角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

「無」から「有」へ。

2007年11月29日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、私の作品ではありません。当ブログにたびたび登場する「東京の仕入れ部長」が、8月に引き続き遊びに来てくださいました。もっとも8月は私が法事で不在の日だったので、ずいぶん久しぶりにお顔を拝見しました。
布地の仕入れも頑張ってくださいましたが、ご自身の草履作りも頑張っていたのが推察できますね。すでに100足近い実績をお持ちですから、これからますます美しい草履に磨きがかかることでしょう。
「東京の仕入れ部長」のお住まいは横浜市、見事「横浜の布巻草履」免許皆伝ですなっ!

昨日のブログでもご紹介しましたが、二年前の草履台発売からこれまで90人がお買い上げになっています。その中で「東京の仕入れ部長」のように、ご自身で編んだ草履を持って見える方は5人ほどでしょうか。90人中5人という率が高いのか低いのかは微妙ですが、少なくとも一年前は皆無でしたから、この「5人」という数字はとても意味が大きいと思うんです。「無」から「有」へ、大きな変化ですよね。

秋田市からお越しのおばさまお二方、年に数度いつも同じお二人で遊びに見えます。私とも顔馴染みで、いつも『ああ~、いたいたっ!』と言いながら米蔵に入って見えます。
ひとりのおばさまに、『日本中にこの草履履いてる人がいるんでないの?』と訊かれたので、『んだよ~。おかげさんで、角館サ遊びに来れば必ず顔見せでくれる人がいっぱいいるぅ』と言うと、『んだべぇ、私たちだって今日もいるがなぁって言いながら来るものぉ』。

ホントにありがたいことだと思うんです。角館に行けば、西宮家に行けば草履職人がいる。こう思ってくださる方がたとえ何人かでもいてくださると思えば、これがまさに今の私の“価値”なんだと思うわけです。それこそ公開実演をはじめるまでは皆無ですから、これも「無」から「有」へ大きな変化でしょう。

夕方近く秋田市からおひとりで遊びに見えたおばさま、『あっら~、ずいぶん久しぶりに来てみたら、スゴい草履と巡りあったわぁ!』。ご自身用と娘さんご夫妻、そしてお孫さん用をオーダーくださいました。
『こんな草履があったなんて知らなかったぁ』を連発するおばさま、これまで知らなかった、感じなかったものを新たに手に入れたのですから、おばさまにとっても今日がひとつの「無」から「有」に変わった日じゃないでしょうか。

2007年の公開実演も残り9日間、おひとりでも多くの「無」から「有」にお逢いしたいものです。

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