角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

2008年角館祭典初日。

2008年09月10日 | 製作日記


今日の草履は、仙台市宮城野区にお住まいの男性からの、メールによるオーダー草履です。ご希望配色が「黄色」とのことでしたので、こちらの草履をお作りしました。すでに発送済みでもう着いた頃でしょうか、喜んでくださると嬉しいですね。

九月七日に宵宮を迎えた角館祭典、三日間、いや足掛け四日間に及ぶお祭りが終わりました。今日からのブログでは、今年はじめて「曳山を納めるまで」踊りに臨んだわが家の娘たちの奮闘を交え、今年のお祭りを振り返ってみたいと思います。

心配していた天気のほうは、宵宮の夕方曳山が動き出して間もなくにわか雨があった後は、祭り終了まで秋晴れに恵まれました。昨年や一昨年のような30℃超えではなく、最高気温26~27℃という絶好のお祭り日和です。

宵宮のにわか雨で笑い話をひとつ。わが家の三人娘が踊り子として乗るヤマは、住まいも同一の「岩瀬」という丁内曳山です。曳山には通称「雨具」と呼ばれる雨天用の屋根があり、これは付けたり外したりが自在にできます。雨のときはこの雨具を取り付け、人形や踊り子が濡れずに済むわけですね。

七日の天気予報では、午後から回復に向かうとされていました。昼過ぎまでの小雨が上がり青空に向かいだしたため、岩瀬曳山はこの雨具を外したようです。予報を知る者として、この判断は致し方ないと思いますね。

それが一転いきなりの降雨に雨具が間に合わず、人形にはビニールが被されました。さて踊り子たちをどうするか、いきなりのことで避難する場所も確保できなかったようです。緊急的に施された処置は、踊り子ひとりに一枚「ゴミ袋」が被されたんですね。踊り子たちにとって曳山の上はまさに“晴れ舞台”、晴れの舞台上でゴミ袋姿は、いかにも滑稽としか言いようがありませんねぇ。

雨雲が去った後、着物の濡れをタオルで拭こうとした長女、さっきまで手に持っていた自分のタオルがなくなっています。きょろきょろと辺りを見回すと、長女のタオルは囃子方の手によって「雑巾」に変り果てていたそうです。
「ふったりやんだり」が「ふんだりけったり」の祭りスタートでした。

初日七日、西宮家の閉店時刻は午後九時。私は閉店してすぐ自宅へ帰り、一時間ほどしてカミさんと共に岩瀬曳山へ向かいました。今年はじめて観る曳山の上の娘たちです。三人娘すべてが揃って乗る日は七日のみ、普段と違う三人の「顔」は、お祭りという雰囲気がそう想わせるのかも知れませんね。

地元丁内にある角館神明社をいつものように一番に参拝を済ませ、その後も順調に丁内回りを進めていた岩瀬曳山。先日のブログでもご紹介の通り、「曳山を納めるまで」というのは場合によって朝になることさえあります。わが家の娘たちは今年はじめての体験ですから、せめて初日くらいは「朝」でなければイイなぁと思っていました。

予定行動を順調に進める岩瀬曳山、この調子では深夜二時には納められそうと思っていました。それがあとは納める場所に向かうだけとなったとき、前方に三台の曳山がいます。この三台の交差交渉がそれぞれにこじれました。激突に至ることはないまでも、ヤマとヤマの交差は角館のお祭りにとって非常に大事な場面です。こうなると時間だけが刻々と過ぎて行くんですね。

岩瀬曳山がこの三台の後ろに着いたこともありますが、自身の丁内に他丁内の曳山がいるとき、それらを差し置いて自分だけ先に納めることはできません。これはたとえば、来客を迎えた家庭でお客様が飲食を愉しんでいる最中に、当主が先に床に着くに等しい行為なワケです。

結局岩瀬曳山が納めた時刻は午前四時半。カミさんが三人娘を連れて帰宅した時刻は朝五時に近かったです。それから化粧を落とし風呂につかると、思い思いに居間で体を横にし、長女と次女は学校へ行く時間を気にしながらの仮眠と相成りました。

そして三女、予定では八日の踊りはナシの日でしたが、急に欠員が発生し出番となりました。八日の曳山出立時刻は午前八時半、集合時刻は午前八時です。仮眠してまたすぐカミさんに新たな化粧を施されている最中も、三女の目はつむったままでしたねぇ。

長女と次女は16歳にして、さらに三女は13歳にして「納めるまで」の初体験は、やはり“朝”となりました。もちろん誰を恨むでもない、これが角館のお祭りなんですからね。
初日の睡眠時間は三人娘共に二時間、カミさんも同じです。私のみ若干早く帰宅し、三時間半でありました。そして迎えた中日八日、さらに予想を覆す“事件”が発生します。

つづく…。

コメント (1)
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