいと思います。

ずいぶん寒くなりました。今日は天気が荒れたせいもあるのですが、最高気温が一桁になると寒さも違ってきますね。三ヶ月前の36.7℃がウソのようです。

夕方閉店間近、というより閉店時刻の3分前に入って見えたお客様。東京からいらしたという、ご夫婦一組に女性ふたりの四人グループです。奥様が布草履作りの経験者で、それはもう食いつかんばかりに草履をご覧です。その時刻はすでに実演が終わってますから、言葉で材料などをご説明しました。

お連れの女性もたいへん気に入ってくださり、『この草履は買って行ってもイイんですか?』とクリスマスバージョンをご指定です。『一応見本なんですけど、また明日作りますからイイですよ』とお応えすると、大喜びで二足お持ちになりました。
そして肝心の奥様、『とりあえずやってみよっ!』とのことでイ草材料を三足分お買い上げです。
こんな様子をしばらくご覧になっていたご主人、『プレゼントするからこれも買って行けよ』と指差したのは編み方ビデオ。奥様も大喜びでしたね。

お帰りの際のご主人の言葉、『今日一日角館を歩いたけど、最後のここが一番の収穫だなっ!』。
角館の一番が私の草履というのは、もちろんお世辞が半分です。それが分かってても嬉しいんですよねぇ。

さきほど帰宅すると、一通のFAXが届いていました。東京都目黒区にお住まいのおばさまから、草履のご注文FAXでした。記載の内容に不備があったので早速電話してみると、『まぁ、草履屋さん!?お忙しいのに電話なんかもらって、ごめんなさいねぇ』と、かなりハイテンションなご様子。
必要事項を一通り聞き終えると、おばさまのハイテンションがピークに達しました。『5月に旅行して買って来たんだけど、今まで買った草履の中でサイコー!一足しか買ってこなかったから、洗い替えがないでしょ。洗いたくても洗えないのよぉ、ほっほっほっ!』。

最後は次の旅行の相談まで受けてしまいました。それにしても「今までの中でサイコー」というのは、おそらく作った本人と電話してのことですから、少々お世辞が入っているんだと思います。
それでもやっぱり、分かってても嬉しいんですよねぇ。

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芸術家って変わり者!?

2007年11月10日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23cm土踏まず付き〔4000円〕
深緑基調の麒麟プリントをベースに、緒は辛子色の絣風です。どちらも落ち着いた色の組み合わせですから、中高年の女性にいかがでしょう。

「職人は偏屈」「芸術家は変わり者」、どこかにこんな先入観ってないでしょうか。
西宮家米蔵では、手に技を持った人たちの展示会が定期的に開かれます。そうしたほとんどの人が私の実演ベンチに腰を掛け、いろんな話をして行かれます。
そんな人たちのイメージでまず共通するのは、作品の美しさや厳かさと裏腹に、普段は実に「飄々」としてますね。案外子どもみたいな話題も多いですし、仕事さえきちんとやれば、あとの細かいことは気にしないといった印象でしょうか。そしてなにより、「自分の世界」を持ってますね。

今ちょうど、北村公正画伯の日本画作品展が開かれています。北村さんは角館のおとなり旧中仙町にご実家があり、角館高校を卒業された地元人なんですね。現在は、埼玉県飯能市にあるご自宅のアトリエで製作活動をされています。

お客様が切れるとすぐ下に降りてきて、私の実演コーナーでブラブラしています。常に禁煙パイポをくわえたままで、そのいでたちはまさに「飄々」ですね。おそらくキャンパスに向かうときの顔は、別人になるんじゃないかと思います。

北村さんは夕方閉店近くになると、毎日手頃なダンボール箱を見つけて車に積み込みます。いったいナニに使うのかと言うと、渋抜きする渋柿を入れるんですね。ご実家にある渋柿を何十キロと集め、渋を抜いた柿を埼玉県の自宅の隣近所に配るんだそうですよ。
『まぁ、変わり者みたく思われてるからねぇ、こういうことをすると喜んでもらえるわけよ』と、屈託なく笑っていました。

美しくも厳かな日本画を描く画伯が、実生活では一生懸命渋柿の渋を抜く、まさに「自分の世界」じゃないですかね。

昨晩北蔵レストランで、ジャズコンサートがありました。私はこうした音楽系に疎く、このたびは出席しませんでしたが、夕方頃演奏者のみなさんが準備に追われているのは横目に見ていました。
するとひとりの男性が米蔵に入って見え、私の草履を見つけると、『あらららぁ、面白いものを作ってるんですねぇ』と実に関心高くご覧です。いでたちはいかにも音楽家、しゃべり口調は古畑任三郎に似ています。

『んんん~、これは奥さんに買って行かないと…』と言いながら一生懸命物色していましたが、『んんん~、やっぱりボクの趣味ではだめだぁ、そうだっ、○○さんを呼んで来よう』。○○さんというのはどうやらスタッフの女性のようでしたが、ここまでの男性の言葉に、私が入り込む余地はありませんでした。なぜなら、男性は展示してある草履に向かって独り言を言ってたんです。

呼ばれて入って来た女性が一足を選び、今度はご自分用を選ぼうとしたとたん、別の男性スタッフが慌てて入って見え、『ナニしてるんですかっ、ピアノの位置とかまだ決まってないんですからねっ』と少々お怒りのご様子。しかし男性はどこ吹く風、『んっ、ピアノ!?そんなことは君たちに任せるよっ、ボクは今珍しい草履を見てるんだからねぇ』。このときもスタッフの顔は見ていません、目はまっすぐ草履に向かっていました。しかし間もなく、スタッフ全員に連れ戻されましたね。

こちらの音楽家さんは、ニューヨークを拠点に音楽活動をされている三上クニ氏、業界では“幻のピアニスト”と呼ばれているそうです。
画家さんも音楽家さんも、やはり「自分の世界」をお持ちでした。「変わり者」や「偏屈」とは、また違った人物像ですね。

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クリスマスシリーズ。

2007年11月09日 | 実演日記
今年も昨年に引き続き、「クリスマスシリーズ」を発売します。

「クリスマスシリーズ①」
赤基調のクリスマス柄をベースに、緒はもみの木をイメージした緑です。






「クリスマスシリーズ②」
緑基調のクリスマス柄をベースに、緒はサンタの服をイメージしたエンジです。






「クリスマスシリーズ③」
さまざまなクリスマスプリントをベースに、エンジを合わせた配色Ⅱパターンです。






価格は「一般綿生地シリーズ」と同様です。サンタと長靴のマスコットはおまけですね。
それぞれ5~6足の限定となります。ご注文やお買い上げが限定数を超えた場合、近い配色で出来る限りご提供するつもりでおります。

ご注文の際は…
■お名前 ■ご住所 ■電話番号 ■ご希望配色番号 ■サイズ ■「土踏まず付きタイプ」or「普通タイプ」を、トップページからメールにてお知らせください。

今年の“サプライズプレゼント”に、クリスマス草履なんぞはいかがでしょ!

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「カミさん孝行」と言われたら…。

2007年11月06日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、10月22日、和歌山市からお越しくださった奥様のオーダー草履です。私もお気に入りだった「濃紺地のひらがなプリント」、こちらのオーダーで終了となりました。
ご一緒だった奥様からのオーダーと共に、本日の便で出発です。

今日はクリスマスシリーズ3作を揃えるべく、材料を西宮家へと持って行きました。展示パネルの草履は残り僅かなんですが、比較的静かな日が多い火曜日、今のうちに作ってしまおうと思ったんです。1作はすでに完成し、サンプルとして展示済みですから、残り2作です。
2作目が完成し、最後の1作へ取り掛かろうとしたとき、一杯機嫌のおじさまグループが入って見えました。広島県からお越しだそうです。

『おっ、面白いことやってるねぇ!』。だいたい一杯飲んでいるお父さんは、こんな感じからおしゃべりに入ります。いつものように一通り草履のご説明をすると、それまでの笑顔が少し真顔に変わりました。奥様への旅土産、ほろ酔い加減で買ってしまおうか、でも買って行って逆に怒られたら…。どうもそんな葛藤が見えましたね。

こんなとき草履職人の心に、ちょっとだけ悪戯心が芽生えます。『健康を考えて作ったこの草履をお土産に貰ったら、きっと奥さん泣いて喜びますよっ!』と言うと、『そうかなぁ~!?』と言いながらそのお顔は満面の笑みです。
『よしっ、じゃあこれちょうだいっ!』と指差した草履は、今作ったばかりのクリスマスサンプル。
『あのぉ、これはクリスマス用のサンプルなんですぅ』と言うと、『そんなこと言わないでよぉ、カミさん孝行しようってんだからさぁ』。

少々こちらから振った気配もありましたから、その草履はお持ちいただきました。もうおひとりのお父さんもやはりクリスマスサンプルをお選びになり、さらにもうおひとりは残り僅かな展示パネルからお選びです。

その後3作目のクリスマス草履は、秋田市から遊びに見えたおばさまが、『今編んでるの買ってってイイ?』。二つ手放してしまうと、案外開き直るもんです。『はいはい~、もうすぐ出来ますよ~!』てなもんで、こちらもお持ち帰りです。

気の弱い草履職人、クリスマスサンプル3作のご紹介は、今少しお待ちください。

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噂のプレッシャー。

2007年11月05日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、スペイン人のご新郎さんへ贈られる「スペイン国旗草履」です。由来を調べると、「血と金の旗と呼ばれ、黄は豊かな国土、赤は外敵を撃退した時に流れた血の象徴」とありました。重く深い意味があるんですね。
それにしても久々の30cm草履、果てしなく編み続けたという印象でしょうか。どうか喜んでくださいね~!

大仙市神宮寺からお越しのおばさまお二方、西宮家ご訪問は草履も目的のひとつだったようで、『あっ、これこれ!』と言いながら入って見えました。おともだちから聞いて来たとのことで、それぞれご夫婦用をオーダーくださいました。

ひとりのおばさまの言葉に少し関西系が入っていたので、『生まれはどこなんですか?』とお尋ねすると、『生まれは神宮寺なんだけど、和歌山へ嫁いで20年暮らしたのっ』。
詳しく教えてくれたのは、和歌山で20年暮らし、その後ご主人のお仕事で千葉県などに暮らしたそうです。つい最近定年を迎え、さて終の棲家は…の話し合いで奥様のご実家、大仙市神宮寺に納まったということでした。
ほんとに人生いろいろですね、『そうだっ、お父さんにこの草履作らせようかなっ!』と張り切ってお帰りです。何十年もの間県外で暮らし、最後は和歌山人のご主人共々生まれ故郷に暮らす。どうぞ楽しい老後をお過ごしくださいねっ!

今日のおばさまお二方もそうですが、「誰かに聞いて…」ということでお訪ねの方が少なくありません。
秋田市にお住まいの男性、60歳代と思いますが、いでたちがお洒落で素敵なナイスミドルです。おそらくお生まれはこの辺りじゃないと思いますね、言葉が限りなく標準語に近い男性です。角館には年に数度遊びに見え、私もこれまで幾度となくおしゃべりしています。

今日少し久しぶりにお会いし、第一声が『いやぁ~、あなたの話をよく聞くよっ!』。『あらら、悪い噂ですか?』と訊いてみると、『はははっ、そんなことはないさ』。
こちらの男性が陶芸をされているのを聞いていましたから、おそらく手作り仲間のような知人がたくさんいるんでしょう。「布草履」はもはやメジャーな趣味ですから、私の噂話もそんなところから聞こえるのかも知れませんね。

それにしても、本人の知らないところで噂話が立つというのは、案外プレッシャーなもんですなぁ。とにかく悪い噂にだけはならないよう、地道に目立つことなく日々を送りたいと思ってます。

土日に開かれた「青空軽トラ市」、様子を写した画像を掲示板へアップしました。こんなことをしていて、「目立つことなく…」というのも変なんですがねぇ…。

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