角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

職場環境と誇り。

2009年01月08日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
エンジ基調の花柄プリントをベースに、合わせは辛子色基調の花柄プリントです。双方のプリントが少し賑やかな感じもしますが、そこがまた可愛くも見えます。そしてこうした配色こそ、中高年の女性に人気なんですよね。

いったいどうしたことでしょ、今年に入っての気候です。年末あれだけの大寒波に襲われた当地ですが、正月から一向に雪が降りません。さらに気温はと言うと、一月に入って真冬日があったでしょうか。今日の角館も最高気温が3℃まで上がり、午後には優しい日差しが降り注ぎました。

12月に入った頃から常連さんたちによく言われていたのが、『さんびぐなって来たがら、体だけは注意してけれなっ』でした。確かに草履コーナーのある米蔵イベントホールは、ストーブがあるとはいえ常に暖かいとは言えません。さすがに年末の大寒波は正直参ってしまいました。
その後隙間風が入る雨戸にビニールを張ってもらい、そのうえ正月からの暖気ですから今のところ寒さの苦労はありません。

西宮家隣りに昨年オープンした「外町交流広場」。最近になってその存在が知られてきたのか、地元民もトイレなどでよく出入りするようになっています。朝は電車通学の女子高生が利用してました。おそらく登校までの時間調整と思いますが、この時期暖かい施設はありがたいでしょうね。

外町交流広場の施工が盛んだった頃、現場の職人さんたちとずいぶんおしゃべりしたもんです。今でも町で見かけると、声を掛け合う人もいます。
工事がはじまって間もなく大工さんのひとりに、作務衣姿の私の仕事を訊かれました。草履を編んでいるだけではなかなか理解されませんから、『休憩時間にでも見に来ればいいねがっ』てな話になったわけです。

それから何人もの職人さんたちが遊びに来てくれました。その中の左官屋さんは実演席を見るなり、『おんやぁ~、これだばイイ仕事だなやぁ』。
私はてっきり草履を褒めてくれたのかと思ったのですが、左官屋さんの言う「イイ仕事」は「屋内で座って出来る仕事」に対してだったんです。『オレらはいっつも外仕事だがらなぁ』。

考えてみればまったくその通り、草履コーナーが寒いと言ったって、屋根もあれば壁もあります。まして目前にはストーブだってあるんですから、左官屋さんの言うのは至極もっともなわけです。
無論こちらの左官屋さんにしても、夏も冬も外で働く自らの生業に誇りを持っているでしょう。他の職人さんが休みの日曜日、この左官屋さんだけは必ず現場へ一度は来ていました。『夏は乾燥が早ぇがら、一日に一回は見に来ねぇと心配でなぁ』。

仕事に「誇り」さえ持っていれば、職場環境なんて二の次なんですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする