角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

冥土の旅の角館草履。

2009年01月06日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
薄茶基調の相撲決まり手プリントをベースに、合わせは赤茶です。合わせがいくらか明るさを出していますが、ベースが落ち着いた色ですからご年配の女性向きでしょうか。プリントも「相撲の決まり手」、やはりお若い方には少ないかも知れません。平生地はこちらです。




『角館草履をご愛用の方が天寿を全うするとき、冥土の旅の履物に私の草履をお棺に入れるご遺族が、ゼッタイいないとは言い切れないんじゃないかと…』。昨年11月8日のブログにこんなことを書いていました。
私の草履を履いてくださる方が、すべて健康な人とは限りません。角館を散策する方の中には湯治旅の合間という方もいらっしゃいますし、なにより人の明日が保障されているなんてことはないわけです。

昨年6月26日のブログに綴った、お父上のお誕生日に角館草履を贈った女性と、新年明けて間もなくお会いしました。実はこちらのお父上、昨年12月始めに肺炎から急逝されたことを耳にしていたんです。
「明けましておめでとう」は言えない方ですから、『去年はたいへんだったなぁ』とお声をかけました。女性は軽く笑顔で頷きながら、『草履、お棺の中に入れてあげたんです。とっても気に入ってくれてたから…』。

お父上が角館草履を気に入ってくださったのは、最愛の娘からの贈り物だったからというのは疑うべくもありません。私はその作り手として、陰でお父上に手を合わせたいと思います。

コメント
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