角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

「マニュアル」と「心」。

2007年11月27日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズLサイズ25cm土踏まず付き〔4500円〕
レンガ基調の梟(ふくろう)プリントをベースに、緒は同系のエンジです。ふくろうの目玉を拡大写真に撮りたかったんですが、なんかこの顔はわが家の「フク」に似ています。フクロウの「ロウ」が抜けてしまいました。

今日米蔵スタッフのひとりが、とある勉強会へ参加するとのことで外出しました。夕方戻って内容を聞きかじると、「分かっているようで忘れている」いくつかを再認識させられましたね。

もう二十年も前のこと、かつて勤務していた会社の見本市出展のため、東海地方の大都市を訪れました。仕事が終わり軽く一杯飲んで、『なんか食いたいなぁ』の私の言葉に、社長がとあるうどん屋さんへ連れて行ってくれました。わが社の社員4人に出展仲間の社長が2~3人、合わせて6~7人いたと思います。店に入るとお客様はまばらでした。

空いているテーブルは4人掛けでしたから、隣同士のテーブルを30~40cmほど移動しひとつにして座ると、ホール係りの店員が血相を変えて『勝手に動かされると困ります』。
おそらくこれはその店のマニュアルなんでしょう、「了解を得てからにしてください」ではなく、明らかに「動かさないでください」が店員の主張でした。

西宮家北蔵レストランは、昼時を中心にほぼ毎日席が埋まります。満席になるとスタッフは、お客様のお名前と人数を確認し「予約」とします。ここまではどこの飲食店も同じですが、ただ待つのは退屈ですから、『どうぞ米蔵をお楽しみください。お席が空きましたらお知らせに伺います』というのが、北蔵レストランのマニュアルなんですね。レストランと米蔵は目の鼻の先ですから、そうした席待ちのお客様が私の実演席にもよくいらっしゃいます。

あるときご高齢のご夫婦が、同じように席待ちのあいだ米蔵を見ていました。レストランスタッフの女性が、『お二人でお待ちの○○様、お席のご用意が出来ました』とお呼びすると、『あっ、は~い、今行きますぅ』。でもそのとき奥様は、とても興味のある品物をご覧になっていたんでしょう、すぐには向かいませんでした。

その間レストランスタッフの女性は、笑顔を絶やすことなくレストランと米蔵の中間、私の実演席の隣でご夫婦を待っていたんですね。これに気づいた奥様、『あっ、ごめんなさい、待っててくれたのねぇ』。言葉は「謝罪」でしたが、そのお顔には「感謝」が見て取れました。

席が空き次第、お待ちのお客様にしっかり伝えることはマニュアルにあると思います。でも、お客様をレストラン内まで必ずお連れすることまではマニュアルにないと思うんです。実際、『もう少しお店を見てから行きますぅ』なんていうお客様もいますから。
スタッフ本人に確認したわけではありませんが、おそらくこのときご夫婦を待ったのは、お二人がご高齢だったからじゃないかと思うんですね。

今日米蔵スタッフが参加した勉強会で最も印象深い言葉は、『マニュアルがすべてではない、お客様が望むよりほんの少し多くの“おもてなしの心”が重要』。
分かっているようで忘れていた言葉です。

コメント (2)
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